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第四十一話 孤児院

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 孤児院につくと、すぐに子どもたちに囲まれ、矢継ぎ早に質問される。


「お姉ちゃんたちだぁれ?」

「ルフス先生のともだち?」

「ここに入るの?」


 アルメリアは腰を落とし、目線を合わせると笑顔で答える。


「私たちはね、ルフス先生のお友達。今日はお手伝いに来たの。先生はどこかな?」


 一人の女の子が楽しそうに答える。


「あたし、呼んできてあげる!」


 横を見るとリカオンがすでにうんざりした顔になっている。アルメリアはくすくすと笑い、リカオンに言った。


「今ならまだ戻れますわよ?」


 リカオンは作り笑顔で言った。


「とんでもないことでございます。誠心誠意務めさせていただきますよ」


 小声でそんな会話をしているととおくからルーファスが女の子に手を引かれてきた。


「アルメ……アンジー、良くいらっしゃいました」


 笑顔で迎える。そしてリカオンに目を止める。


「今日はリカオンもご一緒なのですね」


「そうなんです、弟も連れてきちゃいました。ご迷惑にならないと良いんですけど」


 その台詞にルーファスは少し考えた様子になり言った。


「いいえ、弟さんもいらして下さればこちらはとても助かりますよ」


 そう言ってルーファスは話に合わせてくれたようだった。それにアルメリアは微笑んで答えると、頭を下げた。


「では、今日はよろしくお願いいたします」


 ルーファスは頷くと、いつの間にか集まってきた子どもたちに向き直って言った。


「このお姉さんたちは、今日は一日お手伝いをしてくれるそうです。よろしくお願いしますね」


「はーい!」


 元気一杯の返事が帰ってくる。ここにいる子どもたちは、複雑な事情で来ている子どももいるはずだ。それでも素直な反応をしてくれるところをみると、ここの孤児院ではとても大切にされていることがうかがえた。


「なにしてくれるの?」


「お姉ちゃん遊ぼーよ! お兄ちゃんもー!」


「お兄ちゃんたち姉弟なのににてなーい!」


 そう言ってアルメリアやリカオンの腕をつかみ引っ張る子どもたちに、ルーファスが穏やかに言う。


「こら、お姉さんたちは来たばかりで、ここのことをなにも知らないからこれから案内しないといけないし、お仕事忙しいから遊ぶのはまたあとで。さぁアンジー、リカオンこちらに来てください」


 そう言うと、厨房の方に案内した。


「ここには子どもたちは入れませんから大丈夫です。それにしても、オルブライト子爵令息も来られるとは思っていませんでした」


 そう言うとリカオンを見て苦笑した。


「僕だって役目上仕方なく来ているんです。で、僕たちはなにをすれば?」


「お二人に何かしてもらうのはとても気が引けるのですが……」


 二人を見ながらルーファスは苦笑した。


「午前中はアルメリアは台所で料理のお手伝いを、リカオンはお掃除をお願いできますか? 午後からは子どもたちの相手をしてもらおうと思います」


「そんなことで良いんですの? もちろん大丈夫ですわ」


 そう言うと、リカオンの背中を押した。


「リカオンも頑張ってね!」


 渋るリカオンに満面の笑みを向けると、アルメリアは厨房へ向かった。厨房へ着くと、忙しく仕事をしている人たちに向け、大きな声で声をかける、


「今日一日お手伝いさせていただくアンジーです。よろしくお願いいたします」


 一礼すると、年配の女性がアルメリアに近づいて来た。


「私はソフィアっていうんだ。話はルフス先生から聞いてるよ、よろしくね。こんなに小さいのに仕事しないといけないなんてねぇ。心配しないで大丈夫だよ。辛いことはさせないからね」


 ソフィアは優しく微笑んだ。この世界ではアルメリアぐらいの年頃で働きに出るのも少なくはないのだが、アルメリアは小柄で童顔なので幼く見えたようだった。

 ゲーム内のアルメリアは、悪役令嬢ともあって大人びて見えた。だが、背伸びして化粧を濃くし大人に見えるように振る舞っていたことに、本人になってから気づいた。王太子殿下より一歳年上なこともあって、大人で包容力があるように見せたかったのかもしれないが。特に化粧もせず質素な格好をしているアルメリアはとても幼く見える。


 アルメリアは、ソフィアを騙しているような罪悪感を覚えながら答えた。


「ありがとうございます。私はそんなに子どもじゃないので大丈夫です。頑張るのでなんでも言ってください!」


「いい子だね。そんなに背伸びしなくても、ここでは責める大人はいないから大丈夫だよ、安心しな。とりあえずジャガイモの皮を剥けるかい?」


 頷くと、早速作業についた。前世でも料理はそこまで嫌いではなかったし、久々に包丁を握ることができて楽しかった。アルメリアは黙々と作業に取りかかる。記憶が残っているせいか、問題なくジャガイモの皮剥きが終わると、今度は野菜を切るのを手伝ったり使用済みの調理器具を洗ったりしているうちに、時間はあっという間に過ぎた。


 ふと厨房の外をみると、意外にもリカオンが子どもたちに囲まれながら部屋の掃除をしっかりこなしていた。


「ほら、そこにいると僕が掃除できないよ。まったく。こちょこちょするぞ!」


 そう言いながら、ちゃんと仕事はこなしている。ほっとしながら仕事に戻ろうとすると、ソフィアが微笑みながら言った。


「子どもたちと一緒にお昼ごはん食べておいで! 今日は頑張ったね」


 笑顔で背中を押す。アルメリアは押されるがままに、食堂に出とあっという間に子どもたちに囲まれた。


「お姉ちゃんどこにいたの?」


「お兄ちゃんはあっち、お姉ちゃんはこっちで食べようよ!」


 そう言って子どもたちはアルメリアを用意されている椅子の所へ引っ張っていった。大人しくそこへ座ると、子どもたちは今日あったことを話し始めた。


「今日ね砂の山を作ってトンネル掘ってたら、ネアちゃんが水を入れて崩しちゃったんだよ」


「リンちゃんだってこの前あたしの作った土粘土の馬壊したじゃん!」


「違うよ! あのときはネアちゃんがね、あたしのねカバンおく場所に違えて馬置いたんだよ。それでね、だからね、それをどかそうとしたら壊れちゃったの」


「ねえねえねえ、ねえ! ねえってば! お姉ちゃん、本読める? お兄ちゃんは本読めるんだってさっき言ってたよ!」


 思い思い四方から話しかけてくる子どもたちの日常の報告を、アルメリアは頷きながらじっくり聞いていた。ここでは大人の絶対数が少ないので、年上のアルメリアたちに甘えたいのだろう。

 そうしているとソフィアたちが配膳をし、アルメリアたちの前にも食事が並ぶ。今日のメニューはシチューとサラダとパンだった。資金がなくても、食事はちゃんとしているのだと感心していた。そのときルーファスが食堂に来て思い切り手をたたく。


「静かに! お食事の時間ですよ! さぁ、お食事の前にお祈りをしましょう」


「はーい!」


 元気な返事をしたあと、子どもたちは居住いをただすと、額の前に手を組み目をつぶった。アルメリアも同じようにする。静まり返った食堂でルーファスが祈りを捧げる。


「私たちを見守りし神々よ、今日も我らの糧を与え罪を贖うために生を全うする役目を授け、それをお許しくださることに感謝いたします。では、いただきます」


「いただきまーす!」


 ゲームのベースが日本だったこともあり、平民の食事の挨拶はいただきますで統一されている。

 クンシラン家では、お祈りもなく『いただきます』もなく、両親のどちらかが『いただきましょう』と言って食事がスタートしていたので、洋風なお祈りも、その後にいただきますが続くのも違和感があり思わず苦笑した。


 

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