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第四十話 リカオンがついてきた

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 お茶会を数日後に控え準備をする必要があった。

 アルメリアはずっと母親のお下がりのサイズ変更をして着まわししていたが、久々にドレスを新調することにした。王室主催のお茶会ともなると、流石にそれなりの装いで出席せねばならないからだ。

 必要以上にフリルや宝石などの装飾を追加して、ドレスの値段を吊り上げようとするデザイナーに辟易しながら、適度な装飾の質素でもなく華美すぎず、アルメリアに見合ったデザインになるまで話し合いを続けドレスを仕上げた。


 アルメリアは他の令嬢たちは、毎度こんなことをしているのかと尊敬の念すら覚えた。


 祝祭の日の演劇については、スパルタカスと話をするべくお茶の時間に訪ねてくるのを待ったが、忙しいのかしばらくお茶の時間に姿を見せなかった。

 どうしたのかと思っているとある日、日課にしている城内の挨拶回りの際、仲良くしている兵士からスパルタカスは突然王太子殿下付きとなったため、最近は忙しく過ごしていると聞いた。

 リアムやアドニスからも、領地に視察に行かなければならなくなったため、しばらく会えないという内容の手紙をもらっていた。


 アルメリアを訪ねて来るのは、城内で挨拶を交わした兵士たちだけだった。それも仕事の相談ではなかった。以前傷の治療法を教えたことがあってから、怪我や病気の相談をされるようになっていた。

 それに加え挨拶で顔見知りになった兵士たちがアルメリアの顔を見に訪れてくれてもいた。


 それ以外は、誰も訪ねてこない状況にアルメリアはいよいよ登城してもすることがなくなってしまった。


 それならばと、アルメリアはこの空いている時間でオルブライト領の教会に行くことにした。ルーファスに使者を送り日時を調節すると、一日だけ休暇を申請した。

 視察として出かけることもできるが、そうなれば必ずリカオンがついてくるのでそれは避けたかった。

 別についてこられてもやましいことはなにもないのでかまわないが、リカオンはプライドが高いのでお手伝いとして孤児院に行くのは無理だろうと思った。


 当日、メイドのサラに譲ってもらった普段着用のドレスを着た。

 アルメリアは、孤児院のかなり手前に来ると、御者のエクリーにここで降ろすように伝える。


「お嬢様、こんなところでよろしいのですか? 目的地まで、まだだいぶありますよ?」


 驚いてアルメリアを止めようとするエクリーを制して、馬車を降りる。こんな手前で降りたのは、昔の経験から遊び盛りの子どもたちの行動範囲が、以外にも広いことを知っていたのからだ。


「大丈夫ですわ、ここの方が都合が良いんですの。エクリー心配してくれてありがとう。帰りもここに迎えに来てちょうだい」


「でもお嬢様、護衛も付けずにこんな距離を一人で歩くなんて危険です。お嬢様? お嬢様?!」


 エクリーは馬車を置いて追いかけようとしたが、馬車をそのまま放置するわけにはいかないと気づいたのか、困惑顔で立ち尽くした。



 アルメリアはペルシックがどこかで見守っていることがわかっていたので、別段心配はしていなかった。振り向き、エクリーに叫ぶ。


「大丈夫ですわ」


 と、そのときアルメリアの乗ってきた馬車の向こうに、もう一台馬車が来ていることに気づいた。

 その馬車がアルメリアの前に止まると、中から降りてきたのはリカオンだった。


「今日は暇を出したはずですわ。なにをなさってるの?!」


「それは僕の台詞です。勝手なことされると困るんですよ。何かあったら僕の責任になるんですから」


 だが、業務時間外のことなのでリカオンにはなんの責任はないはずである。


「今何かあっても、(わたくし)の自己責任ですわ。それに、その服装はどうしたんですの?」


 リカオンは少し着古した白いシャツにズボン、ボロボロのブーツという出で立ちだった。


「いいえ、お嬢様をお守りする役目を仰せつかっているので、何かあれば僕の責任になるんです。それに、服装ですけどお嬢様に合わせたわけではありません。僕の服が汚れるのが嫌だったので服を借りてきただけです」


 リカオンは嫌そうにズボンをつまんだ。


「そうでなければ誰がこんな格好……。とにかく行きましょう」


「ちょっとお待ちになって、口裏を合わせておかないといけませんわ。それに、お嬢様という呼び方も不味いですわね。言葉遣いも気を付けなければなりませんわよ?」


 リカオンは振り返ると、明らかに面倒な顔をして足を止めた。


「では、お嬢様はどういった設定で行く予定だったのですか?」


「働いたことがなくて、勉強のために知り合いのルフスを頼ってお手伝いしに来たということになってますわ」


「わかりました、ではそれでいきましょう」


「本当にわかってますの? そもそも(わたくし)とリカオンの関係はどう説明しますの? それに、お手伝いをするということはお仕事をしなければなりませんのよ?」


 すると、リカオンは不機嫌な顔になった。


「僕も仕事ぐらいはできますが?」


 アルメリアは苦笑した。


「それはわかってますわ。リカオンは優秀ですもの。仕事を教えたら、あっという間に覚えて要領よくこなしてしまうでしょうね。でも、人からあれやこれや指図されるのになれてまして? それに、子どもたちもとても弁が立つから生意気ですわよ? 耐えられますの? 無理そうなら今言って欲しいんですの」


 リカオンはしばらく無言になり、考えてから不貞腐れたように答える。


「それぐらい大丈夫です」


 そんな様子を見てアルメリアは一計を案じる。


「わかりましたわ、それなら(わたくし)たちは血のつながらない姉弟ということにしましょう。それなら似てなくても問題ありませんし、貴男が不味い発言をしたときに弟なら、堂々と注意できますもの。問題は貴男がちゃんと(わたくし)を姉さんと呼べるかですわね」


「え? は? 姉さん? お嬢様を?」


「無理なら馬車に戻っても結構ですわ」


 すると、リカオンはため息をついた。


「わかりました、姉さん」


「よろしい」


 アルメリアにそう言われ、リカオンは不満そうにしていたが諦めたようだった。


「じゃあ行きましょう」


 アルメリアは楽しそうに歩き始め、その後ろを嫌そうにリカオンがついて歩いている。アルメリアは振り向いてリカオンを見た。


「その感じ、姉に無理やり連れてこられた弟って感じでとってもいいですわね」


 そう言って笑うと、リカオンは更に不機嫌そうな顔をした。


「なんとでも言って下さい」

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