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第三十四話 教会への支援の形

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 そう言ってグレッグは微笑み返した。それを見るとアルメリアは、ルーファスに向き直り満面の笑みを見せる。


「そういうことですわ」


 そう言ってアンダープレートに用意されているナプキンを取ると、二つ折りにして膝に乗せた。ルーファスはそれに習い同じようにすると、アルメリアを見てぎこちなく微笑んだ。


 そうして食事が始まると、アルメリアはなるべくルーファスに話しかけ、テーブルマナーから気をそらさせるように努めた。


「そう言えば、祝祭の日に兵士たちが孤児院で披露した劇はどのようなものでしたの?」


 そう質問すると、ルーファスは劇の内容を思い出したのかふっと笑った。


「すみません、失礼しました。確か貧しい主人公の少女がお金持ちの令嬢にいじめられても健気に頑張って、最終的に王子様に見初められるというような内容だったのですが、その主人公がなんせスパルタカスだったもので」


 アルメリアもつられて笑う。


「それはとても面白そうですわね。(わたくし)も見てみたかったですわ。次の予定はありますの?」


「いえ、まだ決まっていませんが半年後にセントローズ感謝祭がありますので、やるとしたらそのときではないでしょうか」


 そう聞いてアルメリアは閃く。


(わたくし)もその劇に出たいですわ!」


 その一言にすぐさま反応したのはリカオンだった。


「お嬢様、それは本気でおっしゃっているのですか?」


「もちろん、スパルタカスに聞かなければいけませんけれど。それにアドニスやリアムを誘っても良さそうですわね」


 リカオンはため息をついた。


「お好きにどうぞ」


「あら、もちろんリカオンも参加するんですのよ? 台詞を言うのが恥ずかしいとか、自信がないのなら裏方でもかまいませんわ」


「は? なんで僕まで? それに出るとしたら役者としてしか出ませんよ。雑用なんて冗談じゃありませんからね」


 不貞腐れているリカオンは放っておいて、アルメリアはルーファスに言った。


「では、スパルタカスには(わたくし)から話しておきますわ」


 そう言って微笑んだ。ルーファスはリカオンに申し訳無さそうな視線を送り、困ったような表情をしたあと無理に笑顔を作った。


「無理はしないで下さいね」


「もちろんですわ、騎士団にも予定はあると思いますし無理強いはできませんもの」


 そんな会話をしながら運ばれてくる食事を堪能し、食後のお茶をゆっくりと楽しんているときに、アルメリアは不思議に思っていた事を質問した。


「ところで先程ここの部屋やお食事に大変驚いていたようですけれど、教会ではそんなに質素な生活をされていますの? ごめんなさい、質素な生活を蔑むつもりはありませんのよ? ただ、侍祭や読師たちはともあれ司教や司祭、助祭の位の方たちは、もっと良い生活を送っていると思っていたものですから」


 ルーファスは苦笑して答える。


「確かに、そのような生活を送っている者も少なからずいるようですね。ですが基本、我々は教会本部から支給される支給金と、個々の教会に寄せられる信徒からの寄付金のみで全てを賄っております。そんなに、裕福でもないのですよ」


 アルメリアは違和感を覚えた。


「でも、貴族から直接寄付を受けたり、逆に教会から貴族へ支援をされていることもありますわよね?」


 しばらく沈黙が続いたのち、ルーファスは苦笑しながら答える。


「領民からの寄付は個々の教区の教会で受け取っても良いことになってるのですが、貴族からの個々の教区の教会に対して直接の寄付や支援は本来禁止されています。最近では、あってないような規則ではありますけど。私のお仕えしているオルブライト教区のパーテルは人格者で極端にそういったことを嫌っていましてね。懇意にされている貴族の方から寄付の話があっても、全て断ってしまうのです。その分ご自身は質素倹約を徹底して、孤児院の運営を第一にしている素晴らしいパーテルです。私はもちろん尊敬しています」


 それに次いでアルメリアが言葉を続ける。


「でも、それだけではなかなか運営が難しい。そういうことですわね?」


 ルーファスは頷く。


「正直、とても厳しいです。年々本部からの支給も減っていますから」


「では、(わたくし)が直接寄付をしたいと言っても、受け取れないんですのよね?」


「はい、そうですね。教会本部の方に直接寄付をしていただくのは可能かと思いますが」


 一つ手助けする手立てが思い浮かんだアルメリアは、思い切ってその案を言ってみることにした。


「直接の金銭のやり取りがだめなら、技術提供は可能かしら? もしくは、(わたくし)から仕事を孤児院へ依頼するというのは?」


 ルーファスはとても驚いた顔をした。


「子どもたちを働かさせるのですか!?」


「そうなのですけど、そうではないとも言えますわね。子どもたちに過酷な労働を課すのは(わたくし)も反対です。ですのでうちの領内の訓練校に通いながら、実地訓練という形でうちの農園を少し手伝ってもらって、その農園で作られた発酵レモン塩の売上は、孤児院の利益として受け取れば良いんですわ。通うのが大変なら寮を用意しますから、問題ありませんし」


 しばらく目を見開いてアルメリアを見つめると、ルーファスは嬉しそうに微笑んだ。


「よろしいのですか?」


「えぇ、ブロン司教が反対しなければですけれど。それに農園の仕事に興味があれば、将来そのまま農園で働けるようにしますわ」


「ありがとうございます。パーテルは子どもたちのことをいつも憂いていますから、そういうことなら反対なさらないでしょう。本当にありがとうございます」


 そうして善は急げとばかりに、アルメリアとルーファスはすぐにその話の詳細を話し合った。そんなことをしているうちに気がつけば、すでに十三時を回っていた。


「あら、もうこんな時間。ごめんなさい、だいぶ引き止めてしまいましたわね。お時間は大丈夫ですの? 司教たちの話し合いは何時まで行なわれるのかしら?」


 ルーファスは振り返って時計を見て時間を確認した。そして、こちらに向き直る。


「夕方までは終わらないと思います。それに今日は私も特に用事はありませんので大丈夫ですよ。こちらこそ美味しいお食事を堪能し、楽しい時間を過ごせました、本当にありがとうございます」

誤字脱字報告ありがとうございます。

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