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第二十九話 兵士たちと昼食

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 トニーは照れ笑いをした。そこでスパルタカスが口を開く。


「閣下、お知り合いですか?」


「えぇ、そうなんですの。トニー、元気で安心しましたわ。良かったらトニーも一緒にどうかしら? できたら、ここでの生活のことを聞きたいですし。そうしたらニックにも貴方の様子を伝えられますもの」


 そして、トニーと一緒にいる兵士たちにも声をかける。


「みなさんもご一緒にいかがかしら?」


 兵士たちは驚き、顔を見合わせた。


「俺らもですか? いや、おじゃましたら悪いので」


「そんなことありませんわ。でも、貴族と一緒なんてお嫌ですわよね……」


 そう言ってがっかりした顔をすると、兵士たちは慌てて言った。


「そんなことはありません! ご一緒させていただきます!」


 こうして、アルメリアたちは周囲の兵士に混ざり昼食を取ることになった。

 貴族は贅沢な生活を送り、我が儘放題しているからと嫌う兵士も数多くいる。だが、トニーのおかげもあって、アルメリアのことは偏見のない目で見てくれる者が多かった。おかげで最初は警戒していた兵士たちも、打ち解けた雰囲気になった。


 大きなテーブルにみんなで並んで座ると、出された昼食内容はパンとシチュー、それにサラダだった。スパルタカスは心配そうにアルメリアを見つめる。


「閣下のお口に合うかどうか……」


 アルメリアは食事内容を見て、前世での小学校の給食を思い出していた。


「とても美味しそうてすわ! ところで(わたくし)はこの量でちょうど良いですけれど、兵士のみなさんはこの量で足りてますの?」


「おかわりができますから」


 そう言ってスパルタカスは満面の笑みを見せた。


「そうなんですのね、良かったですわ」


 アルメリアも微笑んで返すと、お膳を前に両手を合わせる。


「いただきます」


 周囲の者が心配そうに見守っている中、アルメリアがシチューをひとくち口に入れる。すると懐かしい味がして、思わず満面の笑みになり興奮気味に言った。


「これ、本当に美味しいですわ!」


 すると兵士の一人が叫ぶ。


「安心してください、おかわり自由です!」


 その言葉に兵士たちの緊張が溶けたのか、どっと笑いが起きた。アルメリアは恥ずかしくなり、顔を赤くした。


「ごめんなさい、(はした)ないところをお見せしてしまいましたわね」


 そんなアルメリアを眩しそうに見つめながら、スパルタカスは答える。


「いいえ、いいえ閣下。そんなことありません。とても可愛らしくて……。私は、今、閣下にお仕えできて本当に光栄だと再実感しました。さぁ、冷めないうちにいただきましょう」


 照れ隠しに苦笑いをすると、アルメリアはシチューを口に運んだ。


 食事をゆっくり取りながらアルメリアは兵士たちに普段の過ごし方や、ここでの生活などを質問した。美味しいものを囲んでいるせいか、直接貴族と話ができる機会が少ないせいか、彼らは自分たちの日常を色々話してくれた。アルメリアは、笑顔でその話を聞いていた。


 兵士となって一番大変なのは実は体力作りよりも、装備を自前で揃えなければならないことと、慣れない武具の手入れだそうだ。


 武具を揃えるのに国から手当が幾らか支給されているのだが、雨の日の訓練後では金具の部分が錆びてすぐに駄目になってしまうそうで、そうなると頻繁に交換せねばならず、お金もかかるとのことだった。

 他にも屋上の運動場が狭いとか細々した不満があるものの、それでもみんなで訓練し鍛えるのは決して嫌なことではなく、国を守るという気持ちを共有し団結しており、そんな仲間たちとの共同生活も楽しいとのことだった。


 それになにより、衣食住が保証されているのはとても有難いと笑顔で話していた。


 そして先日の祝祭の日に孤児院で演劇をしたときのことにまで話がおよび、その会話に混じってルーファスが孤児院での生活の話などをしてくれた。

 ここでルーファスの話や兵士たちに送られた手紙の内容などを聞く限り、孤児院で人身売買が行われているとは到底思えなかった。


 こうして短い時間ではあるものの、アルメリアは有意義な時間を過ごすことができた。


「今日は楽しい時間を過ごせました。本当にありがとう」


 アルメリアがそう言うと


「こちらこそ楽しい時間でした」


「お嬢様、また来てください!」


「お嬢様ならいつでも大歓迎です!」


 兵士たちは口々にそう言ってくれた。ルーファスは時間があるときに、孤児院に遊びに来てほしいと言ってくれたので、必ず訪問することを約束した。


 そして改めて突然食堂におじゃましてしまった非礼を詫びながらアルメリアは食堂を後にした。


 門衛棟を出ると、今度は城門内の案内をしてもらうことになった。すると、素早く近づいてきたペルシックが背後から声をかけてきた。


「お嬢様、今度は(わたくし)が門衛棟の下までお連れ致しましょう」


 そう言って、軽々とアルメリアを抱き上げた。そして、アルメリアにしか聞こえないように囁いた。


「お嬢様、先ほどはお守りできなくて申し訳ありませんでした。今後はあのような真似は絶対にさせません」


 ペルシックが言っているのは、先ほどスパルタカスに抱き上げられて移動されたことだろう。アルメリアは、ペルシックがそんな心配をしてくれていたことに驚いた。


「爺、ありがとう。先ほどは子供扱いされて恥ずかしかっただけですから、大丈夫ですわ。正直、今も少し恥ずかしいのですけれど」


 そう言って微笑んだ。すると、階段を下りながらペルシックはため息をついた。


「お嬢様、そう言った問題ではないのです。大体、お嬢様を子供として見ている者は、お嬢様の周囲にはおりません。寄ってくる者共はみな、お嬢様を立派なレディとして接しております。そこは自覚をお持ちになられて、油断なきようにされるとよろしいかと存じます。もちろん(わたくし)も、全力でお嬢様をお守りする所存でおります。ですが、今回のようにお守りできないこともあるかと。ですので、申し訳ございませんが、そのようなときは自衛していただくしかないのです」

誤字脱字報告ありがとうございます。

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