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第二十五話 スパルタカスのご案内

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 スパルタカスの執務室はアルメリアの執務室から離れた場所にあり、アルメリアの部屋より小さな部屋が割り当てられていた。


「ようこそ、どうぞこちらにおかけになって下さい」


 執務室に入ると、スパルタカスはそう言って立ってアルメリアを出迎えた。


「狭い部屋ですが、ゆっくりしていって下さい。本来は私の方から出向く方のが筋なのでしょうが、私のような者が閣下の執務室へ行くのは憚られまして」


 アルメリアは微笑んだ。


「そんなことおっしゃらずに、いつでもいらしてください」


 するとスパルタカスの表情がみるみる明るくなった。


「ありがとうございます。そうだ、お茶の準備をさせましょう」


 そう言って嬉しそうに部屋の中にいた部下に目配せする。アルメリアは慌ててそれを制した。


「すみません、ここに長居するつもりはありませんの。できれば城内統括には騎士団の詰所や施設の案内をしていただきたいのです」


 スパルタカスは二度三度と大きく頷く。


「流石閣下、まずは自身の目で現状を確認なさるのですね。こちらもこれから相談することが何度かあるでしょうから、騎士団の現状を視察していただくのは大変結構なことです。では案内させていただきます」


 そして立ち上がると、アルメリアに手を差し出した。その手を取るとアルメリアは満面の笑みを浮かべる。


「ありがとうございます。よろしくお願いいたしますわ」



 城の前方にあるクランクになった城壁の外側左右に張り出し陣と呼ばれている強固な建物があり、まずはその前まで案内される。


「この張り出し陣は、城が攻められたときの防衛最前線となりますから、多くの兵士が詰めております。この張り出し陣の西棟の屋上に兵士の訓練場があり、東棟の屋上には門衛棟があります。門衛棟は兵士たちの住居になっていますから、有事の際そのまま外壁上部の回廊を通って戦闘配備につけるのです。それに城門前のクランクに出るまでの道のりが城をぐるりと囲って時計回りにできているでしょう? あれは敵兵が来たときに、回廊から敵兵の盾を持っていない無防備な右側から攻撃できるようにするためなのです」


 流石城塞とはよく言ったものだ、と感心しながら話を聞いていたが、スパルタカスはそんなアルメリアを見て、はっと我に返ったように言った。


「こんな話しは面白くないですね。申し訳ありません、女性に不慣れなものですから何を話してよいのか……。それに閣下とこうして城内を歩いているのですから、とても緊張しています」


 そう言って微笑んだ。アルメリアは首を振る。


「いいえ、とても面白く拝聴しておりましたわ。(わたくし)はそういったことが知りたいのです。それに(わたくし)には気安くしてくださってかまいませんわ。どうぞ気を楽になさって下さい」


 スパルタカスは困ったような顔をした。


「ありがとうございます。ですが、私は先日閣下に大変失礼なことをしました。あれは許されることではありません。なのにこうして案内させていただけるだけでもとても有り難く、光栄なことだと思っているのです。気安くなどとてもできません」


 そう言ってじっとアルメリアを見つめると、微笑み頷いた。


「ではまず、訓練場を案内いたしましょう。兵士たちの訓練の様子などが見れるでしょう。視界の悪い急な石階段を登る必要がありますが、大丈夫ですか? 難しいようでしたら、私が抱きかかえて登りますので遠慮せずに申し付けて下さい」


 アルメリアは顔を赤くして慌てて首を振る。そんなはしたないことを頼めるはずがない。それにそんなことをされては、子供のようではないか。


「け、結構ですわ、大丈夫です。あの、どうしてものときはペルシックに頼みますから……」


 スパルタカスは少し残念そうな顔をしたが、恥ずかしそうにしているアルメリアを愛おしそうに見つめる。


「そうですか。では、参りましょう」


 そう言って、アルメリアの手を引いて歩き始めた。


 窓がないため、壁に蝋燭が立ててあるだけの光の差さない狭い石階段は、言われた通り登りにくいものだった。その階段をゆっくりと登り、五階分ぐらい登ったところで屋上に出る。そこは広い空間があった。屋上は高い石壁に囲まれているため、外部からは見えないようになっている。そこで数十人の兵士たちが、体術の訓練をしていた。

 アルメリアたちは邪魔にならぬように遠目に見つめる。


「兵士たちは体力勝負ですから、基本はいつも外で走り込みなどの体力作りをしてます。剣や盾、装備は大変重いものです、それらを持っても問題なく動ける体力がなくてはなりませんから。対してこちらの運動場では、主に格闘や剣術の訓練をします。剣や盾を戦闘中に落としてしまうこともあるでしょう。そんなときにはどんなものでも武器に変えて戦かったり、手持ちの武器がないときに、相手が剣を持っている状況ならば剣を持つ相手の方が動きは遅いですから、その隙をついてこちらが有利に戦える戦術を覚えたりと、臨機応変に戦う術を訓練によって身につけるのです。戦では生死を争いますのでルール無用、とにかく生き残ること。それを第一に考え動けるよう叩き込むのです。ただ、それだけをやっていると、この平和な治世にあって、兵士たちの士気も下がりますから、年に一回トーナメントを開催してルールに乗っ取り決闘して腕を競いあう、そんなことも行っています」


 戦場ではルールがないという言葉に、現実を突きつけられたような気持ちになった。今後絶対に戦争にならないとは限らない。特にロベリア国は防衛の要なので、なにかあれば一番最初に攻撃されることになるかもしれない。

 そして不意に、前世でのゲームがバットエンドになったときのことを思い出す。ゲームでは救国できなければ、帝国に攻められ陥落し、ロベリア国は滅亡し帝国の一部へと戻るというエンディングだったはずだ。

 彼らのためにも、自分のためにもこの国の腐敗を正さなければならないと、気が引き締まる思いがした。

 難しい顔をしているアルメリアに、スパルタカスは心配そうに訊く。


「なにか不安なことでも?」


誤字脱字報告ありがとうございます。

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