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第ニ話 危機一髪

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 そう言って、ルクの手を取り顔を見つめる。ルクは諦めたようにため息をつくと口を開いた。


「そうかもな、確かに今は俺はただのルクで、おまえはただのアンジーだよな。それに俺たちはただの友達だ」


 含みのあるような言い方だったが、アルメリアは強引にルクの手を強く握って笑顔で言った。


「うん、友達! 仲良くしてよね!」


 ルクは少し戸惑った様子だったが、意を決したようにアルメリアを見つめた。


「わかった、今まで距離を取って悪かった」


 そう言うと、手を強く握り返した。


 と、そのときルクの服が後の柵に引っ掛かり、柵がルクの方にに倒れてきた。

 アルメリアは咄嗟に掴んでいたルクの手を思い切り手前へ引っ張り、ルクと柵の間に体を入れルクをかばった。

 倒れてきた木の柵は古いもので、そんなに重くはなくアルメリアの肩に倒れたものの軽い打撲程度ですんだ。ルクから少し体を離すと、素早くルクが怪我をしていないか全身を見た。


「びっくりした。ルク、大丈夫だった?」


 アルメリアが笑いながら訊くと、ルクは少し怒ったように言った。


「大丈夫じゃない。なんで俺をかばうんだ!」


 そして、アルメリアの全身を心配そうに見ると、大きな怪我を負っていないことを確認した。


「アンジー、俺は頑丈だ、かばう必要はない。それよりおまえはもっと自分を大切にしてくれ」


 アルメリアはルクが自分を心配して怒ったのだと気づいた。


「ごめん。でもさ思わず体が動いちゃうんだもん」


 申し訳なさそうに答えるアルメリアに、ルクは半ば呆れたように言った。


「アンジーがなんともなかったから良かったが、なにかあったらどうするんだ。それにこの前だって変な大人からシルを庇って、危うくおまえが拐われそうになったんだろ?」


 ルクの言っている出来事は、数日前にあった出来事だった。


 シルが一人でいるところに、男性が近づいてきて彼女を抱えてどこかに連れていこうとしていた。

 それを見ていたアルメリアは駆け寄ると、その男の背中を何度も叩いた。運良くその男は驚いてシルを落としたので、アルメリアは


「間抜け!」


 と叫びその男を挑発すると、そのまま自分が囮になり森の中へ駆けだした。アルメリアは大人が到底潜り抜けられないような隙間を潜り抜け、相手を巻くと同時にシルを逃がしたのだ。



 思い出してアルメリアは苦笑いをした。


「だって、シルが危なかったし。シルはおとなしいから守ってあげないと。ルクだって今までそうやってシルを守ってきたんでしょう?」


 その返答に、ルクは複雑な顔をした。


「そうかもしれないが。じゃあ、おまえのことは誰が守るんだ?」


 アルメリアは少し考えた。自分は屋敷に戻れば多くの大人たちに囲まれ、その上両親もいる。


「あたしは家に大人たちがいるし、それに強いもん。何かあったら自分で身を守れるよ」


 そう答えたが、それでもルクは不満そうに更に言う。


「人のこと庇ってばっかりいるのに?」


 その返しにアルメリアは声を出して笑った。


「それもそうだね。でもほら、あたし本当に頑丈だし、強いから大丈夫だよ」


 そう言って胸をはった。それを見てルクも声を出して笑う。


「わかった、説得は諦めた。じゃあ、おまえのことは俺がずっと守ってやる」


 そう言って、初めて優しくアルメリアに微笑んだ。





 こうして、ルクとも打ち解けアルメリアは毎日のようにみんなと遊んで過ごしていた。


 男の子たちは木登りをしたり、駆け回っていることが多かったが、アルメリアとシルはいつも座って二人でおしゃべりして過ごした。


「アンジー、この前は助けてくれてありがとうね。でも今度なにかあったときは私のことは良いから、逃げないとだめよ?」


 シルに言われてアルメリアは曖昧に返事をした。その様子を見て、彼女は心配そうな顔になった。


「お願いよ、私は本当に大丈夫だから。アンジーになにかあったら、私は自分のことを許せそうにないもの」


 と微笑んでアンジーの頭を撫でた。アンジーは先日ルクに怒られたことを思い出した。


「この前、ルクにもおんなじこと怒られちゃった。気をつける、約束する!」


 アルメリアはそう答えたが、約束できる自信はなかった。同じ状況に遭遇したら迷わずシルを助けようとするだろう。



 考えてみると、シルはいつも上等そうなドレスを着ており、とても美しかった。誘拐されそうになったのもそのためだろう。

 それに気づくとアルメリアは、孤児院に悲観的な印象を持っていたが、綺麗なドレスを着てみんなと生活ができるのが楽しそうだと思った。


「シルはすごく綺麗だし、服も可愛いの着てるし、みんなと暮らせて孤児院って楽しそうだよね。私も孤児院に行ってみたいな」


 すると、シルは一瞬悲しそうな顔をした。


「そう見える?」


 シルが悲しそうな顔をしたので、アルメリアは心配になった。


「楽しくないの? 嫌なことされるの?」


 シルは首を振った。


「今のところは大切にしてもらってるけどね。それは私に価値があるからだと思う」


 そこにルクがやってきた。


「大丈夫か?」


 ルクはシルが拐われそうになったことがあったからか、こうして何度か二人の様子を見に来るようになった。


「私たちは大丈夫よ」


 そう答えたシルは、いつもの笑顔にもどっていた。


 その後なんとなくその話題には触れないほうが良いのではないかと思い、アルメリアはあえてその話題を口にすることはなくなった。シルもその話題を出すことはなかった。




 そんな中いつも五人で遊んでいるのだが、シルが用事があって来られなかった日があり、他の三人は虫取りに出かけると言った。


「虫苦手だし、シルがいないから残念だけどあたし帰るね! 頑張っていっぱいつかまえてね」


 アルメリアは、話し相手もいないので帰ることにした。


「アンジー、待て」


 ルクはそう言って、ルクはアルメリアの腕をつかんで引き止めた。


「俺は虫は取らない。だからお前と一緒にいてやる」


 アルメリアは断ろうとしたが、それを察知したのかルクは腕をつかむ手に更に力をいれた。そして、じっとアルメリアを見つめた。

 ただならぬその雰囲気や眼差しに気圧され、思わず頷いていた。

 すると、マニが後ろで楽しそうに微笑んで言った。


「良かったね。じゃあ僕らは虫取りしてくるから」


 その横でルフスが不満そうな顔をした。


「なーんだ、ルクとアンジーが行かないなら俺も虫取るのやめて、ルクやアンジーと遊ぶ」


 マニが慌てる。


「馬鹿だなお前。僕らは虫取りするんだよ、二人の邪魔なんだから。ほら行くぞ!」


 マニはルフスの腕をつかんで、強引に森の方へ歩き出した。


「なんだよマニ! 馬鹿ってどういうことだよ!」


 そう言ってごねているルフスを、マニは森の方へ連れていってしまった。アルメリアがそんな二人を呆気にとられて見ていると、横からルクに話しかけられる。


「おい、お前に付き合ってやるから、行きたい所を言え!」


 ルクにはそう言われたが、とくに行きたいところはなかった。


「あたしは別にどこに行こうかとか、考えてなかったなぁ。ルクはどっか行きたいところあるの?」


 その質問にルクは嬉しそうに答える。


「なら、俺がいいところに連れていってやる」


 そう言ってアルメリアの手を取ると歩き始めた。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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