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第百ハ十一話 矛先は教皇へ

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 イーデンは申し訳なさそうに言った。


「すみません、アルメリアお嬢様の仰っていることは本当のことです」


 すると、ダチュラはアルメリアの方へ向きなおりアルメリアを指差す。


「みなさん今の聞いたかしら、やっぱりこの女とんでもない女よ。あたしにスパイを送り込んだんですもの、これでどちらがおかしいかわかったでしょう?」


 そこでムスカリが口を挟む。


「それよりも、先ほど君が言った『その書類だけは本物なんだから』とはどういう意味だ?」


 ダチュラはびくりとして目をキョロキョロさせながら何事か考えてる様子になると答える。


「だって、(わたくし)はイーデンを信じてましたから、その書類は本物だと思ったんですわ」


「違う、私が問いたいのはそこではない『その書類だけ本物』ということは、それ以外の書類は偽物だと言うことを君は知っていたということだろう?」


「うるさいわね、だからなんだって言うのよ!」


 追い詰められたダチュラは、スカビオサを見て首にかけているネックレスを見せつけるように触った。


 すると今まで黙っていたスカビオサが口を開いた。


「もうそこまでにしませんか? 確かに、私は孤児院に長く預けられていたその娘に同情し、肩入れしてしまったことは確かです、それは本当に申し訳なかった。だが、その娘は市井で育ちまだ礼節がわかっていない。複数人の大人がよってたかって攻めるのは少々大人げないのではなかろうか?」


 そこでヘンリーが声を出して笑った。


「よくもまぁ言ったもんだぜ、このタヌキじじぃ。先日クンシラン家に乗り込んだときは、お嬢ちゃんを有無を言わさず捕らえて軟禁しやがったくせに。その上なんだ、同情した娘が強奪を働いたってのにそれを見て見ぬふりか? 大したもんだぜ」


 スカビオサは顔色ひとつ変えずに答える。


「確かに、これは罪深いことかもしれません。しかし、きっとなにか誤解があるのです。もし本当にダチュラが悪いことをしていたのだとしたら、私が責任をもってダチュラに罪を償わせましょう。そのためにもこちらで彼女を預からせてもらえないだろうか?」


 そう言ってアルメリアに向きなおる。


「それに、先日のクンシラン家への捜査は止む終えないことなのです。なんせ証拠の書類がありましたから」


 そう言うとスカビオサは大きくため息をついて続ける。


「ですが、今までの話が本当ならばこれは私の責任でもありますな」


 そこでアルメリアが答える。


「だとしても有無を言わさず(わたくし)を軟禁したのは、教皇の判断ですわよね?」


「確かに、私の判断です。あのときは証拠書類を本物と信じきっていたのです。そのせいで貴女にはとても辛い思いをさせてしまったかもしれませんね。後日改めて謝罪したい」


 そこでヘンリーがまた口を挟む。


「ふざけんなタヌキじじぃ。その娘にすべての罪を着せて逃げようとしてるみたいだが、そう簡単に逃げられると思うなよ?」


 スカビオサは微笑んだ。


「それは穏やかではありませんな、では私がそれらに関与していたという証拠はありますかな?」


 そう問われヘンリーは鼻で笑った。


「俺はな、お嬢ちゃんに雇われて以前からツルス港を守ってる。そこで拿捕した怪しい船舶がアンジートランスポートを名乗ってな。調べたらローズクリーンの船だってわかったんだよ。これがどういう意味かわかるか? 教会が関与してるってことだ。それだけじゃねぇ、その船の積み荷はなんだったと思う? なんと孤児たちだったんだよ」


 スカビオサは微笑むと答える。


「その孤児たちが教会が預かっていた孤児だとどうしてわかるのです? そういえば……クンシラン領にはクンシラン公爵令嬢が建てた孤児院がありましたな」


 ヘンリーは言い返す。


「おまえ、アホだな。クンシラン領の孤児たちじゃねぇよ。孤児たちは自分がどこの出身でどこの孤児院からきたかもちゃんと話してくれたぜ。あんな年端もいかぬ子どもが嘘を言ったとでも言うのか?」


 その言い方に流石に怒りを覚えたのか、スカビオサはムッとしながら答える。


「失礼だが、子どもたちは純粋なものです。クンシラン公爵令嬢が子どもたちにそう話すように教え込んだのでは?」


「そりゃねぇわ。その孤児たちは俺の部下が養子にしたり、俺が養ってるけど育ての親にすらそんなこと話したこたぁねぇよ。逆に訊くがな、じゃあその孤児たちがクンシラン領孤児院の子どもたちだってあんた証明できるか?」


 そこでようやくスカビオサは押し黙った。そこで更にアルメリアが言った。


「それともうひとつ、確認したいことがありますわ」


 そう言うと、会場内に向けて声をかける。


「スイリー男爵とシャイルド伯爵はいらっしゃるかしら」


 名を呼ばれたふたりは人集りの中からおずおずと前の方へ出てくると返事をした。

 アルメリアは最終確認をする。


「言ってしまってもよろしいかしら?」


 ふたりは無言で頷いた。


「スイリー男爵とシャイルド伯爵は、今回の一連の詐欺の被害者ですわ。ですがそれだけではなく、詐欺グループの貿易組織に行ったさいに、ある人物を見たそうですの」


 そう言うと、ふたりに向きなおる。


「その人物はここにいますか?」


 シャイルド伯爵は困惑気味に答える。


「しっかり顔を見たわけではありませんから、はっきりは答えられません」


 続いて申し訳なさそうにスイリー男爵も首を振って答える。

 そこでアルメリアはリカオンに向かって目で合図した。リカオンはそれを受けてスカビオサの方へ歩いて行くと目の前で立ち止まる。


「教皇、失礼いたします。これも教皇の無罪を証明するためだと思ってお許しください」


 スカビオサはリカオンを訝しげに見つめる。


「お前はなにをするつもりだ?」


 リカオンは無言でスカビオサの右腕を掴むと、素早く手の甲を覆っている袖をめくりシャイルド伯爵とスイリー男爵に見せた。


 するとスイリー男爵は驚いて叫ぶ。


「その痣だ! 私が見たのはその痣のある男です」


 それに続いてシャイルド伯爵も戸惑いながらアルメリアに問いかける。


「私が見たのも同じ痣です。まさか、教皇が関わっていたと?」

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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