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第百八十話 話が通じない相手

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 ダチュラは慌てる。


「な、なに言ってるのよ! これは(わたくし)のドレスですわ!」


「え~! デサインした僕が言ってるのに言い逃れ? だいたい、そのドレスはハマカンザシって花をモチーフにしてるんだよね。わかる?」


「花のモチーフなら、(わたくし)にぴったりじゃないの、なにがおかしいのよ!」


 ファニーは吹き出して笑った。


「ハマカンザシって別名『アルメリア』なんだけど? ってかあんたそれそもそも泥棒だから」


 そこでムスカリが口を開く。


「先日、教会が妙な言いがかりをつけてアルメリアの屋敷を捜索した。そのときになぜか君も一緒にアルメリアの屋敷にきたそうだな。そこで強奪したのだろう?」


 ダチュラは泣きながら弁明する。


「だって、どう考えてもこのドレスはあたしが着た方が似合うもん。それにあたしが主人公なのになんでこんなに責められなきゃいけないの?」


 ファニーが呆れたように言う。


「泥棒したら、そりゃあんた責められるに決まってるでしょ。しかもなんでダチュラが『アルメリア』を着るのさ、ダチュラは『ダチュラ』をモチーフにしたドレス着なよ」


 そこへムスカリが畳み掛けるように言った。


「それから今日アルメリアが着ているドレスも、もちろん私がプレゼントしたものだ。令嬢にドレスを堂々と送ることができるのは婚約者の特権であり、その中には色々な意味が含まれるものだ。それを強奪とは、無粋にもほどがある」


「殿下もういいですわ」


「アルメリア、君は優しすぎる」


 アルメリアは首を振る。


「今は彼女が言ったことの反証の場ですもの、(わたくし)は私怨ではなく、まずはしっかり彼女の罪をつまびらかにすることが先決だと思ってますわ」


 すると泣いていたはずのダチュラが、顔を上げニヤリと笑った。


「『罪をつまびらかにすることが先決ですわ』って、お花畑ヒロインちゃんってば今までずっと陰で私のこと調べてたの? 私ってば粘着されてる? 凄い執着! こっわーい!」


 その言葉に素早くムスカリが反応する。


「貴様!」


 それをアルメリアは制した。


「殿下、こういった手合いは相手をすればするだけ本人が喜ぶだけですわ、放っておきましょう」


 そう言うとダチュラに向きなおる。


「ダチュラ、今は(わたくし)の反証の場ですわ、関係のない話は無視させていただきますわね」


 そう言って微笑むと話を続ける。


「先ほど貴女は、(わたくし)が詐欺を指示したような書類を自分で書いて貶められたように見せかけたと言いましたわね。ならば、あの書類を(わたくし)が証拠として提出しないのはおかしいことではなくて?」


 その質問にダチュラは目を逸らしてなにも答えようとしなかった。アルメリアは続ける。


「しかも、あの書類を最初に持ち出したのは他でもない貴女ですわよね?」


 ダチュラは一瞬驚くと無言でアルメリアを睨む。


「ルフスから聞きましたの。貴女があの証拠書類を渡してきたと。だからこちらの手元にも同じ書類がありますわ。この証拠書類を『詐欺証拠』と呼びますわね」


 リカオンがその書類をダチュラに見せると、ダチュラはその書類を無言で見つめた。


「ところであの詐欺についてですけれど、まだその詳細を知るものは多くありません。ということは、あの書類を書いた人物は詐欺に関与した人間だと言えますわ。ここまでは貴女の意見も一致してますわよね?」


 アルメリアが質問しても、ダチュラは不貞腐れたようにそっぽを向いて黙ったままだった。


「返事をしてくれないようですから理解してくれたと考えて話を続けますわ。実は詐欺に関して(わたくし)も大切な証拠を持ってますの」


 そう言うと、ムスカリを見つめた。ムスカリは預かっていた詐欺のマニュアルをアルメリアに手渡した。アルメリアはそれを受けとると続ける。


「これは詐欺組織内部の詐欺のマニュアルですわ。ここには事細かな指示がメモされていますの」


 そう言うとあるページを開き掲げた。


「ここにとある重要な書き込みがありますわ『ダチュラお嬢様の指示によると』と。これは他のページにも何ヵ所か書かれていますの」


 するとダチュラはそれに素早く反論した。


「騙したわね! そんなものまで作るなんて、信じらんない! そこまでして私を貶めたいの?」


 そこで予想だにしない出来事が起こった。スカビオサの背後にいた審問官が突然手を上げ一歩前に出ると言った。


「そこに書かれたことは事実です。そのマニュアルは私がルフスへ渡したものですから、証言できます」


 突然の告発に周囲がざわめいた。ダチュラはその審問官を睨んだ。


「どうせあんたもアルメリアに金をもらったんでしょう? 皆さん! 騙されないで下さい!」


 アルメリアは見苦しい言い訳を並べるダチュラに向かって冷静に言った。


「まだ話は終わってません。すべて話し終えてからみなさんには判断していただけばよろしいですわ」


「な、なにあんた勝手に決めてんのよ!」


「いいえ、ダチュラ。これは貴女からはじめたことでしょう? でしたら最後までしっかりやりましょう」


 そう言って、ムスカリに向きなおる。


「これらのことを総合すると、詐欺を指示したのはダチュラであり詐欺の詳細を知っていたダチュラが『詐欺証拠』を書いたということになりますわよね」


 ムスカリは頷くと口を開く。


「確かに、これを書けるのは詐欺を知るものだ。君の言っていることに矛盾はない」


「殿下、ありがとうございます。続いて、お願いしたいことがあります。先ほどダチュラから預かった(わたくし)が横領していたという証拠書類を読んでいただけるでしょうか」


 それを聞いてダチュラは満面の笑みを浮かべる。


「その件に関してはあんたがどう反論しようと無駄よ! その書類だけは本物なんだから!」


 アルメリアは内心、かかった! と思った。これだけ嘘偽りの証拠を出してアルメリアを貶めようとするのだ、それらが嘘だと追い詰めたときにこの証拠にすがりつきぼろを出すのではないかと考えていた。だが実際にこれだけ上手くいくとは思いもよらなかった。


「『その書類だけは本物』とは一体どういうことかしら?」


「しらばっくれないでよ、他のことに関しては言い逃れできても、その書類は本物なんだから横領のことだけは言い逃れできないわよ!」


 そう叫ぶダチュラを無視して、ムスカリはしばらくその書類を読むと、笑いだした。


「なんだこの書類は、この書類は傑作だ。よく見ると一番大切な部分で名前がアンチョビファウンデーションとグロッキー帝国になっている上、最後に付け足しでこの書類はアンジーファウンデーションとグロリオサ帝国が交わした正式な虚言書類とする。と明記されている」


「はぁ?」


 ダチュラはそう言うと、イーデンを見る。


「イーデン、どういうことなの?」


 その問いにアルメリアが答えた。


「ごめんなさいね、イーデンはうちの人間なの」


「イーデン? 嘘よね」


誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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