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第百七十九話 いちゃもん

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

「話を続けさせてもらいますね」


 アドニスはそう言うと続ける。


「アルメリアは偏見を持つことなく、ヘンリーと信頼関係を築き、協力してツルス港を守ってきました。その信頼があったからこそ、不仲だった私とヘンリーとの間を取り持つことができたのです。お陰で我々は誤解を解き共闘することができました。そんなアルメリアのこの行いは、国にとって大きな利益をもたらしたといっても過言ではないでしょう」


 それを聞いてダチュラは、ため息混じりに残念そうに言った。


「アドニス、貴男は洗脳されてます。だからアルメリアの行いが善行に見えてしまうんです」


 アドニスは首を振る。


「いいえ、違いますね。どうにも貴女はアルメリアの素晴らしさを認めたくないようだが、これは事実です。さて、そんな経緯から私はヘンリーと共にロベリア海域において、海賊行為をしているものたちを捕らえました。彼らは最初自身をモーガン一派と名乗り、アンジートランスポートが関係するような供述をしました。そして、船からはその証拠となる書類も出てきました」


 それを聞いてダチュラの顔がぱっと明るくなる。


「ほら、やっぱり。それなのになぜアルメリアを擁護しますの?」


「その後の捜査で海賊のアジトに乗り込み、本当はキッド一派とローズクリーン貿易が関与していたことが明らかとなったからです」


「はぁ?」


 唖然としているダチュラを無視してアドニスは言った。


「この事実もヘンリーやアルメリアがいなければたどりつけなかったかもしれません。アルメリアのお陰で登録番号からどこの組織の船か知ることができましたし、ヘンリーはキッド一派がコウモリのタトゥを入れていることを知っていたので、それを足掛かりに彼らの正体を暴き、アジトに乗り込むことができたのですからね」


 それを受けてヘンリーは歯を見せて笑った。


「いやぁ、アドニスの粘り強い捜査のお陰だ。お前は大した奴だぜ」


 アドニスはヘンリーに笑顔を見せると、ダチュラに向きなおった。


「ローズクリーン貿易の正体はキッド一派だった訳ですが、その後ろには思いもよらぬ組織がついていました。この書類を見てください。これはモーガン一派やアンジートランスポートを装い、海賊行為をするよう指示した教会が発行した指示書です」


 そう言って書類を掲げる。


「ローズクリーン貿易を陰で指示していたもの、それはチューベローズだったのです」


 周囲はざわついたが、スカビオサは眉ひとつ動かさずにその話を聞いていた。

 アドニスはムスカリにその指示書を渡し、ダチュラに向きなおる。


「それと、付け加えておきますがアンジーファウンデーションはいたって健全でクリーンな組織です。それは調べていただければすぐに証明できるでしょう。なのになぜ貴女は怪しい組織と言ったのでしょうか。そう証言なさるなら、その証拠を示していただけますか?」


 ダチュラはアドニスにそう言われると、微笑み返した。


「無理ですわ、アルメリアはとても悪賢いのです。いくら調べてもぼろをだすはずがありません。だから健全な組織に見えるかもしれませんわね。でも、騙されてはいけませんわ」


 それを聞いてヘンリーが失笑した。


「なんだそりゃ、あんためちゃくちゃだな。証拠も証明もできずに怪しいってだけで決めつけてよ、そりゃただのいちゃもんだぜ。偉そうに言っててこれかよ、ふは、こりゃあ傑作だ」


 そしてもう我慢ならないとばかりに、声を出して笑いだした。それにつられ、周囲の貴族たちも笑い始める。


「黙りなさい!」


 そう叫ぶダチュラの声は、笑い声でかき消された。ようやくその笑いが収まってきたところで、アルメリアが口を開く。


「みなさん、発言してもよろしいかしら?」


 そう言ってアルメリアは貴族たちが完全に静まり返るのを待ち口を開いた。


「貿易についてはアドニスが反証してくださったから、(わたくし)からはなにも言うことはありませんわ。ですから次の事柄についてお話ししたいと思います。ダチュラ、貴女は(わたくし)が散財していたと言いましたわね」


 すると、ムスカリが口を挟んだ。


「それについては、私が説明しよう」


 アルメリアは驚いてムスカリの顔を見る。それに答えてムスカリはアルメリアに優しく微笑みかけた。


「アルメリア、私たちは婚約者なのだから君を守るのは私の役目だ、任せてほしい」


 そう言うとムスカリは微笑み改まって全員に向かって言った。


「ご存じの通り、私はアルメリアを溺愛している。そうそう、今日の舞踏会最初の婚約破棄の茶番はみんなも気づいているだろうが、あれはちょっとした余興だった」


 これに周囲の貴族たちが『どうりで』『まぁそうでしょうね』『なかなか面白かったです』など、感想を述べた。


 ムスカリは満足そうに頷くと続ける。


「さて、それでは先ほどクインシー男爵令嬢が提出した領収書について話をしよう。私の溺愛する婚約者は質素・倹約がドレスを着て歩いているような令嬢でね。まぁ、それが魅力なのだが」


 そこで笑いが起こる。アルメリアは恥ずかしくて俯いた。ムスカリはそんなアルメリアの横に立つとリアムから件の領収書を受け取り説明し始める。


「この提出された領収書を見てほしい。アルメリアが指示して王宮にお金を請求したように発行されたいかにも偽物の領収書だ。実際は寂しいことに、私の愛する婚約者はこういったものを要求してくれたことは一度もない」


 周囲から『そりゃそうだろう』や『そうだろうと思った』などの発言が漏れ聞こえる。ムスカリは構わず続ける。


「なのでこの領収書通りに私から愛しいアルメリアへドレスや装飾品をプレゼントして、領収書を本物とすることにした」


 そんなことを言われ、アルメリアは顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。

 ムスカリは嬉しそうにアルメリアに言う。


「ほら、恥ずかしがらなくていい顔を上げてごらん婚約者どの」


 更に恥ずかしくなったアルメリアは、ムスカリの後ろに隠れた。

 周囲からクスクスと笑いが起こる。ムスカリは満足そうに微笑むとダチュラに向かって言った。


「なぜ私がそんな回りくどいことをしたか君はわからないだろう。私はね、こんなちゃちな偽物だとすぐにばれるような代物であれ、少しでもアルメリアを貶められるようなことがあるのが許せなかった。だからこそ、私からプレゼントした形にしてこの馬鹿馬鹿しい領収書を正当なものにする必要があったわけだ。それに王宮が婚約者に対し、これぐらいの出費で文句を言うとでも思ったのか?」


 ダチュラは涙をこぼす。


「酷いですわ、(わたくし)を騙したんですの?」


「酷いか? 君は潔白で酷いのはこちらだけだと言うのか? ではどちらが本当に酷いのか証明しよう。ファニー! ここへきてくれ」


 するとファニーは人混みを掻き分けてこちらへ歩いてくると、アルメリアの横に立った。


「は~い。きたよ~。出番まで長くてくたびれちゃった」


 ムスカリはマイペースなファニーに構わず領収書の束の中から一枚取り出すと質問する。


「この領収書のドレス、私がアルメリアのために注文したのを覚えているか?」


「もっちろん! 僕気合い入れてデザインしたしね」


「ではそのドレスは今どこに?」


 ファニーはケラケラと笑った。


「うっわ~、今ここでそれ聞いちゃう? やっぱ王子ってば鬼畜だね~。まぁ、僕もアルメリアをイメージしたドレスを他人が着てるのは気にくわないところだったからいいけど」


 そう言ってダチュラを指差す。


「あんたさぁ、なんで勝手に人のドレス着てんの?」

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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