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第百七十七話 愚行

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 すると、今までだまって話を聞いていた他の貴族が口を挟んだ。


「でもそれはおかしいですね、クンシラン公爵令嬢はこう言ってはなんだが、質素・倹約がドレスを着て歩いているような方です。婚約されてからも、そんなに散財しているようには見えませんでしたが……」


 ダチュラは楽しそうにその問いに答える。


「あら、だからアルメリアはお金に執着していると言ったではありませんか。もちろん買ったものはすべて売り払い換金してしまったに決まってますわ」


 そう言うと、周囲を見渡す。


「他に質問はありますかしら? ないなら次の話にうつりますわね」


 そう言うと咳払いをした。


「みなさんは最近貴族の間で詐欺事件が起きているのをご存知かしら?」


 それを聞いて貴族たちはざわめいた。


「ご存知ないかたもいらっしゃるかもしれませんから、説明しますわ」


 ダチュラはそう言うと得意気に詐欺の詳細な手口を説明した。そして付け加える。


「実は今回アルメリアが教会に捕らえられたのは、この件に関わっていたからなのです」


 その台詞に貴族たちはより一層ざわめいた。


「イーデン、次の書類を」


 イーデンがその証拠書類を差し出すと、ダチュラはそれを掲げて話を続ける。


「これはアルメリアが詐欺に関して細かく指示を出した書類となっていますわ。でもひとつおかしな点がありますの。この書類、教会の書式に乗っ取って書かれていますわ。これがどういうことかみなさんわかりますか?」


 しばらく返事を待ってからダチュラは言った。


「アルメリアはこの書類をムスカリに提出し、自分が教会に嵌められたとでも言うつもりだったんですわ。もちろん教会がそんなことするわけありません。だったら誰がこんなものを?」


 ダチュラはしばらく周囲を見渡し、無言になる。そして誰もなにも答えないのを確認すると話を続ける。


「アルメリア以外考えられませんわよね」


 そこまで話すとダチュラは大きくため息をついてアルメリアに訊く。


「なぜそんなことを? そんなに教会が嫌いなんですの?」


 そして心底がっかりしたような顔でムスカリにその証拠書類を渡した。


「驚いてはいけません。アルメリアの悪行はまだありますの。イーデン次の書類を」


 ダチュラは渡された書類を、周囲に見えるように掲げる。


「アルメリアが帝国と貿易をしていることはご存知かしら? 今度はその帝国の特使と組んで横領を行っていました。おそれ多いことに帝国を(たばか)ったのです」


 そう言うと、その書類もムスカリに手渡しアルメリアに向きなおる。


「残念ですわ、これだけのことをすれば殿下との婚約もなくなりクンシラン家はお取り潰しになりますわねぇ。ふふ」


 アルメリアはしばらく黙ってダチュラを見つめた。すると、ダチュラはアルメリアに近づき耳元で囁く。


「なーに『(わたくし)こんなにみんなの前でいじめられて可哀想!! 堪え忍ぶ悲劇のヒロイン!』とか思ってるんじゃないの? でも残念ですわねあたしの方が一枚上手。あんたの味方はここには一人もいないのよ、お花畑ヒロインちゃん」


 そう言って微笑んだ。


 そのとき会場の扉が大きな音をたてて開いた。その場にいるものたちがそちらを見ると、そこにスカビオサが数人の審問官を連れて立っていた。


「なにごとだ」


 ムスカリがそう訊くと、スカビオサは微笑みながらこちらにゆっくり歩いてくる。


「王太子殿下、このような素晴らしき日にお騒がせして大変申し訳ありません。こちらにクンシラン公爵令嬢がいると伺って参じました。こちらで罪を裁きたいので、身柄をお渡しいただけますかな?」


 するとダチュラがスカビオサの元へ駆け寄る。


「待ってましたわ、ちょうど今アルメリアの罪を暴いていたところなの」


「そうか、では我々が裁判をするまでもないな」


「そうよ、アルメリアは間違いなく有罪! 追放なんて生ぬるいですわ、処刑よ処刑!」


 そこでアルメリアは大きくため息をつくと言った。


「貴女、そんなでたらめでくだらない憶測ばかり仰って、まったく反撃されないとでも思ってますの? (わたくし)が堪え忍ぶ悲劇のヒロイン? いいえ、違いますわね。(わたくし)は粛々と真実を述べ、然るべき対処をするだけですわ」


 そう答えるとムスカリを見つめる。ムスカリは頷くと言った。


「確かに、今は一方的にクインシー男爵令嬢の意見を聞いただけだ。これについてアルメリアの意見も聞かず裁判もしないとなれば不公平というものだろう」


 ダチュラは驚いてムスカリを見つめる。


「ムスカリ? どうして?! (わたくし)のことが信じられないとでも言いますの?」


「クインシー男爵令嬢、君の意見が正しいと言うなら、これは必要なことなんだよ」


 ムスカリがダチュラを諭すと、ダチュラは微笑んで答える。


「確かにそうですわね、あとでいちゃもんつけられても困りますものね」


 ダチュラは腕を組んでアルメリアに向きなおる。


「アルメリア、なにか言い返せるなら言ってみなさい」


 アルメリアはムスカリに一礼する。


「殿下、お時間いただきまして本当にありがとうございます。では(わたくし)の意見を」


 そう言ってダチュラを見据える。


「まず、本題に入る前に一言。男爵令嬢である貴女が殿下を名前で呼ぶのは不敬に当たりますわ。品位に欠け貴族令嬢として相応しい行動ではありませんから、これからは慎むように。それに、(わたくし)も貴女に名で呼ぶことを許した記憶がありません。とても不愉快ですからやめていただきたいですわ」


 ダチュラは一瞬明らかにムッとしたが、次の瞬間にやりと笑いムスカリを見る。


「ムスカリ、今の聞きました? あの言い方とても酷い言い方ですわ。あれがあの女の本性ですの」


 そう言って侍らせていた貴族たちをちらちら見ながら涙を流す。

 誰も慰めにこないとわかると、自分からムスカリの腕にしがみついてアルメリアに向かって言った。


「それに(わたくし)は貴女と違ってムスカリと親しい間柄ですもの、名前を呼ぶことを許されてますのよ? それと、悪いことをした令嬢を名前で呼んでなにがいけませんの?」


 するとそれにムスカリが答える。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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