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第百七十三話 唖然

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 アウルスがアルメリアを利用するため優しく接してくれているのに、アルメリアが一人で勝手に舞い上がっていただけでアウルスは最初からシェフレラと一緒になるつもりだったのだ。


 しばらくその場でぼんやりしていると、自然と涙が溢れた。アルメリアは溢れる涙をそのままに、その夜は気が済むまで泣き続けた。

 アウルスを諦めるためにも、アルメリアにはその時間が必要だった。


 翌朝、泣き明かし腫れた瞼をなんとか化粧で隠していると、下から騒がしく言い争う声が聞こえた。何事かとドアの方を伺っていると、突然ノックも無しにドアが勢いよく大きな音を立てて開いた。


「何事ですの?」


 アルメリアがそう言ってドアの前に立つ人物を見ると、そこにはスカビオサが立っていた。スカビオサは後ろに手を組んでにやりと嫌らしい笑みを浮かべて言った。


「クンシラン公爵令嬢、申し訳ありませんなぁ。急ぎ貴女を捕らえなければならなかったもので」


 そして連れてきた審問官へ顎で指示すると、審問官たちはアルメリアを取り囲み腕を掴んで無理やり立たせた。


 アルメリアは驚いてスカビオサに訊いた。


「ご自分でなにをされているか、理解した上でこのような振る舞いをなさっているのでしょうか」


「もちろん、私も貴女をこのように扱うのは心苦しい。ですが、こんなものが見つかりましてね」


 そう言って懐から一枚の書類を取り出すと、アルメリアの面前に突きつけた。

 その書類はダチュラがルーファスに渡した書類と同じ物のように見えた。


「これは偽物ですわ!」


「そうでしょうな。この詐欺の書類は教会の書式に乗っ取って書かれている。教会を貶めようとして貴女がこのように書いたのでしょう?」


「冷静に考えてみてくださるかしら、嵌めようとするなら自分の名前を書くわけがありませんわ」


 それを聞いてスカビオサは鼻で笑う。


「そうです。聡明な貴女はだからこそ、ご自身のお名前を書いたのでしょう? まぁ、とにかくこんなものが見つかった以上調べる必要が我々にはあるのです。それで証拠隠滅をされる前に、貴女を捕らえる必要があるのですよ」


 そのときスカビオサの背後から、ダチュラが顔をひょっこり出しアルメリアに向かって勝ち誇ったように微笑んだ。


 アルメリアはまんまとダチュラに嵌められたと思った。だが、反証する証拠はいくらでも揃っている。明後日に控えている舞踏会で、ムスカリたちが上手に追い詰めてくれるに違いなかった。


 ここで下手に騒げば、今までの苦労が水の泡になってしまうと考えたアルメリアは反抗せずに、従うことにした。


 そんなアルメリアを見てダチュラは両手を口元に当てて言った。


「こわーい! 今睨まれましたわ、でも可哀想これでムスカリとの婚約もなしになりますわねぇ。うふふ」


 ダチュラはそう言うとスカビオサの腕にしがみついた。


「ねぇ、このお屋敷(わたくし)がもらってもいいかしら?」


 教皇はダチュラに微笑み返す。


「かまわんよ、だが令嬢の執務室は徹底的に調べ尽くすから少し汚くなってしまうかもなぁ」


「かまいませんわ、(わたくし)執務室なんて興味ありませんもの。じゃあお屋敷の中探検してきますわ」


 そう言うと、ダチュラは駆けていった。


 一体なにがどうすればこの屋敷を手に入れられると思うのだろうか。あまりのことに唖然としながらスカビオサを見ると、スカビオサはアルメリアがショックと恐怖で唖然としていると思ったのか、安心させるように優しく微笑みかけた。


「大丈夫、貴女には利用価値がありますから殺しはしませんよ。さぁ、お前たちこの令嬢をお連れしろ」


 指示された審問官はアルメリアを引き連れて歩き出した。


 屋敷を出ると、一人の審問官がアルメリアに耳打ちした。


「こんな無礼をお許しください。なにかあれば必ず逃げる手伝いをさせていただきますのでご安心を」


 アルメリアは驚いてその審問官の顔を見上げると、無言で教会が用意した馬車に乗った。馬車は教会本部へ向かい、教会本部に着いたアルメリアは、窓に格子のある部屋へ案内され軟禁状態となった。


「このような部屋しか用意できず、大変申し訳ありません。その代わりといってはなんですが、ほしいものがあればなんでも仰って下さい」


 そう言われたが、アルメリアは警戒し無言で頷くだけにとどめた。

 それに逃げなくとも早ければ明後日の夜には解放されるはずだ。それまではこの苦難を耐え抜こうと心に決めた。


 アルメリアを捕らえはしたものの、スカビオサの本当の目的はきっとあの箱を取り返すことだろう。あれを取り返すために今まで沈黙し、虎視眈々とその機会を待っていたに違いなかった。

 なので強引な尋問などはしないだろう。なにより、罪が確定していない公爵令嬢に対して傷つけるようなことがあれば、アルメリアの父親を筆頭に貴族たちが黙っているわけがないのは、スカビオサもわかっているはずだからだ。


 証拠類はムスカリに預けてしまっている。今さら屋敷や執務室を荒らされても特に問題はなかった。


 だがあの箱は屋敷にまだ置いてある。アルメリアはとにかくあの箱が見つからないことだけを祈った。







 翌日も軟禁状態は続きアルメリアはなにもできず、ただひたすらに部屋の中であれこれと考えを巡らせているうちに舞踏会当日の朝を迎えてしまった。

 窓の外の白む地平線をじっと見つめ、屋敷がどういう状態になっているのか不安に思いながら、不意にペルシックがどうしているか気になった。


「爺はどうしているかしら……」


「はい、お嬢様。(わたくし)は問題ありません」


「そうですの、よかったですわ……」


 思わずそう答えたが、自分が心配のあまり聞こえもしないものを聞いてしまったのかと、驚きながらゆっくり振り返る。


「爺?」


「はい、なんでしょう? お嬢様」


 そこには確かにペルシックが立っていた。


「どうしてここに?!」


「もちろん、お嬢様がこちらにいらっしゃるからです。ところでお嬢様、こちらにはいつまで滞在されるご予定でしょうか。本日は舞踏会のご予定があります。これは婚約のお披露目もかねておりますから、欠席することは不可能で御座います」


 アルメリアは、あまりにもペルシックがいつも通りなので呆気にとられる。

 今は教会に捕らわれており舞踏会どころではない。


「でも、ここからでられませんわ」


 すると、ペルシックはドアを開けた。


「そんなことはありません。いつでもでられます。時間がありません、早くここを出て支度をいたしましょう」


 アルメリアはペルシックに促されるまま、恐る恐る廊下に出るとそこには、ここへ連れてきた審問官が廊下に立っており頭を下げていた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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