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第百六十四話 晩餐会

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 招待状には是非リカオンも招待したいと書かれていたので、リカオンに確認するとすぐに行くことを了承してくれた。


 約束の日は時間に合わせてアウルスが用意した馬車が迎えにきたので、それでアウルスの仮の屋敷へ向かった。


 門をくぐり屋敷のエントランスホールへ通されると、先に到着していたリカオンが待っていた。


「お嬢様、最近とても素敵なドレスをお召しになられていますね。それが陛下のプレゼントでなければもっと良いのですが……」


 リカオンは差し出されたアルメリアの手を取ると、そう言ってじっと見つめた。


「ありがとう。リカオンは今日も素敵ですわね」


 そう言って微笑み返した。すると後ろから声がした。


「アンジー、よくきてくれたね!」


 その声に振り向くと、アウルスが立っておりアルメリアを出迎えてくれた。その後ろにはイーデンともう一人見覚えのない青年が控えている。


「わざわざきてもらってすまない。実は今日は彼を紹介したくてね」


 アウルスはそう言うと、後ろに控えている青年に合図した。


「お初にお目にかかります、マニウスと申します」


 マニウスと名乗った青年はゆっくりと優雅にお辞儀をした。アウルスが補足する。


「彼は私の部下なんだが、詳しい話しは食事の後で話そう。君たちもお腹がすいているだろう?」


 アウルスはアルメリアの手を取り、食堂へエスコートした。


 全員が席につくとアウルスは改めて言った。


「みんなきてくれてありがとう。今日は私の部下との顔合わせと、親睦をかねてゆっくり食事を楽しむために招待させてもらった」


 そう言うとアルメリアの方を向いた。


「君の口に合うかわからないができうる限りのもてなしをしよう。十分に堪能してほしい」


「ありがとうございます」


 それを合図に食事が運ばれてくると、前菜が目の前に並び各々の飲み物が準備され食事が始まった。

 そこでアルメリアはアウルスに質問する。


「今日イーデンがここに居るのはなぜですの?」


「今日、マニウスを紹介したかったと私は言っただろう? なぜ紹介したいのか説明するためにイーデンには来てもらった。というわけでイーデン、君からまず話してくれ」


「はい。まず、お嬢様は件の令嬢が私を気に入り城下へ呼び寄せたことはご存知でしたよね? その後ご指示の通り特使の方と組んで横領をしていることにした、偽の証拠書類をあの令嬢に横流しいたしました」


 アルメリアは、頷くと訊いた。


「そこまでで向こうに怪しまれることはありませんでしたの?」


「はい。なんというかあの令嬢は謎に自信があるというか、周囲のものが自身に有利に動いて当然とおもっているようで、私のことを疑いもしませんでした。それどころか私が彼女と接触を図ると『やはりヒロインの都合よくできてますのね』とかなんとか」


 アルメリアは危うく、口に運ぼうとしていた野菜を落としそうになった。そして、ため息をついて気を取りなおすと言った。


「それでもこの短期間でダチュラに近づけるなんて、本当にすごいですわ」


「いえ、お嬢様に事前情報をいただいていたので、あの令嬢と特別親しい人間に帝国の話を少しちらつかせただけです。そんなに特別なことはなにも」


 遠慮がちにイーデンはそう言ったが、苦労したに違いなかった。イーデンはそこまで言って一息つくと話を更に続ける。


「帝国の特使と私が旧知の仲で証拠を手に入れることができた、と話して証拠書類を渡しました。するとあの令嬢は、帝国の特使に会わせろと要求してきたのです」


「それは当然かもしれませんわね。でも……」


 ダチュラは皇帝の顔を知っているようなので、アウルスは会うことはできない。そう思いアウルスの方を見ると、彼は微笑んで頷いた。


「そう、私が会うわけにはいかない。だからマニウスを呼んだ。彼には帝国の特使の役をこなしてもらうことにしたよ。帝国から特使がきて滞在していることは周知の事実だが、私のことを知るものは少ないからね。紹介したら見事に騙されたようだ」


 マニウスがそれに次いで言った。


「僕が件の令嬢と話した感じでは、まったく疑う様子はありませんでしたよ。もしもあれが芝居だとしたら、あの令嬢は相当頭の切れる方だと思いますが、僕が話をした限りそれはないでしょう。ところでクンシラン公爵令嬢に一つお訊きしたいことがあるのですが……」


「なんですの?」


「あの令嬢、僕に向かって『こんなキャラいたかしら?』と言っていましたが、一体なんのことでしょう? 貴女はわかりますか?」


 それを聞いてアルメリアは思わずリカオンとアウルスに視線をやると、その三人で見つめ会い笑いだした。

 イーデンとマニウスは困惑した顔でそんな三人を見つめた。


 その後は特別な報告はなかったので、この晩餐会を楽しんでしまおう。そう思い食事を十分に楽しんだ。

 リカオンは帝国に興味があるようで、マニウスに色々帝国のことを質問して話が弾んでいるようだった。


 晩餐会が楽しく進んでいる中、アルメリアは化粧室を借りることにした。アウルスに声をかけ席をはずすと、化粧室へ向かう。その途中でメイドたちが楽しそうに噂話に花を咲かせているところに遭遇した。


「シェフレラ様との話、あんた知ってる?」


 それを聞いて、アルメリアは思わず足を止めメイドたちの話を盗み聞いた。


「そりゃあ知ってるわよ、有名だもの。昔からシェフレラ様と愛し合っていたのに、シェフレラ様の出自が問題で反対されて、爵位のある出自のしっかりしたあの令嬢を選ばなければならなくて……」


「そうそう。でも、二人は愛を貫いたのよ!」


「本当に切ない話よね~!」


 そこへ突然メイド長と思われる年配の女性が現れた。


「貴女たち、おしゃべりはやめなさい!」


 叱責され、おしゃべりしていた二人のメイドはすごすごと仕事へ戻っていった。


 今の話は一体どういうことですの?


 アルメリアは知りたくない、認めたくない真実を突きつけられたような気がして胸が締め付けられた。

 そして自分が認めようとしなかった真実から目をそらすことをやめて、事実を受け止めなければと思った。


 今話していたことは、アウルスとシェフレラのことで間違いなかった。


誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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