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第百四十六話 ルーファスの活躍

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 笑顔でそう答えると、ルーファスは我に返ったように手に持っていたノートをアルメリアに差し出した。


「すみません、話がそれてしまいましたね。それでこのノートの内容なのですが、誰かの走り書きのようなもので、詐欺の方法やそれを行うときの貴族に対する声のかけ方、相手が迷ってきたらこう言えなどの詳細な指示が書かれています」


 アルメリアは大きくため息をついた。


「これは確実にクインシー男爵令嬢、いえ、ダチュラが関わっていますわ。断言できます」


 ルーファスはアルメリアのその台詞に、目を大きく見開いた。


「よくお分かりですね、そうなのです。私もこのノートを読んでわかったのですが、このノートの所々に『ダチュラお嬢様の指示によると』と書かれている場所が何ヵ所かあって彼女が関与していることに気づいたのです」


 そう言うと、栞が挟んであるページを開き指差した。


「ここです、これ以外にも何ヵ所か……」


 アルメリアはノートを覗き込み、ルーファスの指差す場所を見ると言った。


「このノートにメモを取った人間がそう書くということは、ダチュラは人を集めてわざわざ勉強会のようなことをしたのでしょうね……」


「はい、こうして深くクインシー男爵令嬢が関わっていたのは間違いありませんね。ところでアルメリア、貴女はなぜこの詐欺に彼女が関わっていると?」


「前世でこんな詐欺がありましたの。方法やマニュアルがあることも前世で行われていた詐欺とまったく一緒ですわ。こんな高度な詐欺を考えたのが、(わたくし)と同じく前世の記憶をもつダチュラなのだとしたら納得がいきますもの」


「なるほど、それだと納得できますね」


 そう言うとルーファスはじっとアルメリアを見つめる。

 その視線に気づくと、アルメリアは質問する。


「な、なんですの?」


 ルーファスは微笑んだ。


「アルメリア、貴女はこの詐欺の方法をずっと以前から知っていたということですね?」


 思いもよらぬ質問にアルメリアは戸惑った。まさか、ルーファスは自分を疑っているのかもしれない。そう思いながら、そうだとしたら自分には不利になるかもしれないとわかっていて正直に答えた。


「知ってますわ。だから、(わたくし)が疑われても仕方のないことだと……」


 アルメリアがそこまで言うと、ルーファスはそれを制した。


「私が貴女を疑うとでも? そんなことあるわけがありません。そうではなくて、貴女はその知識を悪用しなかったのだと思って……」


「それは当然ですわ!」


 そう答えるとルーファスは満面の笑みになった。


「当然……ですか? クインシー男爵令嬢はそうではなかったようですが」


 アルメリアはハッとする。


「そう……ですわね」


「そうです。私はそれがとても嬉しいです。やはり貴女は素晴らしい女性ですね。この詐欺はとても巧妙です。これを行えば一気に富が築けるでしょう。ですが、貴女はそれをしなかった。私にとってそれは、重要なことなんですよ」


 そう改まって言われ、アルメリアは少し恥ずかしくなり俯いた。

 しばらくルーファスはそんなアルメリアをじっと見つめていたが、ふと思い出したように付け加えた。


「そうでした、それともう一つ今回の詐欺に関して面白いものをクインシー男爵令嬢にいただきましたのでお渡ししますね」


 なぜダチュラから? そう思いながら、ルーファスが鞄から取り出した書類をチラリと見ると質問する。


「ダチュラが自分が詐欺に関わっている証拠を出したということですの?」


 ルーファスは首を振る。


「まさか、彼女はそんな人ではありません。実は彼女が関わっているとは思いもよらず、今回の詐欺の件について、遠回しに『知り合いがこんな詐欺の話をしていたので調べたい』と、クインシー男爵令嬢に話したのです」


「ルフス、もしかして貴男目をつけられてしまったかもしれませんわね」


「いいえ、彼女は予想を越えていました。そのとき彼女はその大きな瞳に涙を溜めて悲しげにこう言ったのです『それはとても悲しいことに教会を陥れる為の罠で、その主犯はアルメリアなのです』と」


 思いもよらぬ話しにアルメリアは一瞬戸惑った。


「なぜ(わたくし)ですの?」


 ルーファスは笑いをこらえながら答える。


「本当に、本当にその通りですよね。突拍子もない話の展開に、私も驚きを隠せませんでした。そんな私を見て、彼女は私を信じさせようとしてこの書類を手渡したのです」


 そう言うと、手に持っている書類をアルメリアに渡した。

 アルメリアはそれを受け取りさっと目を通し、その内容を確認する。ざっくり言うと詐欺の指示書なのだが、それを指示している人物の名前や組織がクンシラン家だったり、アンジーファウンデーション傘下の組織の名前になっている。

 巧妙に作られている偽の書類と言うより、最初からクンシラン家やアルメリアの組織の名を語り作られたのだろう。


「こんなものまで用意しているなんて……」


 アルメリアはダチュラの闇深さにゾッとした。ルーファスは不安になっているアルメリアの背中を擦ると続けて言った。


「彼女が私に興味を示し近づいてきたのは、本当に最近です。なので私がアルメリアと知り合いだとは知らなかったのも幸いしましたね。それに、この書類は教会の指示書の書式とまったく同じです。こんな書類を証拠として提出すれば、教会が関与していると明言しているようなものです」


 そう聞いて、アルメリアはある考えが浮かび書類から顔を上げると、ルーファスに向き直った。


「ダチュラは教会を、教皇を売る気なのかもしれませんわね」


「はい? 教会を売る……?」


 アルメリアは大きく頷いた。


「はっきりとは言えませんけれど、なんとなくダチュラと教皇は別の目的を持って動いているように見えますの。ダチュラはその目的の為に教皇を利用しているだけなのですわ」


 しばらく呆気にとられていたルーファスは神妙な面持ちで答えた。


「それが本当なら、ダチュラという令嬢は本当に恐ろしい女性かもしれませんね」


 そう言うと続けて気を取り直したように言った。


「本当はアブセンティでお話しした方が良かったのでしょうが、取り急ぎこの書類を貴女に預ける必要があると思いましてお渡しすることにしました。それに、貴女に会える言い訳もできますしね」


 恥ずかしそうにそう言うと、ルーファスはその書類をアルメリアに預け、引き続きダチュラに接触して情報を引き出してみると言った。


 アルメリアがあまり無茶はしないように言うと、ルーファスは照れ笑いをした。


「私もアルメリアのお役に立てることができてとても嬉しいのです。貴女が頼ってくれる限りなんでもしたいと思っています」


 そう言って教会へ戻っていった。アルメリアはルーファスの惜しまぬ協力に深く感謝した。



誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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