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第百四十一話 早朝の報せ

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 そう言って微笑むと、アルメリアは話を続けた。


「それよりアドニス、(わたくし)の言った前世の話や転生の話を信じてくれますのね?」


「もちろんですよ。貴女がそんな突拍子もない嘘をつくわけがありませんから。それに、その話で納得することもたくさんありますしね」


 そこで、アルメリアはアドニスにも謝らなければならないと思った。


「アドニスもこれでおわかりになったと思うのですけれど、(わたくし)自身が凄いわけではありませんの。それに今まで騙していた形になってしまって、ごめんなさい」


「なぜ謝るのです? それに、私はなにもアルメリアが知識が豊富だからとか、そんなことで貴女が好きなわけではありません。その人柄に惚れているのです。それに貴女なら、前世の記憶などなくてもきっとこの世の中を変えた気がします。知識なんて関係ありませんよ」


 そう言って微笑んで返した。


「あ、ありがとうございます」


 なんとなく恥ずかしくなり、アルメリアは話題を変えることにした。


「ところで、ヘンリーとの捜査はどうでしたの?」


 質問され、アドニスは真面目な顔をすると答える。


「そのことなのですが、何隻か船を拿捕しました。そのうち何隻かの船には登録番号があったので、すぐにローズクリーンの船だとわかりました」


「やっぱりそうでしたのね」


 アドニスは頷くと続ける。


「しかも奴らは最初アンジーファウンデーションを名乗り、問い詰めるとモーガン一派だと言ったんです。奴らもヘンリーの顔をしらなかったんでしょうね、その本人が尋問してるというのによくもそんなことを言えたものです。それに、ヘンリーがナイト伯の称号を授かったことは、まだ公にされていませんからね」


「それでどうしましたの?」


 そう質問されると、アドニスは思い出し笑いをした。


「失礼、ヘンリーがモーガンだと名乗ったときの奴らの顔ときたら、奴らはまさに鳩に豆鉄砲を食らったような顔をしていましたよ。で、ヘンリーがキッド一派は必ず体のどこかにコウモリのタトゥーを入れていると教えてくれたので、調べたら全員にタトゥーがありました」


「そうなんですの」


「それと、貴女の役に立てる証拠を見つけましたよ」


 そう言うとアドニスは丸筒から一枚の書類を取り出しテーブルの上に出した。

 アルメリアがその書類に目を落とすと、それはチューベローズがキッド一派に向けて書いた指示書だった。

 驚いてアドニスを見つめる。


「これはどうやって? ツルス海域でヘンリーが拿捕した船には指示書はありませんでしたわ。だから、てっきり彼らは何処かに保管しているものだと……」


 アドニスは頷くと答える。


「仰る通りで、この書類は船の中でみつけたものではありません。キッド一派が関わっていると証拠がでたので、彼らのアジトに乗り込んだのです。そうしてこれらを保管していたのを見つけました」


 その書類をじっと見つめながらアルメリアは言った。


「彼らがこんなものを保管していた理由は、自分たちが危うくなったときに、チューベローズを売るつもりだったからですわね」


「そうでしょうね。チューベローズはこういった悪事を働くのには向いていない組織です。彼らはキッド一派を利用しているつもりなのでしょうけれど、本当に利用しているのはキッド一派の方なのでしょうね」


「なんにせよ、こちらにとっては有難いことですわね」


 そう言って微笑んだ。





 アドニスからの報告は、その後のアブセンティーで全員で共有することにした。

 アブセンティーでは、なにかしら情報があれば逐一報告し合うようにしていた。


 そんなときに、社交界でフィルブライト公爵の息子ルーカスが家を出て、行方不明だという噂が流れた。それと同時に、スパルタカスからは兵舎にルーカスが入ったと報告が上がった。


 心配していたが、ルーカスは真面目に仕事をしているようで雑用から訓練に至るまで、すべて嫌がることなく真剣にこなしているそうだった。


 イーデンからの連絡も定期的に入るようになった。その情報によると、クインシー男爵令嬢が知りたいことは、帝国のことではなく皇帝の好みの女性だとか好きな本だとか、好きな宝石に好きな食べ物、好みの女性などそんなことばかりのようだった。


 帝国の政治的なことは一切聞かれないとのことだったので、偽の皇帝プロフィールを作成してそれに沿って情報を流すように指示した。


「もしかして、私の暗殺でも企てているのかもしれないな」


 アウルスはそう言って笑っていたが、そうなのだとしたら笑い事ではないとアルメリアは思った。






 そんなある日、ムスカリが朝早く非公式にクンシラン家を訪れた。


「少し庭を散歩しないか?」


 わざわざ屋敷まで訪れるとは何事だろう。そう思いながらアルメリアはお誘いを受けた。


「最近、少しずつですけれど暖かくなってきましたわね」


「そうだな、もう少しすれば花々が咲き乱れ美しく庭を彩るようになるだろう」


 アルメリアはなんとなくムスカリに元気がないような気がした。


「殿下、どうされたんですの? 元気がないように見受けられますわ」


 すると、ムスカリは立ち止まりアルメリアの方を向いた。


「アルメリア、君に謝らなければならないことがある」


「改まって一体なんですの?」


「後日、国王から正式な発表があると思うが婚約が決まってしまった」


 ムスカリと他の令嬢との婚約が決まったのだと思ったアルメリアは、少しだけ複雑な気持ちになりながらも、お祝いしなければと思った。


「殿下、(わたくし)に遠慮する必要なんてありませんのよ? おめでたいことではありませんか、お祝いの言葉を送らせていただきますわ」


「違う、私の婚約相手は君だ。君との婚約が決まってしまった」


 その言葉にアルメリアの頭の中は真っ白になった。


 なぜそんなことに? と、そう思った。


 クンシラン家はお金にも困っていない。むしろアンジーファウンデーションはますます繁栄しており、資金には当分困らないだろう。

 それに現在クンシラン家を統治しているのはアルメリアだ、アルメリアが今の地位を抜けてしまえばクンシラン家は一体どうなるのか……。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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