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第百三十一話 信頼

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

「アドニスは水軍を指揮しています。ローズクリーンとチューベローズの噂について伝えた方がよいかもしれません……もしくは」


「もしくは?」


「いえ、アドニスのことですから、もうなにか情報をつかんでいるかもしれませんね」


 アルメリアはリアムに指摘されて初めて気がついた。確かに言われた通り、ローズクリーンについてはアドニスに話すべきかもしれない。


「そうですわね、アドニスが城下に戻って落ち着いてから話してみようと思いますわ」


「えぇ、そのようにした方がよろしいかと思います。それと、私の方でも少しその詐欺事件について探りを入れてみます。父から君に関することは何を置いても最優先するよう申しつけられてますしね」


「そうなんですの?! では、パウエル侯爵に(わたくし)が感謝していたとお伝えください。もちろん、リアムもありがとう」


 リアムはアルメリアの顔を優しい眼差しでじっと見つめる。


「アルメリア、君は皆から感謝されることをしているのだから、これぐらいは当然のことなのです」


「それにしても……」


 そう言うと、アルメリアはなにかを思い出したようにふっと笑った。


「アルメリア、どうされたのですか?」


「ごめんなさい、先ほどのドローイング・ルームでのやり取りで、それを見ていたリアムの呆気にとられた顔をを思い出してしまいましたの。でも、リアムはどうして先ほどのフィルブライト公爵と(わたくし)との言い合いが芝居だとわかりましたの?」


「当然です、君がそんなことを本気で言う人物ではないことを私はよく知っていますから」


「信頼してくださってありがとう。以前アブセンティーでの会話の中で、(わたくし)がお金に執着していると思われているような節があると感じましたから、それを利用させていただいたんですの。リアム以外の貴族たちは、あの芝居を信じたと思いますわ」


 リアムは苦笑した。


「そう取られるような言い方を私たちはしてしまったかもしれませんが、本気でそのように思ったことは皆ないはずです。例えば君がお金に執着しているなら、それには正当な理由があるはずだと気づくからです。君のそばで君の本質に触れたことのある人間は皆そう思うはずです」


「ありがとう、リアム」


 そう言うと、しばらくお互いに見つめ合ったのち微笑んだ。





 アルメリアはリアムと話していて、もう一つやるべきことがあることに気づいた。それは、ルーファスやブロン司教にチューベローズとローズクリーン貿易のつながりを知らないかを聞くことだった。


 それにキャサリンがどうしているかも気になっていたので、それも合わせて尋ねることにした。


 ちょうどアルメリアが以前から少しずつ書き進めていた、言葉を教える絵本が出来上がったところだったので、ついでに慰問にきたルーファスにそれを渡すことにした。


 本当は直接手渡し、子どもたちの喜ぶ顔が見たかったが教会から狙われているとわかった今、以前のように気軽に孤児院へは行けなかった。


 スパルタカスに、ルーファスが慰問に訪れたら執務室へ寄るように言伝をした。


 最近は忙しいのか、ルーファスはあまりアルメリアの執務室に顔を出すことがなくなっており、声をかけないと顔を見ることがなかった。


 そもそも、ムスカリも誕生会で忙しいのかほとんどアブセンティーにくることはなく、そんな忙しいムスカリのそばから離れられないスパルタカスもほとんど姿を見せなかった。

 それにアドニスはまだ城下に戻っておらず、リアムも忙しいのか顔を出すことがなくなっていた。


 以前はあれほど毎日行われていたアブセンティーはほとんど行われなくなっていたのだ。

 ゆっくりここで談笑していたあの頃を懐かしく思いながら、アルメリアは自身の仕事に没頭した。


「お嬢様、ルーファスが来ました」


 リカオンにそう言われ、ドローイング・ルームへ行くとそこにルーファスが立っていた。


「お久しぶりです」


「本当に。もしかして、祝祭の日から会ってないかもしれませんわね」


 そんなことを言いながら、座るよう促す。お茶が運ばれてくると、ルーファスは嬉しそうに話し出した。


「ずっとこちらに通うことができませんでしたから、こうしてここでお茶を楽しむのが嬉しいです。ところで皆さんはこられないのですか?」


「そうなんですの、誕生会がありますでしょう? それでなにかと忙しいみたいですわ」


「そうですか、皆さんにも会いたかったのですが……」


 アルメリアは微笑む。


「また、集まることもありますわ。ところで、今日呼んだ理由ですけれど」


「あぁ、そうでしたね。なにかあったのですか?」


 アルメリアは自分の作った絵本をルーファスに手渡した。


「本当は自分の手でわたしたかったのですけれど、最近忙しくて孤児院へ行けなかったものですから」


 絵本を受け取ると、ルーファスは表紙を指でなでたあと、ゆっくり本を開いた。

 一ページずづじっくり見ると、笑顔で言った。


「とても素晴らしいものですね。これはどうされたのですか?」


「実は(わたくし)が作りましたの」


 ルーファスは目を丸くする。


「本当ですか? 貴女が実に多彩なことはわかっているつもりでしたが、こんなものまで手作りで作ってしまうなんて……。しかも内容も発想も素晴らしい、これがあれば子どもたちも楽しみながら文字を覚えるでしょう」


「よかったですわ」


 アルメリアは恥ずかしくなり、話題を変えることにした。


「ところで、今日は少し聞きたいことがありますの」


 そう切り出すとアルメリアは、ローズクリーン貿易の話を切り出した。


「ツルスに滞在中、ローズクリーン貿易という組織とチューベローズがつながっているのではないかという噂を耳にしましたの。なにかご存知?」


「ローズクリーンですか? どこかで聞いたことがあるのですが……」


 アルメリアはしばらくルーファスが思い出すのを待つ。すると、閃いたようにルーファスは言った。


「うん、思い出しました! 確か国外から支援をいただけるとかで、一時期お世話になっていた組織がそのような名前でした」


「そうなんですのね、それでその資料は残ってますの?」


「いえ、私も本部でお手伝いをしていたときにちらりと見ただけですから。ですが、探せばあるはずです」


「それを手に入れることは?」


 その問いにルーファスはしばらく考えこんでしまった。


 アルメリアは慌てて付け加える。


「いいんですの、ルフスになにかあってはいけませんもの。今のは聞かなかったことにしてくださっていいですわ」


 すると、ルーファスはにこりと微笑んだ。


「いいえ、大丈夫だと思います。私には少しつてがありますから」


「本当に大丈夫なんですの? 危険なことはありませんの?」


「はい、大丈夫です。任せてください」


「ならお願いしますわ」


 そのときアルメリアは結局皆に迷惑をかけてしまっていることを申し訳なく思った。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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