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第百二十五話 ルーカスの今後

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 そう言ってフィルブライト公爵は改めて頭を下げた。


「いいんですの、(わたくし)もそんな卑劣なことは許せませんもの、お金は無利子でお貸ししますわ。卿はたまたま先祖の財宝をみつけ資金を得たとでも言って、教会にお金を返せばよろしいですわ。それでフィルブライト公爵令嬢のことはきっぱりお断りになられて下さい。でも、本当に許せませんわね。それで、ルーカスのことですけれど」


 ルーカスの話を切り出されフィルブライト公爵は、はっとする。


「そうですね、こうなってはルーカスを貴女にお預けすることは叶いませんね」


「それなんですけれど、お金を返金してフィルブライト公爵令嬢の件を断ったとなれば、スカビオサが黙っているとは思えませんの。彼らの手口を見ていると、本人の周囲にいる者たちを狙うようですから、次に狙われるのはルーカスかもしれませんわ」


「流石ですね。私も以前からそれを危惧してルーカスを貴女に預けようと思っておりました」


 アルメリアは頷く。


「ですから、やはりルーカスは(わたくし)が預かりますわ」


「は?」


 フィルブライト公爵は一瞬鳩に豆鉄砲を食らったような顔をしたが、気を取り直したようにいった。


「失礼。あまりにも意外な返事でしたので。ですがどういった名目で預ければよろしいのですか?」


「行方不明になったということにしてくだされば、騎士団の兵舎で預かるように話をつけてみますわ。スパルタカスも事情を話せば、預かってくれると思いますの。そうして騎士として紛れ込めばいいんですわ」


 それを受けて、フィルブライト公爵は嬉しそうに頷く。


「それはいいですな、ついでに鍛えていただければ甘ったれた根性も直せそうですしね」


「でも、言っておいてなんですけれど、(わたくし)が勝手にルーカスの今後を決めてしまってよろしいのでしょうか?」


「問題ありません。なぜなら以前からルーカスは騎士団に興味を持っていましたからね。ですが私が教会と関わりを持っているので、それを公言することは避けているようです」


 拒否反応を隠すことなく怪訝な顔でアルメリアは言った。


「教会にそこまで口を出す権限はないはずですわ」


 それを受けてフィルブライト公爵は大きく頷く。


「以前の教会なら、教会派が騎士団に興味を持ってもなにも文句は言わなかったのですが、スカビオサが教皇になってからはそういった自由も奪われました」


 思っていたより、スカビオサの制圧が強いことを知ってアルメリアは驚くと共に怒りを感じた。


「教会の信者が騎士団にあまりいないのはそういうことでしたのね」


 アルメリアは、教会派と騎士団派は争っているわけではないとアドニスから説明を受けたのを思い出した。だが、現実として現在お互いにあまり交流がみられない。それはこういう裏事情があったからなのだろう。

 騎士団に慰安に訪れているのが、ブロン司教の教区の者たちばかりだったのも、これで納得がいった。 


 フィルブライト公爵は深々と頭を下げた。


「何から何までお世話になってしまって、本当に申し訳ない」


「いいえ、手を貸して当然のことですわ。(わたくし)も、これから卿に協力を仰ぐことがあるかも……」


 そこまでいったところで、アルメリアは現時点でフィルブライト公爵に協力してもらいたいことがあることに気づいた。


「フィルブライト公爵、早速で申し訳ありませんけれど、一つ協力してもらいたいことがありますの」


「なんでしょう? 私にできることならなんでも言って下さい」


「今、教会関係のある組織を調べてますの。それで、そこへ潜入させたい者がいるのですけれど、疑われないよう身元を保証するために卿から紹介してもらいたいのです」


 首をかしげながら、フィルブライト公爵は答える。


「私の紹介で大丈夫でしょうか?」


「大丈夫ですわ。公爵からの紹介となれば、彼らはそれだけで信用すると思いますわ」


 公爵家の紹介でも、流石にアルメリアが紹介したとなれば完全に疑われてしまうだろうが、フィルブライト公爵は教会派である。疑われることはないだろう。


「貴女のお願いとあらば断る理由はありません。紹介状なんていくらでも書きます」


「ありがとうございます。困っていたので、本当に助かりますわ」


 話が落ち着いたところで、アルメリアはフィルブライト公爵に質問した。


「でも、なぜ今回(わたくし)のところへ?」


 おそらく、フィルブライト公爵がこの話を持ってきた理由は、アルメリアに財力があることが第一の理由としてあげられるだろう。

 だが、それだけでこんな小娘のところへ、こんなに重要な話を持ってくるとは思えなかった。


「その理由をお話ししていませんでしたね。実は教会から治療にきている貴女のことを息子に探らせ、報告するよう指示があったのです。なので貴女は教会とは関わっていないのだろうと考えたのです」


 アルメリアは、ある程度そんなこともあるだろうと予測してはいたが、やはり実際にそんな話を耳にすると嫌な気分になった。


 そこで突然、先日アウルスと話した指示書のことを思い出して、もしやと思いながらフィルブライト公爵に質問する。


「もしかしてなのですけれど、教会から指示書をもらってませんか?」


「はい、もらいました。この指示書は貴女にお預けいたします」


 やはり指示書があった。しかも回収もしないとは驚きだった。『お役所仕事』そんな言葉がアルメリアの頭の中に浮かんだ。


(わたくし)が預かってよろしいのでしょうか?」


「はい、もちろんです。貴女に信用してもらえないときは、これを見せて信用してもらうつもりで持ってきたのですが、話をしていてこれは貴女が持っていた方が良いだろうと判断いたしました」


 渡された指示書を読むと、アルメリアにルーカスを近づかせアルメリアの情報を集め、定期的に報告すること。ルーカスが使えないのならどのような方法でも問わないので、これを実行せよ。と書いてある。


 日付をみると二週間前の日付になっているので、フィルブライト公爵がルーカスをアルメリアに預けたいと言ったのは、この指示書をもらう以前の話ということも確認できた。


「話してくださってありがとうございます。卿がチューベローズから嫌われないように、(わたくし)の当たり障りのない情報を流したほうがよさそうですわね」


「そうですね、流す情報は必ず貴女にお伝えしてから流すことにして、口裏を合わせましょう」


「そうですわね、嘘の情報を流せればこちらにも優位にことを運べるかもしれませんし」


 アルメリアはそう言って微笑んだ。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。

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