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第百十三話 海賊の正体

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 すると、店員は驚いた顔でアルメリアを凝視した。


「ツルスがこんなに栄えたのは、お嬢様のお陰です! レモンの販売のことだけではありません。町並みを整備し、港を大きく広げ税率の変更をしたことで、国外とも貿易を盛んにすることになり、様々な物が入るようになりました。そのお陰でこの店も大繁盛です。それに、なんといってもあの、ならず者のヘンリーと交渉してくださったでしょう? それで海上がとても安全になったのですよ。それに……」


「そうなんですのね、褒めて下さってありがとう。ところでヘンリーはどこかしら?」


 まだ続きそうだったので、そう言って話を止めた。店員は話したりなさそうな、不満そうな表情をしたが前方を向くと、部屋のすみに座る一人の男性に大声で声をかける。


「ヘンリー! お嬢様がいらしたぞ!」


 ヘンリーと呼ばれた男は、立ち上がるとこちらを見て驚く。


「あんたがアルメリアか!?」


「そうですわ。手紙で何度もやり取りしていましたのに、会うのはこれが初めてですわね」


 そう言って手を差し出すと、ヘンリーはその手を力強く握った。


「まさか、あの手紙を送ってきた女性が、こんなにも可愛らしく、美しいお嬢さんだとは思いもしなかったぜ!」


「お褒めに預かりありがとうございます」


「まぁ、挨拶はいいや。座ってくれ」


 そう言って、ヘンリーに促されるままアルメリアは席に着く。


「で、今回はなんだ、あの皇帝と手を組むんだって? 帝国の海域には警備が凄くて他の国の誰も入ることを許されないと聞いているが、それを許可されるんだから、本当にお嬢ちゃんは凄いなぁ」


「そうでもないですわ。それで今日一緒に来た、この方が帝国の特使の方ですわ」


「アズルと申します」


 紹介されてアウルスは頭を下げる。が、ヘンリーはアウルスを一瞥しつまらなさそうな顔をすると、アルメリアに視線を戻し微笑む。


「ふーん、特使ね。お嬢ちゃんこいつが色男だからって騙されないようにした方がいい。帝国の人間は信用できないからな」


 そう言うと、まるでアウルスがいないかのように話し始める。


「それより、お嬢ちゃんが新しく売り出した蜂蜜。あれは本当に旨い。うちでも砂糖を扱ってるが、やっぱり蜂蜜にはかなわない」


 アルメリアは驚いて答える。


「ヘンリー、貴男、砂糖をあつかってますの?」


「へ? えぇ、まぁ。実はお嬢ちゃんからの手紙で『護衛という仕事のできる真人間なのだから、略奪ばかりではなく、貴男には貴男にしかできない仕事があるはずだ』って言われてから、自分になにかできることがないか考えて、それで自分の農園で取れたサトウキビで砂糖を作って、それを売って生計をたてることにしてね。まぁ、ほとんどお嬢ちゃんの真似事なんだが」


 アルメリアはヘンリーの手を握る。


「ヘンリー、それは素晴らしいことですわ。貴男は砂糖がどれだけ貴重なものかわかってますの? (わたくし)にも砂糖を売って欲しいぐらいよ」


 ヘンリーは握られた手と、アルメリアの手を交互に見ると声を出して笑った。


「もちろん。今日はお嬢ちゃんに会ったら、砂糖をアンジーファウンデーションで扱ってくれないか話をつけようと思ってたんでね」


 そう言って豪快に笑った。アルメリアは砂糖を確保できるのなら、もっと食が豊かになるだろうと内心わくわくした。


 アルメリアは、ヘンリーに微笑む。


「その代わりといってはなんですけれど、これから蜂蜜はヘンリーに優先で卸しますわ」


「ありがとう。そりゃあ助かる」


 そう言ってヘンリーは嬉しそうに笑った。


 と、そこでアルメリアは、訊いておかなければならないことがあったのを思い出す。


「それと、ヘンリー。訊きたいことがありますの。貴男モーガン一派ってご存知?」


 すると、ヘンリーは一瞬動きを止めると、突然大声で笑った。どうしたのかと唖然として見つめていると、笑いをこらえながらヘンリーは答える。


「そりゃ、そりゃあ、お嬢ちゃん。俺のことだ」


「は? え、えぇ!?」


 思わず変な声を出した。


「お嬢ちゃんにはヘンリーと名乗っていたから、俺のことを知らなくて当然かもな」


「では、貴男が海軍を長年悩ませているという海賊ですの?!」  


「ははは! こりゃ面白い。海軍は私に手こずってるって? ロベリアの海軍にはここ最近一切会うことをやめたんだが、そんな話になっているのか!」


 そう言うと更に楽しそうにヘンリーは笑った。

 アルメリアは、モーガン一派に抱いていた印象があまりにも違っていたため、呆気にとられながら質問した。


「スペンサー伯爵となにかありましたの?」


「スペンサー伯爵?」


 そう言ってヘンリーは少し考えると、嫌そうな顔で答える。


「あぁ、アレキスのことか。奴とは昔ちょっとな。とにかくあいつが謝るまでは、俺は話し合いには応じるつもりはないねぇ」


「そうなんですの。(わたくし)はロベリアの人間ですから、できれば貴男にはロベリア水軍と仲良くして欲しいですけれど、それは(わたくし)が口を出してよいことではありませんものね」


 困った顔をしながらそう言うアルメリアを見て、ヘンリーは苦笑した。


「まぁ、お嬢ちゃんが会えって言うなら、会うぐらいはしてやってもいいが」


「それ、本当ですの?」


 ヘンリーは頷くと、腕を組んで難しい顔をする。


「お嬢ちゃんの顔に免じてな、一回だけは会ってやる。だがもちろん、会ったからといってその後どうするかは向こう次第だが」


「それだけでも、嬉しいですわ。ありがとうヘンリー」


 ヘンリーは少し照れた顔をしたあと、思い出したように付けくわえる。


「あと、合う場所はこちらで指定させてもらう」


「もちろんですわ。では、その話しをアドニスに伝えますわね」


 すると、ヘンリーは不思議そうな顔をした。


「お嬢ちゃん、アレキスの倅と知り合いなのか?」


「はい、お友達ですわ」


「ふ~ん。そうなのか、まぁそんなことはどうでもいい。それよりお嬢ちゃん、しばらくこっちにいるんだろう? その間に砂糖の話をつけよう」


「わかりましたわ。それと、後で少しだけ蜂蜜を届けさせますわね」


 その台詞に、ヘンリーは歯を見せて笑った。


誤字脱字報告ありがとうございます。

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