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9.家族の意見

 オットーは暗い表情でユリアの前に座っていた。


「ユリア、マックスに会って来た。お前から聞いてはいたけど、思ったよりも阿片の中毒症状が進んでいるみたいだ。あの女も一緒にいたよ」


 オットーは『あの女』と本当に忌々しそうに言い捨てた。


「忠告はしたけど、マックスが1年以内に正常な状態に戻れるとは思えない。国王陛下の耳にももう入っているはずだから、ヴィリーが立太子されるだろう。王妃陛下は焦ってマックスから『あの女』を遠ざけようとしているようだけど、『あの女』とマックスが王妃陛下を近づけさせない。それにもうあそこまでいったら無駄だ」


「そんな! あの方は男爵令嬢でしょう? 不敬ではありませんか」


「そんなことを気にするような女ではないんだ。お前もマックスを諦める覚悟が必要だ」


「いやです! これだけはお兄様やお父様に言われようとも譲れません! マックスを見捨てたら誰が彼を支えるのですか!」


「『あの女』じゃないのか? なにせマックスは『あの女』とねんごろだ。今のところ、僕も王妃陛下も見捨ててはいないけど、そうなるのも時間の問題だ。僕や王妃陛下の忠告もマックスは聞く気がないようだからね」


「止めてください! そんなこと、聞きたくない! 私はマックスの婚約者です!」


 ユリアは珍しく取り乱して淑女らしくなく部屋を駆け出て行った。彼女の目からは涙があふれていた。


 オットーは妹の背中を悲しそうに見送って父の執務室に向かった。


「父上、マックスに会ってきました。ユリアが会った時は多分調子がよかったんでしょう。僕が行った時には涎を垂らしてほとんど気を失ってました。阿片吸引の証拠は見つかりませんでしたが、室内はひどい匂いでした」


「例の女も一緒だったのか?」


「はい。最初、その女が出てきて部屋に入れたがらなかったのですが、結果的に入れました」


「女も一緒に吸引しているんだろう? 正気を保っていたのか?」


「ええ、不遜な態度はともかくとして、正気には見えましたし、健康にも問題はなさそうでした」


「殿下はひどい状態なのに女は正気を保っている……なんだかおかしいな」


「最初だけ一緒に吸ってマックスがトランス状態になったら吸ってないとか、阿片に耐性を持っているとか?」


「わざわざ耐性をつけているとしたら、あの女が殿下に近づいたのには裏があるのかもしれないな。調べてみよう」


「こんな状態でも婚約解消まで1年待つのですか? マックスが1年以内に正常な状態に戻るのはどう見ても無理そうです。僕はマックスが1ヶ月以内にあの女と手を切って阿片吸引を止めなければ見限ります。多分無理でしょうけどね」


「それでも婚約解消は約束通り1年待つ」


「なぜ? ユリアと約束したからですか? それともユリアが反対しているからですか? でもあいつはもうほとんど廃人ですよ。それに『あの女』に骨抜きにされている」


「今、婚約解消したら、我が家は第二王子派に鞍替えしたとみなされる。第一王子派は劣勢だが、鞍替えするにも慎重にいきたい」


「それではユリアはスケープゴートですか?! どうせ第一王子派が劣勢なら婚約解消しても不都合はないでしょう? それにヴィルヘルム派になって何か悪いことでもあるのですか?」


「仕事の続きをする」


「ユリアの身に何か起きたら父上を許しませんよ。後継ぎにも内緒だなんて父上にはがっかりしました」


 オットーは有無を言わさず出て行けと言う父親に怒りを抑えきれず、そう言い捨てて父の執務室を出て行った。

毒みたいに少しずつ摂取して実際に阿片に耐性をつけられるのかどうかは、知りません。おそらくできないのでは?と思ってますが、ファンタジーということで、目をつぶっていただけるとうれしいです。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク、いいね、評価もありがとうございます。

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