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公爵令嬢はダメンズ王子をあきらめられない  作者: 田鶴


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19.愛されない王妃の嘆き

 アナとディアナの対談から3週間。ディアナが使った王家の影は、アナの話が真実であると報告してきた。


 結婚1年目に友好条約締結のためにフリードリヒがミッドランズ王国に外交団とともに出向いたことがあった。フリードリヒは、その時に知り合ったウィンチェスター侯爵令嬢アマリアとまもなく親密な関係になったという。


 アマリアはフリードリヒと知り合った翌年、実家に勤める執事と急に結婚してすぐに妊娠し、月足らずで生まれた子がルートヴィヒだった。実際はアマリアが妊娠したので、彼女の父は急いで執事と結婚させたのだろう。執事との結婚は少なくとも数年は白い結婚だったらしい。


 当時、シュタインベルク王国とミッドランズ王国は友好条約を締結できそうな状況で、今のように国境がほとんど閉ざされていることはなかった。アマリアが幼いルートヴィヒを連れて国境を越え、フリードリヒに会いに何度も来ていたらしい事実も影はつかんでディアナに報告した。


 両国の関係が悪化してからは会うことが難しくなってフリードリヒとの関係が絶たれ、その後アマリアは夫との間に二子をもうけた。


 フリードリヒがアマリアと別れた頃に関係を持ち始めたのが、ディアナの侍女で後にヴィルヘルムの実母となったハイディだった。


 ディアナは報告を読んで乾いた笑いをあげた。


「ハハハハハ……ハハハハ!……全然気付いていなかった! 子供ができないって悩んでいた時にあの人はよそで子供を作っていた! 2人目の子供のことで悩んでいた時には、別の女にヴィルヘルムを産ませて私に偽装妊娠させた! なんて酷い夫なの!」


 ディアナは子供の頃から婚約していたフリードリヒを愛していたが、彼が同じ熱量をディアナに返すことはなかった。外国から嫁いできて孤独だったディアナに寄り添うこともなかった。それでも愛する夫の隣に居続けるため、偽装妊娠を強いられても我慢してきたのだ。


 だからこそ、相思相愛のマクシミリアンとユリアを添い遂げさせてあげたかった。


 ここ数年、マクシミリアンはユリアを避けていた。でも母のディアナにはわかっていた――息子はユリアを愛していると。


 ヴィルヘルムが立太子されたら、ユリアとマクシミリアンの婚約は破棄され、ヴィルヘルムがユリアを娶るだろう。二代続けて外国から王妃を娶ることはない。でも今のシュタインベルク王国にユリア以上に地位も美貌も知能も未来の王妃にふさわしい令嬢はいないのだ。

マクシミリアンは、穏便に王位継承権を放棄してもユリアと結婚できると思っていましたが、彼の認識は少々甘かったようです。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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