宇 宙 人
わたしは、宇宙人かもしれない。
今朝起きたら、どうも左腕が痒くて堪らなかった。
だからずっとボリボリ掻いていたのだけれど、ふと皮膚を見ると、1ミリ程の厚さの皮が剥けかかっていた。
おや、と思い、爪で引っ掻くようにして剥いてみると、下には変わらず綺麗な皮膚があった。
しかしこの皮、面白いほどによく剥ける。
スルスルと、まるで剥けて当然の物かのように、腕のかたちそっくりに剥けていく。
そしてそれは全身に広がっている。
つまり、左腕だけでなく右腕も、腹部も、ということだ。
首から上は、怖くて剥けなかったが。
だって、もしも皮膚の内側のわたしの顔が、別人のようになっていたら嫌だから。
それに髪の毛がどうなるのか、考えただけでも恐ろしかった。
そんなことを考えている間に、皮はもう足の先まできていた。
いろいろと心配していた体毛などは、しっかり生えたままだし、爪もはがれていない。
鏡で全身を確認したが、何も変化はなかった。
わたしの皮膚の内側は、わたしだった。
わたしは永遠にわたしなんだ。
そう、思った。
それにしても、21年生きてきたなかで、全身から厚さ1ミリもの皮が剥ける体験なんてしたことがなかったので、わたしは宇宙人かもしれないと思った。
一皮剥けた身体で、コーヒーを一口飲んだ。
それはとっくに冷めてしまっていた物だけど、今までに飲んだどんなコーヒーよりも、おいしかった。
終