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(二)-6
「三千円かぁ……」
コンビの一人、ツッコミ役の萩野安平が関西弁のイントネーションで呟いた。
「ひ、ひ、ひ、一人、せ、せ、せ、せ千円やね」
コンビのもう一人で金だらいを落とす役の大岸志文が言った。大岸はもともと吃音の持ち主であり、金額に驚いているわけではない。うまく発語できないだけであって、本人にとっては、いたっていつも通りの通常営業であった。
「いつも通りか……」
「今の俺らだと、こんなものちゃうんか。もらえるだけマシや」
古山の呟きに萩野が返した。
「こ、こ、こ、交通費と、め、め、め、飯代には、な、な、な、なるね」
大岸が言うと、三人はため息をついた。
(続く)




