氷の箱3-3
「そんなことよりも君たちは私の管理下に置かれることになるわけだけど、絶対に守ってもらわなきゃいけないルールを説明するからよく聞いてね?」
私の謝罪、どうでもよかったみたい。
「まず一つ目が……ボロゥ君、気づいてる?」
「いつからだ?」
「わからない。 私も今気づいたし、多分もう気づいたことも気づかれてる」
「俺が出る。 あとは任せるぞ」
「おっけ~。 頼んだよ。 さてと、エルちゃんにノイちゃん、少し我慢してね!」
「え?」
理解がまったく追いつかなかった。何か起こったと理解した時には団長の拳が飛んできていた。
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「う、痛」
「ガウガウ」
「あ、エル、大丈夫?」
「アウアウ」
「それにしても何が」
「よっこいしょぉ!」
まるで隕石でも落ちてきたかのような勢いで目の前に団長が現れた。
「よし、じゃあ逃げるよ!」
そう云った団長は私たちを抱えて走り始めた。それも常人ではありえないようなスピードで。
景色がコマ送りのように切り替わり訳の分からないスピードで爆走する。
「ちょっと待ってさい! 何があったんですか」
「政府に君たちのことがバレてた。 この際だから言っちゃうけど君がダークエルフだったからそのことで通報されたんだと思う。 政府はダークエルフは魔族認定したの!」
感じていた違和感の正体が今わかった。 意思を投げつけられてなかったんだ。 私が町に行けば石が投げつけられない日なんてなかった。
「三年前にダークエルフが反乱を起こしてね、まあそれは失敗に終わっちゃったんだけどそれから、ダークエルフは通報するだけで賞金がもらえるようになっちゃったの。 あそこの国の人たちなら大丈夫と思ってたけど、私の考えが甘かった。 君たちにはこのまま北を目指してもらうから」
わたしの、せいで、こんなことに。
「止まってもらえるかな?」
「もう、きたの!?」
団長が驚きの声を上げるとともに大きく後ろへ後退した。
「君の仲間はこの通り、殺させてもらった」
「ボロ、ちん?」
「そんな、馬鹿な」
嘘だ。あの人は、わたしの目には圧倒的強者に見えた。そのはずなのに、何分経ったかも何もわからない、でもその人は生首となってわたしたちの目の前にしゃれた服を着た男に片手で持ち上げられていた。
「ノイ君、ごめん。 ほんとはちゃんと最後まで届けてあげたかったけどこうなった以上そうも言ってられない。 ぼろチンがやられた、だから私が仇を取らなきゃならない。 君たちはできるだけ遠くに逃げるんだよ? 私が仕掛けたらここからずぅっと北に逃げるの、そしたら私の知り合いが魔大陸まで飛ばしてくれるはず。 いいね?」
「は、はい」
どうして。
わたしたちをそこまでして助けてくれるのだろうか。何の義理もないはずでしょうに。
「なぜ助けてくれるのか、そんなことを考えてるんでしょ? 理由はただ一つ、わたしは、わたしたちはお節介だからね!」
そう云った団長は男の方へと強く踏み込んで向かっていった。
lolです