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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
96/113

96.異世界の日常


 朝起きて、美味しいもの食べて、リリーと授業を受けて、美味しいもの食べて、美味しいもの食べる。転生?して、リリーに拾われてからずっとこんな生活、今日もメープル先生の授業を受けて、終わったらカモネス・アリュートルチ支店を冷やかしに行く。

 これが子供に捕まった豚型魔獣、トンちゃんの日常、リリーその缶のクッキー高い割に美味しくないからやめときなさい。


「うーん、今日はなににしようかなぁ、マグノーさんはクッキーが好きなんだってトンちゃん」

「ぷーん、ぴきゅぴぴぴきぴぅぴぷぷぴぃ(ふーん、怒られる前に気を逸らすための話題ね)」

「だからね、マグノーさんに美味しいクッキーを分けてあげれば、リリーのお勉強をする時間は減ると思うの」

「ぱぽぱ(アホか)」

「だって、誰だって難しいお勉強の時間より、楽しいお菓子を食べる時間の方がいいでしょ?これにしーよお」


 中に入ってるクッキー数が多くて美味しいやつを選んだリリー、そうよ、質も量も大事なんだからね、あと値段が手頃だと完璧。

 レジに行ってカルテさんに商品を渡す、慣れた様子で金額を計算すると、リリーと私に分かりやすいよう合計金額を教えてくれた。


「トンちゃん様が小銀貨3枚、リリー様が小銀貨4枚と小銅貨2枚ですね」

「ぷき(はい)」

「えっと、4枚と、2枚」

「えー、どちらも丁度いただきました、こちら商品です、またお越し下さい」

「はーい、カルテさんまたねー」


 リリーに私の分の荷物も持たせ、お屋敷への帰り道を歩く、今日も良い天気だ。私達を照らすぺっかぺかのお日様を隠すように、突如バフールシーカの角と顔が現れた。


「ブフルルゥッ!(トンちゃんさんじゃないですか!)」

「おひぇっ!?」

「ぷぴきゅ(お久)」

「あわわわわわわわ」

「ぅルルルブルルッ、ふしゅーっ、シューっ(今日はいい天気ですねぇ、こんな日は、川の水を飲むに限ります)」

「ロアルーーーーッ!!!!」

「ヒュッ!?ヒヒィーーンッ!(ヤベッ!?ではまた時間のある時にお会いしましょうね!)」

「ほわわわわわわ」

「ぷぱぴー(またねー)」


 ダガダガ森へ向かって走り出したバフールシーカのロアルだったが、追いかけてくる飼い主さんが、腰からリモコンを取り出し、緊急停止ボタンを押した。


「止まれ!!!!」

「ヒッ!!?(ヒッ!!?)」

「ッたくまだ土も掘り返し終わっちょらんゆうんに、どこ行くつもりやロアル、まだ息子のビットの方が言うこと聞くど、帰るべ」

「ヒーン!ひーーん!!(ヒーン!ひーーん!!)」


 (くつわ)をつけられ、手綱をつけられ、停止を解除されて連行されていくロアル。頑張ってお野菜を作るのよ、息子と奥さんと、飼い主さんとも仲良くね。

 突然の大型魔獣バフールシーカの登場に、はわほわ変な鳴き方をしていたリリーだが、ロアルが連れて行かれた事により回復したらしい。引き摺られていくロアルを見送りながらこう言った。


「トンちゃん、ツノ、怖かったね」

「ぷぷぴぷぺ(そこなのね)」


 怖かったのはそこなのね。



◆〜◆〜◆〜◆〜◆


 お家に帰ってきたわ、玄関を入ってすぐに目元を押さえるお兄様付きになったメイドのシェイナと、頭を抱える執事さんが居たの。その二人のすぐ前には、デカい鞄を積み上げた山を必死に守るお兄様。


「あ、リリー、トンちゃん、帰って来たのかい?」

「お兄様、なにしてるの?」

「この鞄を帝都まで持って行きたいって言ったら、みんなが量を減らせって言うんだよ」

「ぷぷぴぴぴぁぴぁ(この量じゃね)」

「この中には今まで僕が疑問に思った事や、不思議だなって思った事をまとめたノートが入っているんだよ、捨てるわけにはいかないし、部屋にももう置ける場所が無いんだ」

「たくさんだねぇ」

「なぜ、最初に帝都に行った時より、荷物が多いんだろうか……」

「これじゃ私も、シャスタ坊ちゃんも馬車に乗れないじゃないですか……なんでですか……」


 気の毒ねぇ。お兄様の説得にはまだまだ時間がかかりそうだ、項垂れるシェイナと執事さんの手に、それぞれ私の買った棒付き飴を握らせて、その場を後にした。



 部屋に戻って早くオヤツタイムにしましょ、リリーと共に進んでいくと、ドーベリーに囲まれたヒゲオヤジと、それを見ている調教師さん。

 ベロンベロン顔からヒゲから全て舐められながら、調教師さんと話しているのを、リリーと扉の影から観察し始めた。


「だからなぁ、子豚っぶっ、こらこら、子豚も室内で飼っているのだから、ワシのドーベリーもムブッ、部屋を作ってやろうとだな」

「駄目です、その申し出は過去に三回ほど御座いましたが、室内に移動させるたびにドーベリーを肥えさせていたでしょう」

「それはなァ、でも、今年のような冬は寒かろうし、これから梅雨もくるし……」

「ワン=ワン用の菓子を与え過ぎるたびに、番犬として相応しい体型に戻すのは私なんですよ、駄目です」

「でもぉ……」


 ピコピコパタパタ、ドーベリーの尻尾が激しく動く、懐かれてはいるわね、ヒゲオヤジ。ジッと観察していると、リリーが頭の上から私に声をかけた。


「お父様ね、毎年ああやって、ドーベリーのお部屋をお屋敷の中に作ろうとするんだよ」

「ぷーん、ぴぷぷぴ(ふーん、そうなの)」

「でもね、お部屋の中に入れるとね、ドーベリー達がまんまるになるのよ」

「ぷぷっ(ぷぷっ)」

「まんまるになるたびにね、調教師さんが怒ってね、細くするのよ」

「ぷぷぷぴっ(容赦なっ)」

「お部屋行こうか、トンちゃん」


 そうね、行きましょうね。情けない声を出すヒゲオヤジと、ドーベリー達に背を向けてオヤツ会場へと進んでいく。



 扉を開くと、満面の笑みでアップルパイを持っている料理長と、苦々しげな表情で紅茶を淹れる副料理長が居た。何よ、私はお嬢様のラジモンなのよ?文句あるの??早く席に座らせプキーーーー。

 お母様に持ち上げられ、赤児用の椅子に座らせられた、ここアップルパイから一番遠い席よお母様、せめてもう少しリリーの方へずらして欲しいわお母様。


 よっこらと椅子へよじ登ったリリーに、マグノーさんが紅茶を渡し、アップルパイをサーブする。


「リリー様、今日は奥様と一緒にお姫様のお茶会ごっこをしましょうね」

「お姫様の?」

「そうですよ、お膝は閉じて、カップの持ち手を指でそっと持ち上げてくださいね」

「んん……むずかしいよ……?」

「練習すればお姫様のように上手になりますよ、中身は少しずつ増やしていきましょうね」

「お嬢様、アップルパイのお味はいかがですか」

「とっても美味しい!」


 リリーの性格をもう理解して、勉強でなく、遊びとしてお茶会のマナーを仕込んでいるわ。料理長に渡されたアップルパイを貪り食っ………………待てよ、私達が買ってきたお菓子はどこに……?

 口の端に具のカケラをつけながら、部屋の中を見渡して探すと、不穏な動きをする副料理長。その手には銀のクローシュと、私達が買ってきた筈の買い物袋。気づいてリリー、私の、私達のお菓子達が、攫われて。



 私は、蹄を伸ばして、もう届かないオヤツ達へと叫んだ。



「ぷぴゅぱぷぴぷーー!!(それも食べるーー!!)」

「トンちゃん?アップルパイ美味しくなかったか??やっぱりチーズケーキにした方がよかったか??」

「アップルパイ美味しー!」


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