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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
89/113

89.迷惑メールフォルダ:未読999件


 今日はなんにも無い良い一日だった。別にいつも通りの一日だ、メープル先生の授業をリリーと受け、お兄様に山の葉っぱを渡すアオバと話して、お母様の部屋でチャーミーと一緒に干し大根を貰い、忍び込んだヒゲオヤジの部屋から追い出された。


 今日はなんにもないステキな一日だった。ヒゲオヤジの部屋から取ってきた干し葡萄を食べながら、ちぐらの中で転がっている。

 なにもない日は素晴らしい、だが、それと同時になにもしていないのではという気分にもさせる。なのでトンちゃんは、女神権限とからしくない名前がついているステータスを開くのだった。


「さーて、もうスライム食っても中々レベルは上がらないし、チートなんて使えないし、子豚な私にいったい何ができるのかしら?ヘイステ」


ピロンッ

「なんかない?」


ピピピッ

「お?なになに?ログイン者のトンちゃんへメッセージが届いております??」


 メッセージって何かしら、やっぱこういうのは物語が新展開を迎える時とか、世界が危機に陥ったとか、特別な権限だからこその展開が私を待っているはずよ。

 震える蹄でステが示すURLを触ると、目の前に真っ黒な画面が開き、いい加減聞き飽きた奴の声が聴こえてきた。


『この映像は、あなたのいる世界を統べる美しく慈悲深き女神が貴重な時間を割いて撮影し』

「ぷぺ、ぽーぴきゅきゃきゃぴきゃ(ステ、動画の終了と消去)」

ピロンッ、テュルリッ


 動画撮るの失敗してんじゃねーかよあの女神(アホ)、まさか撮った映像を確認せずにそのまま送ったわけ?本気でこの世界の行く末が心配になってきたわ。

 トンちゃんは干し葡萄の袋の口を閉じると、ちぐらの中の温かい所に寄り、身体を丸めて休む大勢に入るのであった。


ピロッ

「ぷみ……(寝よ……)」


ピロッ

「…………ぴ(…………ぴ)」


ピロッ

「ぷぴ…………(るさ…………)」


ピロロロロロロロロロロロロロロロロロ

「プギャヌギッギィ!!!!(うるっさいわ!!!!)」


「トンちゃぁん……どしたのぉ…………?」

「ぴきぴぴ!(なんでもない!)」


 なんなのうるさいわね!リリーが起きちゃうじゃないの!!ステ!ステ止めなさいステ!!ビュババババと増え続ける題名の無いURL、バグなの?怖いわ何よなんなのよこれ。

 画面を埋め尽くす通知バーにこめかみを抑えつつ、そのうちの一つを蹄で突いた。その途端に現れる画面と、もう耳慣れてしまった音声に合わせてぬるぬる動く棒の群れ。


『あなたの世界のビューティフル女神、華麗に復活!!まぁ?私ほどの優秀な女神であれば、たとえハンマーに殴られようとも蚊に刺された程度のダメージしかないのですよ子豚!!!!』

「ぷぴぱ……(うるさ……)」

『まぁまぁ?前回のポイントほぼ投入の愚行はセイメーちゃんのカードが全て揃ったので水に流してあげましょう、私、慈悲深い女神なので』

「ぷぴぱぁぱ……(開けたんだ……)」

『でもしかしbut!子豚の持っている女神権限は私の物であり、あなたが持っていてもなんの意味もなさない物、なのでちゃちゃっと返してもらって今度こそ卒業検定試験に挑戦するんでさっさと返しなさい子豚!!!!!」』

「ぷぱ……(うざ……)」


 うるさいしうざいし眠い。今日はなにも無いステキでムテキな一日で終わりって言ってるでしょ、日付変わった?知らんそんな事。

 未だギャーギャービービー騒いでいる女神の声で、激しく動くスペクトラムアナライザ。どうでもいい話を聞くのにも飽きてきたトンちゃんは大あくびをして、ステの画面を操作した。


『今回ばかりは物欲にも負けていられません、私の神生がかかってるんですから!早く女神権限を私に返すのです子豚?聞いてるんですか?子豚??』

「ぴーぴ、ぷきゃぴきゃ、ぴーきゃぷっき(えーと、これだこれだ、メールボックス)」

『何を操作しているのですか?子豚?ちょっと?まさかまだこの私の凄さと偉さがわからないと言うのですか??』

「プーピピピぷぷぴきゃーきゅきゅっきぃぴぃ(beautiful*女神からのメールを迷惑メールへ移動)」

『子豚!?今なにしたんですか!?ちょっと子豚!!?』


 さ、寝よ寝よ、きっと明日もなにもない素敵な一日になるわ。トンちゃんは目を閉じて、よく眠れるようになる魔法の呪文を唱えた。


「ぺぴぷぺ(ヘイステ)」

ピロンッ


『子豚!?子豚なぜ寝ようとしているんですか!?まだ私の話は終わっていませんし女神権限だって返してもらっていませんよ!!?』

「ぷーぴきゅぺきゃぴきゅぴゃー(beautiful*女神との通信を終了)」

『こ』

テュロン


 きっと明日も明後日も子豚、早く人型に進化したいわ。キュウと息を吐いて、そのままトンちゃんは深い眠りについたのであった。



「ねぇトンちゃん、昨日の夢にね、トンちゃん出てきたのよ」

「ぷぅ」

「トンちゃんがね、大っきくなる夢だったの」

「ぷぷぴ?ぴぃきゅきゅぴゃきゃぁ」

「リリーね、お馬さんみたいに背中に乗せてもらったんだぁ、楽しかった」

「ブブブ」

「トンちゃん?なんで怒ってるの?トンちゃん??それリリーのオヤツだよトンちゃん!!?」

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