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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
79/113

79.威嚇


「ヤァぁぁぁぁァァァァァァァアアアアだぁぁぁぁぁァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!」


 耳をつん裂くような甲高い子供の声、効果はバツグンだ。声の主はそう、さっきまで黒いトントンを捕獲してご機嫌だったジェスくん(3歳)である。

 可愛いトントン達の耳はペッショリと下がり、お姉ちゃん二人はオロオロとし始め、お父さん二人はヘタクソな宥め方を連発する。


「ジェス、ジェス、お前はまだ3歳だから、ラジモンを持つには早いんだ、だから今日はバイバイしような」

「おねぇちゃんばっかあずぅぃィィィィイイイ!!!!」

「ジェスくん、ジェスくん、ほら黒いトントンが困っているから一離してあげような」

「やァァァァァァァアアアア!!!!!!!!」


 地面に倒れ伏し、黒いトントンの背に顔を伏せ、短い脚をめいっぱい伸ばしてバタつかせ、お姉ちゃんはトントンをお持ち帰りできるのになぜ自分はできないのか、理不尽ですと超音波を放つ3歳児。

 上下に激しく動かされるあんよを、周りのトントン達が頭を同じく上下させながら見守っている。


「ばくがんおうちいっしょかえるのぉぉぉオォオオオオオ!!!!!」

「ぷきゅぅぴききゃきょぅきっぅ(名前まで付けていらっしゃる)」

「しょうがないね、ラジモンにするトントンとの出逢いは運命だからね、お家に連れて帰るしかないね」

「リリーは黙ってなさい、でもそうだな、他にも五匹ぐらい子豚を包んで持ち帰らせれば沢山いるトントンをラジモンにするのは諦めるかもしれんな」

「持って帰らないと言ってるだろうチャーリー」


 どさくさに紛れて庭のトントンを減らそうとするヒゲオヤジと、ジェスくんを抱き起こそうとして全力の抵抗をされているジノンさん。

 ジェスくんの体のどこかを掴もうとするたびに、超音波の音域と攻撃力が上がる。


「ァァァァアア⤴︎ぁぉぁぁ⤵︎ゥァァアア⤴︎ぁぇぁぁ⤵︎ィャァァァアア⤴︎⤴︎⤴︎!!!!!!!」

「ジェスぅ……お父さんそろそろ馬車に乗りたいよ…………」

「ジノンよ、他人事で悪いんだがこの際トントン一匹だけなら、連れて帰ってやったらどうだ?こうなったらテコでも動かんだろうし……」

「妻になんて言えばいいんだ……確かにトントンは他の魔獣に比べると世話は楽かもしれないが、なにせトントンだぞ?なんの役にも立たない魔獣だぞ?」

「ァァァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」

「ここまで必死に泣いているのを見ていると、さすがに可哀想になってきてなぁ…………」


 いい加減泣きすぎて声が枯れてきたジェスくん、その腕の中でモゾモゾと居心地悪そうに動くバクガン?が、ぴぷぴぷと悲しげに鳴いている。


「ぴぴぷ、ぴぴぷぴ、ぷぴぴぷ(せなか、ぬれてる、ぬれてるぅ)」

「ほらジノン、黒いトントンも離れ難そうにしている事だし、七つ子のお茶会にはどうせ他のラジモンを持たせるんだろう?なら良いじゃないか」

「ぴきゅぴきゅきゅぅ(ただの文句よ今の)」

「そうだなぁ……お父さんが暫く怒られれば許してくれるだろうか…………トントンだし…………」

「ぴきゅぴきゃぁきゃ(なんで納得しちゃったの)」


 なんで納得しちゃったの、ただ背中が涙と鼻水で濡れて気持ち悪いって鳴いてただけよ今の。しかしここで水を差すのもなんかなぁ、まとまりかけてるわけだし、幸せなトントンが一匹増えた所で私にはなんの問題もないわけだし。

 びじゃびじゅと鼻水を啜るジェスくんと、ジノンさんがよくあるお約束を始める。


「いいか?ジェスが自分で躾をするんだぞ」

「う゛ん゛」

「ちゃんとお世話も自分が出来ることをしてあげるんだぞ、お前のラジモンなんだからな」

「う゛ん゛」

「この約束を守れなかったらすぐにトントンはお外に捨ててくるからな、お父さん、捨てると言ったら絶対に捨てるからな」

「う゛う゛ん゛」

「こらジェス」


 異世界の3歳児正直ね、そこは首を縦に振っときゃ良いのに、素直過ぎるのも困りものね。まぁでもこんなに望まれて持ち帰られるならトントンも幸せでしょ。

 こうして、ピンク色のトントンであるパンチェッタと、黒いトントンであるバクガンは、チュートリアの町から遠い領地を治める、キャトバリー家に行ったのであった。



◆〜◆〜◆〜◆〜◆


 わがはい、は、"ばくがん"である、この前、小さい人間に名前をつけられた。ビービー泣いている小さい人間につかまったと思ったら、温かいところでご飯を食べさせられて、寝床ももらった。

 一緒につかまった、"ぱんちぇった"という名前をつけられた、仲間もいる、なんか、イヤな感じのする名前だと思う。


 今は、たくさんの小さい人間に囲まれて、ジェスという小さい人間に、頭を撫でられているところだ。


「ジェス、ラジモンもってるの?」

「うん!ぼくのバクガンだよ!」

「おとうさまが、七つになるまで、ラジモンだめってゆってたよ」

「でもぼくのバクガンだもん、トントンがいっぱいいるとこで、ぼくがつかまえた、ぼくのバクガン」

「ふん!そんなトントンなんてうらやましくないし!!」

「ぼくがつかまえたんだ、ぼくのバクガンだよ」


 よく分からないけど、わがはいの名前は"ばくがん"というらしい。小さい人間のあつまりは、食べものがたくさん食べられるからうれしい。

 今も、ジェスに頭を撫でられながら、食べものを食べている。小さい人間はすごい、たくさん食べものをもっている、わがはいは食べものを探すのがヘタだから、ジェスのことをそんけいしている。


「七つじゃないのに、ラジモンをもってるのはズルだ!ジェスはずるっこだ!」

「じぶんでつかまえたんだもん!ずるっこじゃないもん!!」

「ずるっこ!ずるっこ!!」


 でも、ジェスは戦うのがヘタみたいだ、だから、わがはいがジェスを守らなければならないのだ。食べものをゴクンと飲み込んで、ジェスにいかくしている小さい人間にわがはいもいかくする。

 ジェスから食べものをもらうから、わがはいはジェスを守るのだ、だから足をつかまないでほしい、小さい人間にこうげきができない。


「そんなにいうなら、みんなもつかまえてくればいいじゃないか!!」


 小さい人間のことはよくわからない、でも、ジェスが鳴き声のいかくで勝ったのはわがはいにもわかった。


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