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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
74/113

74.トンネルを抜けずともそこは雪国だった


 冬だ!雪だ!雪景色だ!!しかしこの世界は炬燵というものの概念すらない世界なので、トンちゃんはちぐらから出たくありません、この中のお菓子と料理長からの差し入れで冬眠します。よろしくお願いします。

 私のちぐらの前で騒がないで下さい、騒音被害で被害届を出します、でも今はちぐらへ持ち込んだシャークジラジャーキーを噛むので忙しいので被害届は後で書きます。


「トンちゃんトンちゃんトンちゃんトンちゃん!」

「ぴ(ぴ)」

「雪だよトンちゃん!お外に沢山積もってるよトンちゃん!!」

「ぷ(ぷ)」

「こんなに雪が積もるのリリー初めてだよトンちゃん!お外真っ白よトンちゃん!!」

「ぽ(ぽ)」

「ねぇねぇ出てきてトンちゃん遊ぼうよトンちゃんリリーと遊ぼうよねぇトンちゃん」

「ぺ(ぺ)」


 はーーーー温かいちぐらの中で食べる干し肉がウメェーーーー、あとは冷えたジュースが有れば完璧なのに、子豚の身体でコップ持とうとするとすぐに溢しちゃうから困ったもんね。

 ジャーキーと同じく、ちぐらに持ち込んだ林檎を齧って喉を潤す、なんて優雅な冬の午前の過ごし方なのかしら。さて、ぬくい空間の中でまた惰眠を貪るとするか。


 そして私はお魚ジャーキーと林檎を食べ終え、隅の袋にゴミを入れて口を縛ると、毛布に包まれたんだよ包まれてんだよなんで外に出されてんだよ寒い!!!!!!!!!!


「ぴきゃい!!!!!!!(寒い!!!!!!!)」

「トンちゃんやっと見つけた!も〜、手で掴んでも掴んでもお菓子ばっかり出てくるんだもん!!」

「ぴきぃ!!!!!!(ひどい!!!!!!)」


 酷い!ひどい!!トンちゃんちゃんと冬眠するってお伝えしてたのに!ちぐらの上に冬眠中って張り紙してたのに!!ひどいわリリー!!今日のアンタのオヤツは無いと思いなさい!!!!

 尻尾を掴まれ引き摺り出されるという、なんとも屈辱的な事をされた私は、ピギィ!!と抗議の声を上げまくったが、リリーには全く通じていないようだ。


「まったく、トンちゃんったらお寝坊さんなんだから、今日はリリーと一緒に雪遊びする日なのに」

「ピピキャギャピギャー!!(私は冬眠するのよ!!)」

「今日も元気いっぱいねトンちゃん、メープル先生来ない日だから、朝ごはん食べたらお外行こうね!」

「ぴきゃぎゃい!!!!(いかない!!!!)」


 私、ちぐらの上にちゃんと冬眠中って張り紙してたのに……!次から起こさないで下さいって張り紙にしなきゃ……!!

 哀れなトントンであるトンちゃんは、傍若無人な初心者ラジモン使いであるリリーの小脇に抱えられ、寒い中朝食会場へと連れ去られていったのだった。



◆〜◆〜◆


 はぁ〜〜〜〜しゃむ〜〜〜〜〜〜い、寒さむむ、もう家の中入んない?駄目?だめかぁ。

 いい感じに真っ白けな庭、枯れ木に雪で白い花が咲き、吐き出す息も白い煙に変わる。雪国さながらの冬景色にリリーのテンションは爆上がりだ。


「すごーーーーい!これなら雪だるまいっぱい作れるよトンちゃん!!」

「ぷぴーーーーい、ぴきゅ、ぴきゃきゃぷぴゃぷぴぃき(さむーーーーい、でもそこまで、人間の時ほど寒さは感じない)」

「トンちゃん早くはやく!!」


 それはそれとして、トンちゃん人間の時は雪は降るけどあんまり積もらない所に住んでたのよね、こうふわふわの白い雪が積もりまくってると普通にテンション上がってくるわ。

 一足先に雪原へ足を進めたリリー、二、三歩進むと太ももの半ばまで埋まり、キャラキャラと楽しそうに笑い始めた。


 さて、そろそろ私も本気出しますか、と。


 うわー!と笑いながら雪の中に倒れるリリーの隣へと、助走をつけて子豚は飛び込んだ、きっとふわふわの雪が優しく私の身体を受けと───


    ↓↓↓↓ズボブゥ↓↓↓↓



「るぷぷぴぃ……(頭から刺さった……)」

「トンちゃぁぁぁあん!!?」





 なかなか酷い目にあったのではないだろうか、私のキュートな豚鼻先が冷たくなってしまった。なんとか体勢を立て直したは良いが、四方八方周りは白い雪に囲まれてしまっている。

 穴の中から青い空を見上げると、心配そうなリリーの顔だけ見えた、怪我もしてないし心配ないわ、ただ視界良好とは言い難いけど。


 とにかく次に目指すのは白からの脱出よ、具体的に言うと飛びこむ前の位置に戻る。雪かきって大切なのね。

 そうねぇ、トントンの身体だし、穴を掘って進めば外(雪のないとこ)に出られる筈、そしたら脚が埋まってるリリーを置いて部屋に戻りましょね。



→→→ズモモモモモ→→→


「トンちゃん?どこいくの??」


→→ズモモモ⤴︎モモモモ→→→


「トンちゃんそっち違うよ」


→→→ズズモモ⤵︎モモ→→モ⤴︎⤴︎


「トンちゃん?」


ズ⤴︎⤴︎モモ⤵︎⤵︎ズズズ←ズモ→ズズ←モ→


「トンちゃん??」


モモモモモ……??


「トンちゃぁん!!誰か来てぇ!!!!」





 やぁ全く酷い目にあったわ、私の可愛いトントンボディが冷えちゃったじゃないの、でも雪の中って外よりあったかいのね。

 近くで雪かきをしていた調教師さんに助けて貰った私とリリーは、今度はもう少し雪が浅い所で遊ぶ事にした。今はリリーが作る雪兎ならぬ、目が小石で耳が葉っぱの雪トントンが、私の周りに次々と配置されている。


「トンちゃんが王様ね」

「ぷぴきゅぴぴきゃぅ(そのトントン目の位置ズレてるわ)」

「これトトンニちゃんとコトン二世ね」

「ぷぴきゅき、ぴきぴぴぷぴぴぷ(コトン二世、耳とれかけてるわよ)」


 この世界のお盆は冬なのかしら?次々増えていく雪のトントンの葉っぱの耳を、二股の指を駆使してなんとか直してやりながらそう思った。


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