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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
59/113

59.高い高いは絶叫マシン

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 少しだけ災害の描写(跡地の説明)などがございますので、気になる方は御注意下さい。


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 お兄様が持ち帰った茗荷と、“ミョウガサマ”の山の立ち入り許可により、アリュートルチ領の財政にだいぶ余裕が出来たようだ。


 ところでさ、前に、リリーの家にも馬は居るって言ったわね、言ってなかったかしら?まあ良いか。


 馬車を引く馬が二頭いて、私の毛繕いを良くしてくれるシャイアーと、その辺の花を持っていくと食べてくれるハクニーの二頭が飼われてるの。

 最近は遊びに来るヌシ様にも慣れたみたいで、放牧場で一緒に日向ぼっこをしているわ。ヌシ様の近くに居ると調教師さんはヌシ様が怖くて迎えに来ないことが分かったみたいで、ヌシ様が放牧場に来た時は、ずっと周りをうろちょろしている。


「ぷきゅきゅぷきゅぷきゅぴーきゅぷぴ(そして此奴がニューフェイス)」

「マスタングっ、返してっ、トンちゃん返してっ」

「ぷぴぷぴきゅぷきゅききゅき(白馬のマスタングよ)」

「トンちゃんはこれからリリーとお買い物行くのっ、返してーッ」


 動物だから話は通じない、が、一度ナップサックを咥えて持ち上げられた時に、シュッと四肢を引っ込めて逃れたら「ふぅん、おもしれー子豚」と思われたのか懐かれたわ。

 今もカモネスに行くために、ナップサックを担いでリリーの隣を歩いていたら、咥えて持ち上げられたの。リリーが下でぴょこぴょこ跳ねているのが見える。


「こらぁっ!返してって!トンちゃぁん!!」

「ぷきょぷきゅぷきゅきゅき(おちょくられてるわね)」


 飼い主の筈のヒゲオヤジもマスタングに舐められてるわ。この前背中に乗ろうとしてたんだけど、台の所まで引っ張ってきても、跨がろうとすると二、三歩前に出るのよコイツ。

 調教師さんも一応乗れはするんだけど、マスタングの気分が乗らないとその場から動かないし、鞭でお尻を叩いても頭を下げて足首とか喰み始めるの。あと練習終わりに必ず舌をペロペロしだす、バカにしてやがるぜ。


「リリー怒るんだからね!トンちゃん返さないと、調教師さんに鞭でバシバシって怒ってもらうんだからね!!」

「ぷ?ぷきゅきゅぴぴぃ……??(お?頭を下げて……??)」

「そうよ、マスタングは偉いねぇ、意地悪だけど」

「ぷきゅきーい(また上げるーう)」

「もー!ほんとに意地悪ッ!!」


 蹴ったり噛んだりはしないけど明らかに人間を下に見ているわ。馬は賢いのね、魔獣のバフールシーカのほうがまだ素直よ。

 柵の向こうで右に左に上下にと、とにかく飛び跳ねて怒っているリリー。そろそろ降りたいわ、カモネス限定烏賊の一夜干しが無くなってしまう、アレ持ってるとヒゲオヤジへの賄賂として使えて便利なのよ。


 腕を抜いてナップサックの片方の紐にぶら下がり、無理矢理中に手を突っ込んでトンちゃん用の財布だけ取り出した。荷物はリリーに持たせりゃいいか、そのまま地面に飛び降りる。


「ぷっ、き(よっ、と)」

「トンちゃん降りてきた!早く行こう!!」

「ぷぴぷぴ(はいはい)」


 後で調教師さんにナップサック回収してもらわなきゃ。面白くなさそうにモグモグとナップサックをしゃぶるマスタングを背に、カモネスへとリリーと共に歩いていった。



◆〜◆〜◆


 新発売と書いてあった蜂蜜キャンディを口の中で転がしながら、お家に帰ってカモネスの店員さんがくれた玩具を開封した。

 前に私が金策の為に、農民暮らしと貴族暮らしってゲーム出したじゃない?よく知らないけど貴族ルールで、良い商人にはお貴族様のお家に入りやすいよう、貴族の下の位である准男爵にしてあげよーねーっていう制度があるらしい。カモラインネストを経営する黒鴎商会会長、リマ・トレードさんもお貴族様のお屋敷に出入りしやすいようにと、この準男爵の爵位をいただいている。

 トンちゃんは頭が良いので理解したぞ、これが“名誉貴族”ってやつか。


 それで、私の作った二つを真似てトレードさんが新作、"商人暮らし"を出したので無料でどうぞとのことだった。トレードさんは太っ腹だなぁ、ヒゲオヤジの方が腹は太いのにケチなんだもの、トンちゃん困っちゃうわ。

 ベッドにコロコロと転がりながら商人暮らしのセットを広げていく私と、同じくコロリと転がって買ってきたオヤツを食べているリリー、あ、その堅焼きクッキー私にも頂戴よ。

 

「トンひゃんはらぁ?」

「プキキきゅききゅ、ぴぴきゃぴきゃぷぅ(うるさいわね、今広げてるでしょ)」

「商人さんの暮らしってどんなのだろうねぇ」

「ぷきゅきゃーきゃぴっき、ぷっきゅきゅぷっき、ピキきぴきゃー(店に売れそうな商品仕入れて、利益出るように売って、また仕入れるのよ)」

「リリーも商人さんになったら、お金いっぱい稼げるかな」

「ぷぴぴ(無理ね)」


 無理よ。イベントカードをシャッフルして、ルーレットを盤面の入れるところに突っ込む。は?何このトントンのフィギュア、金色に塗られてんだけど。なんで??

 コロンと出てきた用途のわからないトントンの木彫りの人形、マスの上に置く駒は別に有るから、特別な駒でもなさそうだ。蹄に挟んで眺めていると、リリーに奪い取られた。


「あ!可愛い〜!!トンちゃんそれリリーにちょうだい!!」

「ぷぷぴきぃ……?(トントン……?)」

「金色のトンちゃんだねぇ、可愛いねぇ、リリーの机に飾っとこうっと」

「ぷききぴぴぃぴ……??(金色の私……??)」


 意味がわからん。さて、今リリーが吹っ飛ばしたイベントカードを揃えないと……金の子豚チャンス……?なにそれ……??

 バラけたカードの中に、金色のトントンがキノコを咥えている絵が描かれたものがあった、2、4、6が出たらトントンが持ってきてくれたキノコを売ったお金を貰えるらしい。なんじゃそら。


「トンちゃんトンちゃん、トンちゃんそっくりよこの金色のトンちゃん、可愛いねぇトンちゃん」

「ぷぴぷぴ(はいはい)」

「んふふー、マリーちゃんのお父さんは凄いねぇ、トンちゃん作れるんだもんねぇ」

「ぴぴーきゅきゅぴきゃぷきゅぷきゃぴきょきょーぴきゃきゃ(マリーちゃんのお父さんが作ったわけじゃないと思うけどね)」


 色々と準備して、さてゲームを始めるかと偽物のお金を配ろうとしたら、バタバタと慌ただしい足音と、何ごとかを怒鳴り合う声が聞こえてきた、騒々しいわね。

 ノックの後すぐにリリーの部屋の扉が開けられ、ヒゲオヤジとお兄様が入ってきた。


「お父様、お兄様、今ね、トンちゃんとね、トレードさんに貰ったゲーム始めるとこなの、お父様達もする?」

「リリー、ベッドの上でお菓子を食べるなって前にも言っただろう?遊ぶならお菓子を食べ終わってからか、一回お片付けしてからにしなさい」

「はぁい……」

「それでお父様、僕もヌシ様の所に行きたいんだ」

「駄目だ、シャスタは冬休みの間外出禁止、冥加山(ミョウガヤマ)に一人で行って夜になるまで帰って来なかったろう?大人と一緒じゃないと危ないから駄目だと何度も説明したのに、心配したんだぞ」

「ごめんなさい……でも」

「誰がお母さんを宥めたと思っているんだ、ちゃんと反省しなさい」

「トンちゃんと一緒だったから」

「子豚は大人の内に入らない!」


 そりゃそうだ、いくら私がスーパーなんでも出来る最強子豚トンちゃんだからって、大人から見れば、飼ってる犬と一緒だから平気って言ってる子供と変わらない。どう見ても大丈夫じゃないわ。

 ボリボリとクッキーを齧っていると、突然身体が宙に浮いた、成る程これがキャトルシュミレーター?だっけ??私、今日は持ち上げられる日なのかしら。


「ぷきー(うわー)」

「リリー、すまんが子豚を借りていくぞ」

「なんで!?トンちゃんはリリーと今からゲームするんだよ!!?」

「この前の災害でヌシ様のお家が流されたと言っていたろ、町は大体直ったから、ヌシ様の住むところを森に作ってやろうと会議で決まってなぁ」

「だから僕も行きたい!邪魔しないから!!」

「シャスタはリリーと遊んでなさい。それで、ヌシ様と話せるのはトンちゃんしかおらんだろう、クレヨンと画用紙も借りていくぞ、どこにある子豚」

「ぷっぴ(あっち)」


 ヌシ様相手ならしゃーないわね。寝るところが見つからなくて、最近は厩舎の隣で丸まって寝てる事が多いから、新しく来たマスタングが怖がって中々馬房に戻らないって聞いてるわ。

 こうして、ヒゲオヤジの小脇に幼稚園の黄色い通園バックのような画板と共に抱えられた私は、頰を思いっきり膨らませるリリーと、眉間に皺を寄せてうぃーって顔をしたお兄様に見送られ、はじまりの森へと向かうのであった。



◆〜◆〜◆


 氾濫した川と、運ばれた土砂で薙ぎ倒された木々がその辺に転がっている。これは地形が変わってそうね、スライムが生える場所も変わりそう。

 ヒゲオヤジに抱えられ、森の中を進んでいく町の一行。ある程度開けたところを探していると前方の茂みから大きな影が飛び出してきた。


「ガァァァァア!(こんにちわぁ!)」

「ア゜ァーーーーッ!!!?!?」

「シィーーーーッ!!?!?!?」

「ヒャギョォーーーー!!?!?」

「ぷぴぴきゅぴーきゅきゃ(悲鳴が個性的ね)」


 熊の大きさは洒落にならんわ。ドンガラガッシャンと倒れ伏すヒゲオヤジ一行、てか、倒れたどさくさで私を掲げて生贄にしようとするな。

 ブルブルと小刻みに震えるヒゲオヤジの手を叩くと、ガクガクと揺れがもっと酷くなった、悪手だったか。


「グォォアガォォルァ?(なにしてるのぉ?)」

「プププププキきゅぅきゅキキキキきゅぴきゅうウウウぴぴぷぴピピピィ(ぬぬぬぬヌシ様のノノノノお家作ってくれるルルルんだってさサササァ)」

「ガァォ??(お家ぃ??)」

「たべなッ、だべないでッ」

「しししししにだくねぇよぉ」

「……ッ!…………ッッ!!」

「ぴゃぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ(やめめめめめめめめめめ)」

「ガァグァァグルルルゥ、グォォァー(そういう遊びなんだねぇ、こうでしょぉー)」

「ワ゜ァ゜ーーーー!?!!?」

「ぴみょーーーー(おわぁーーーー)」


 成る程これは絶叫マシン。グルグルと勢いよく回り始めた視界と、脇腹に食い込む力が強くなったヒゲオヤジの手。

 ぶん回されていた時はアナタ、こんな景色を見ていたのね、結構楽しいじゃない、次反対周りしてもらおう。

 グルングルンと変わっていくいろんな緑色の視界を楽しんでいたら、私の耳にヌシ様に怯えたお家制作隊の人達の声が聞こえてくる。


「領主さまぁ、怨まないでおくんなましぃ……」

「成仏して下され……」

「身体を張って領民を守るたぁ、なんて出来たお方か、有り難ぇありがてぇ……」

「葬儀にゃ良い酒を持ってきますんで……」


 まだ元気に叫んでるぞ、殺してやるなよ。


「ダズゲデェェェェェェェエエ!!!!」

「ぷっぴゃ(うっさっ)」


 暫くヌシ様がヒゲオヤジを持ち、ヒゲオヤジが私を持ち上げた形でぶん回された後、生も根も尽き果てたヒゲオヤジが地面に落とされた。なむあみだぶつ。


 そのあと悲鳴を上げて腰を抜かす領民の人達を、ヌシ様は片っ端から高い高いして回ったのである。みーんなと仲良くなれて良かったね、ヌシ様!


「ガォッ!(うんっ!)」


*名誉貴族 とは


 まず貴族の爵位とは、多大な功績を残した者が爵位を受け取るもので、上位下位と階級がある。位が高い方から順に。


大公→公爵→侯爵→辺境伯→伯爵→子爵→男爵

 

 男爵の下の位に、准男爵ってのがある、他にも女の人が貰う女男爵、女准男爵なんてのもある。

 基本的に名誉貴族は一代のみ、その代限りでそれ以降は平民に戻る。


 今回トレードさんが貰ったのはこの准男爵、トレードさんの一代は貴族だけど、マリーちゃんは別に貴族になったわけじゃない。


 ヒゲオヤジにあの人は偉いから、この人も偉いからって言われるけど、アリュートルチ家が偉くないので出てくる貴族は大概ヒゲオヤジより偉い。


 そもそもな話、これは別にトンちゃんに直接関係がある事ではないのでへーそーなんだ的な感想で良いのである、ぷきー。


             (トンちゃん調べ)

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