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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
43/113

43.急募: 幽霊退治系の掃除機


 みんなに一つ質問したい、学校で鬼ごっこをした事はあるか?いいや、この質問ではダメだ、学校の教室とかで鬼ごっこをした、または鬼ごっこをしている子を見たことがあるか?

 そう、今まさにその状態から抜け出せないでいる。何せ相手は人間では無い、ラジモンじゃなくバケモンの可能性もある不可思議生物……コイツ生きてるの?


 話が逸れた。今はそう、学校の机を挟んで周りを鬼役と逃げる役がぐるぐる回るが如く、正体不明のシーツお化けと私達でがっしりした執務机の周りをぐるぐる回ってる。誰か助けて。

 床を滑るどころか空中を滑って移動するお化けが右からくれば左に逃げ。


すぅーっ……

「ヒィッ」

「あっ、ぁっ、こないでっ」

「トンちゃんヤダァ……」

「ぷキュぷぅぴぷぷピー(それ私が嫌みたいだから止めて)」


 こちらを弄ぶようにわざと裾を揺らすお化けが左からくれば右に逃げる。


「ヒヤッ」

「いっ、いやっ、いやだぁっ」

「トンちゃん怖ぃ……」

「ぷキュぷぅぴゃぷぷピー(それ私が怖いみたいだから止めて)」


 そんな中、ついに部屋の入り口を背にする事に成功した。お化けを睨みつけながら、三人と一匹でジリジリと後退する、マジでヒューとかいうあの野郎どこ行った。


 それでもさすが歳上、リリーを庇いながら少しずつ後退していくバリューちゃんとクロムちゃん。


「いい?あのお化け右回りか左回りでしか机からこっちに来ないからね、どっちかに移動するか、廊下に全員出るかしたらすぐに走るよ」

「リリーちゃん平気ぃ?廊下でたら、あたし達の事は気にしないで、ちゃんと走って逃げてねぇ」

「うん、ぅん……」


 あと何歩かで、リリーが部屋の外に出れる、そうしたらリリーが暫く走った後、腕から抜け出してこのお化けを倒しに来よう。そう私が心に決めた時だった。


 シーツお化けが宙に浮いた。


「……え?う、浮いて」

「ン?、うそ」

「トンちゃぁん……!」



 と思ったら飛んで空中から突撃してきた。



「イャぁぁぁぁァァァァアア!!!!」

「逃げてにげウソウソウソうそだぁァァァァアア!!!!!!」

「ヤァぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァアア!!!!!」

「プガガガガガガガガガガガガガ(ぉワワワワワワワワワワワワワ)」


 全力で走って逃げる三人、そして全力でリリーの腕の中で上下に揺すられる可愛い子豚。

 もう今日ずっと揺らされてる気がする。それにしても反応がGが飛んだ時のソレと似ている、いや、命の危険が無いのでGの方が……マシとは……やっぱり言えない…………。


 個人個人で受け取る怖さが違うのだ、恐怖を比べてはならない、トンちゃんは激しく胃をシェイクされながら一つ学んだ。ところでエチケット袋ってどこにあるかしら。


「ぁぁぁぁァアアア゛!!!!」

「くんな来んなこっちくんなコンチクショぉォォオ!!!!」

「ィキャァァァァァァァァァアアア!!!!」


 三者三様の悲鳴を上げながら屋敷の中を駆け回る三人、もしかしたら一人男の子だったのかもしれない、変声期前の。

 しょうがないよね、小さい子は男女の見分け付きにくいもんね、どんな服着てもどんな髪型でも慈しみ守るべき子供には変わりないから取り敢えずエチケット袋って貰えますかね。


 暫くギャーギャー叫びながら走っているとリリーが誰かにぶつかった。


「いたァッ!」

「おわっ、さっきから聞こえて来る不気味な声ってお前らだったのか、魔獣が吠えてんのかと思った」

「ヒューあれなんとかしてなんとか!!」

「どこ行ってたんだお前あれどうにかしろ!!」

「ぷォエ゛(ぷォエ゛)」

「はぁ!?バリューとクロムが頼りないから武器探しに行ってたんですぅー!喰らえフライパン攻撃!!」


 良くやった今までの無礼は許してやろう。ヒューくんの手から宙を舞い飛ぶくすんで錆びついたフライパン、丁度シーツお化けの顔面にクリティカルヒットしたそれは。鈍い音……おと……??


ボスッ

「「「ボスッ?」」」


ズズすーーー⤵︎ゴトンッ


「「「…………」」」

「……効いてないね」

「ぷきぴぅ(ダメじゃん)」



 そして始まる鬼ごっこ(Round"2")。


「ダメじゃんだめじゃんぜんぜんだめじゃーーーーん!!!!」

「ぜんッぜん効かねーじゃねーかヒューのアホ!!!!」

「黙れクロムのバカ!!撒いてから合流しろよ!!!!」

「助けてトンちゃぁぁぁぁぁぁあん!!!!」

「プポポポポぽぽぽぽ(ぅオオオオおおおお)」


 死ぬ、このままでは私の胃と食道と口とプライドが死ぬ。最初のキャラ付けはどこへやら、年相応の言い合いをしながらボロっちい廊下を走る四人とそろそろ吐きそうな一匹。

 そんな煩いパーティが駆け込んだのはちょっと広めの部屋、長いテーブルが置かれたほらお貴族様のご飯食べる席あるとこ。その部屋に逃げ込み扉を閉め、四人の背中で扉を押さえつける。


「やばいヤバい何アレ前に帰ってきた時あんなの居なかったじゃん怖い無理なんなのほんとムリ、ぃ、リリーちゃん大丈夫?怖かったね、ごめんね雨宿り先で怖い目に合わせちゃって」

「明らかに目玉ある位置からして身長変わんないのに靴どころか足すら無いのガチ意味わかんね、ぇ、ほんと怖いっていうかぁ、クロムとリリーちゃん的にNGなんですけどぉ?ねーリリーちゃん!」

「いや今更猫かぶっても遅いだろ」

「うるさくてよ」

「おだまりあそばせ」


 だいぶ愉快な子達だったみたいだ、それはそれとして袋が欲しい、出来れば中が見えない紙袋。いや紙袋だけでは水分に負けてしまうから二重の物を希望する。

 ワイワイと喧しくやっている中、リリーがグロッキーな私の頭を撫でながら、埃を被った長机の周りに落ちているナニカを指差す。


「バリューちゃん、クロムちゃん、ヒューちゃん」

「え?俺までちゃん付け??」

「可愛いじゃん」

「いいじゃないヒューちゃん」

「うっせ」

「これ、なぁに?」


 ティッシュ一枚かハンカチ一枚、そのくらいの大きさの白い四角い紙……?らしきものが、床一面に落ちていた。リリーの足元にも、一枚。良く見ると小さい穴が二つ空いている。


 その紙が一枚、ゆっくり真ん中から、まるで、見えない誰かの指先で軽く摘み上げられているかのように浮き上がり。


ふょん!

「トンちゃん、ちっちゃいお化けだよ!」

「プキプキキぷきゅぴー(嫌な予感しかしないわ)

「なんだ、さっきの奴より全然怖くねーな」

「これくらいだったら可愛いのにねぇ」

「ぷぴぴキュピぴぴぃ(フラグを立てるな)」 


 私より少し下、床から20センチ辺りの所をフヨフヨと飛んでいるミニお化け、君のことはティッシュお化けと名付けよう。

 小さなお目々穴をぱちぱちさせ、ふよょと少しだけリリーから離れるティッシュお化け。その一体が通った後から、一体、また一体と、床にばら撒かれたティッシュが浮き上がる。


「あーぁぁ、あ、アー、ヤダ、ムリ、それ以上増えないで、増えないでって」

「だからNGなんだって、ちょ、嘘うそ」

「……ぁ、あー、ヤバくね?」

「…………とんちゃぁん、どうしよぉ」


 どうもこうも無いわよ。ぎゅぅとまた締められる胴体、そろそろ胃が白旗をあげそう。

いち、に、さん、し、じゅう、にじゅう、もう増えんな。


 ホヨホヨフヨフヨと宙に浮き沈みするティッシュお化けの軍隊が出来上がった頃、遠くの暗がりから、大きな布の塊がティッシュお化けの真ん中に進み出てきた。


「なんで中に居んの外に居たんじゃないのふざけんな無理だってマジで無理なんだって」

「ハァワーーーー可愛くなぃこれは可愛くない、えぇ全く可愛くないから消え失せろチクショウめ」

「そのトントン火出せたりしない!?」

「トンちゃんは火なんか吐かない!!」

「ぷぴビビぴびプキャー(キラキラ(嘔吐物)なら吐けそうよ)」


 私は瀕死、皆んなで怪死、それはごめん被りたいのでぐったりとした身体から力を振り絞り、リリーの腕から捻り落ちて床に着地した。ヤダ埃臭い。

 すぐさま振り向き、リリーの脚の間を駆け抜ける。


「トンちゃん!?」


 私が今出せる全速力で、ボロっちい扉に突撃をかました。バキャメキャボキャみたいな音が鳴り、扉の蝶番と本体がリリー達の代わりにお亡くなりになった。

 埃を巻き上げながらバタンと呆気なく倒れた扉の向こうには走ってきた廊下、窓の外はまだ暗いが、雨は止んでいるようである。おぉ、頭強く打ったせいで立ちくらみが……え?あれだけ頭強く打てば当たり前だって??


 ふらふらと豚なのに千鳥足になった私をリリーが持ち上げる、だからリリー、もうちょっと揺れない持ち方無いわけ?それかお腹に負担がかからな……


「ぶぇぇ(ぶぇぇ)」

「お化け達が怯んでる、今のうちに外に出よう!」

「トンちゃん大丈夫?お家帰ったらお薬塗ろうね??」

「ビピギャゥぷぎ……(胃薬をくれ……)」

「リリーちゃんこっち!」

「うん!」


 こうして、なんかよく分からんシーツお化けの屋敷の中から、私達は全力で逃げ出したのであった。可愛い子豚の頭とお腹を犠牲にして───。





◆〜◆〜◆


 死ぬかと思ったわ。あの後屋敷から命からがら逃げ出して、愉快な三人組とはバイバイしたわけだけれども。川を遡り、私が流された辺りまで歩いて帰ってきた。リリーの家からもそんなに離れていないのに酷い目にあったわ。

 今度泳ぐ時は泉とか、お風呂とか、あるか分かんないけどプールとか、流れが無い所にしよう。そう心に決めてリリーの足元を歩いていると、リリーが夕焼け空を見上げながらこんな事を言ってきた。


「いい幽霊さんだったね」

「ぴ?ぷきゅぴきゅぷぷピーぴきゃぎゃぴきょー(は?アレのどこが良い幽霊よシーツお化け(絶対道連れにするマン)って感じじゃない)」


 頭でも強く打ったのか、いやそれは私か。だが魔獣なので少し休めばこんなに元気、勿論お腹だって全回復したから晩御飯だっていくらでも食べられちゃう。

 いやーー頑張ったからお腹空いたわ、今日のご飯はなんだろなーっと。


「リリーちょっと怖かったの」

「ぷープキプキ(あーはいはい)」

「バリューちゃんと、クロムちゃんと、ヒューちゃんね?」

「ぷきゅーピーぴきゅぴーぷキャピー(愉快な三人組だったわね)」

「影が無いんだもの、だけど優しい幽霊さんだったね」

「ぽ?(は?)」


ぽ───?(は───?)


「トンちゃん早く帰ろうよぉ」



ぽ──────????(は──────????)




ティッシュウ: 小さいお化けラジモン、シーツゥの進化前と考えられる。シーツゥの近くに多く居るが、幼体なのか別種なのかはまだ研究途中。

 食べる物は不明、中身は不明、動く理由も不明。ティッシュウやシーツゥの浮いて動く原理を理解できれば、低空飛行の乗り物を作れるのではと考え研究する人間は後を立たないが、そのうち消息も知れなくなる、何故だかは分からない。

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