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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
23/113

23.お兄様の誕生日②


『 ゲームを始める前に説明書を読んでくれたみんなへ、ラジコンモンスターの世界の"魔獣"について簡単に説明しよう!

 この世界の魔獣とは、森の中、海の中、青空と色んなところに生息しているよ!え?魔鳥とか魔魚とかの分類は無いのかって??


 …………………HAHAHA!!!!細かいことは気にしないで良いよ!そういう世界なんだ!!


 まず例として豚型魔獣のトントンを見てみよう、豚は実は猫や犬よりも賢い動物なんだ。長期記憶能力を持っていて、道が複雑な迷路を攻略したり、単純な言葉での指示を理解したり、豚同士で遊んだりするんだよ!

 それよりもっと頭が良いのが魔獣なんだ!だからご飯を食べさせて油断させたり、バトルで弱らせてからアンテナーを刺して仲間にしようね!!決して元気な状態の大中型の魔獣にアンテナーを刺しに行かないでね!約束だよ!!!!

 

 絶対だよ!フリじゃないからね!!フリじゃないからね!!!!約束だよ!!!!!!



            シナリオ担当 筋垣(すじがき)



 おかしいわね、私って今なんで怒られてるのかしら。飛び散った料理、倒されたテーブル、その裏から様子を伺うお客様方。


 パーティ会場の隅っこにお座りさせられた私ことトンちゃんは、今怒りで髪の毛だけでなく髭まで逆立ったヒゲオヤジから理不尽なお説教を受けている所である。


「ナンッッッッッコノブタッッッ!!!!!!!」

「ぴきゅーきぴきゃー(人間の言語話して)」

「バケッッッッコレッッッッッ!!!!!!!!」

「ぷゃぷゃぽぽぷぃ(私のお友達よ文句あんの)」

「コブタァッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

「ぴゃっきゅきゃ(きったねっ)」


 びゃびゃびゃと唾を飛ばしながら人語では無いなにかを叫ぶヒゲオヤジから距離を取る、きちゃない、唾きちゃない。

 というか、私なんも悪いことしてなくない?ただ良いよって言われたからお友達連れてきただけじゃん??理不尽じゃない??訴えたら勝てるのでは????ついさっきまでの私の行動を思い返してみる。



〜*.㌧ちゃんダイジェスト.*〜


 森にヌシ様を呼びに行って。

(2.5メートルの大型熊(?)魔獣)


 背中に乗せてもらって走ってきて。

(自分の手元からではない段々と大きくなる振動に気づいたティンパニー係の正気が削れ、迫り来る熊の影にティンパニーに自らの頭を打ち込み現実から逃避)


 演奏が終わるまでちゃんと大人しく待って。

(指揮者がこちらを向くまで、最後尾の大人は心が激しく締め付けられた、恐怖で)


 ちゃんと挨拶もしたのに。

(ヌシ様の雄叫び、これにより客人の三割の腰が抜ける、一割が失神する事態が発生)


〜㌧ちゃんダイジェスト終了〜



「ぷきゅきょ?ぴきゃきゅきょきょ??(ほらね?なんにも問題なくない??)」

「コノブタァッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」


 ハイ勝訴。ギャンギャン汚い声で吠えているヒゲオヤジから目を逸らし、既視感ありありのテーブルバリケードの後ろで震えているお客様に声をかけに行っているテンションが上がりまくりのヌシ様の方を見る。

 

「ガガグァ?ゴァガガァ??(こんにちは?こんにちは??)」

「ヒィッ!」

「ママー、この魔獣おヒゲはえてるー」

「コラヤメナサイッ!!」

「グァァアウゴガァ?(お友達になろうー?)」

「アッ、アッ、タスケテッ、タスッ」


 ほらもうあんなに仲良く……なれてねぇな。バリケードの上から覗き込み、鋭い牙の並んだお口を大きく開け手軽に恐怖をお届けしているヌシ様。

 なんという素敵なお手軽お気軽恐怖体験アトラクションでしょう、ふわふわ髭根のお髭が子供には人気のようです。


 タキシードやドレスを汚しながら地べたに這いつくばり逃げようとする大人と、危険がないことを理解したのか、積極的にヌシ様の近くに寄っていく子供。

 枝三本も握り折らなくなったし、細い枝木の束を抱き締めてもグシャってならなくなったし、怪我をさせる事はないだろう。たぶん。


 キャッキャと人間の子供と戯れるヌシ様を微笑ましく見ていたら、いつのまに寄ってきたのかしゃがんだリリーに頰をつつかれた。そちらを向くとシャスタお兄様も居る。


「トンちゃん、お友達ってあのクマさん?」

「ぷぅき(そうよ)」

「おなまえ教えて?」

「ぷきき(いいよ)」


 差し出された画板の紙に、首のリボンについているクレヨンをみょんと伸ばして『ヌシ様』と書く。書いてから顔を上げると、神妙な顔でこちらを見つめる兄妹。

 なによ、安直なネーミングだけど『トンちゃん』よりはよほどマシだと思うわよ私。

 紙をめくり、続けて書いて会話をする。

 

「トンちゃん、ヌシ様は森のヌシなのかい?」

『ヌシさま は ヌシさま』

「へぇー、ヌシさまなんだ」

『シャスタ に しょうかい する』

「僕のために?」

「ぷき(そう)」


 ついでにヌシ様に人間の友達を作ろうかと、キノコの苗床もやってるし。

 人間と仲良くなるのには何をしたらいい?って質問をされ、お母さんと(お父さんと)いっしょ的な挨拶を教えてみたらお気に召したようで、こんにちはーこんにちはーと会場のバリケードの裏に潜む人を巡って無差別挨拶を繰り返すヌシ様。


 これ以上大きいお客様の心の柔らかい部分にトラウマを植え付けるのもアレなので、ヌシ様を開けた会場の真ん中に引っ張ってきてお兄様とご対面させる、勿論私は通訳だ。

 怯えず怖がらず、まっすぐにヌシ様を見上げるちょっと緊張している顔のお兄様と、笑顔(おそらく)で見つめ返すヌシ様。会場が緊張に包まれる中、多分この世界で初めての通訳付き魔獣(森の主)との対話が始まった。


「この度は、僕の誕生日パーティーに参加していただき、ありがとうございます」


「ガガグァぅがぁ?(たんじょうび?)」


 おっとそこからか。主様に説明する間を持たせるためお兄様への返事を紙に書いて、見せた。

『おまねき ありがとう』


「ぷゅぴゅきゃきぃききぃ(プレゼントがもらえる日よ)」

「ガァギァゥル?(プレゼントって?)」


「楽しんでもらえると、あ、魔獣へのおもてなしってどうすれば良いかな、えっと……」

「ぴきゅーピキききゃ(なんかモノあげるのよ)」

「グルルゥァゥウ(なんかあげる)」


 プレゼントさえ渡してしまえばこっちのものさ、えーと、背中に生えてるキノコを渡させれば良いか。更にクレヨンで書き書きしてっと。

『おくりもの もってきた』


「ご飯はお肉……で良いのかな、え?贈り物??」

「ぷきゅー(キノコね)」

「ガォォォオゥア!(これあげるねー!)」

「わ、あ、有難う御座います……?」


 ラウンドガールの如く画板を上げ、会話を補助する私。控えめに言って天才ではないだろうか私のこの軌道修正力は。

 ヌシ様が自分の背中から苔ごと毟ったキノコを両手で受け取るお兄様、パラパラと周りから聞こえ始めた拍手、そうよもっと私を褒めなさい。えっへん。


 鼻を鳴らして胸を張っていると、いきなり私の身体が逆さまで宙に浮いた。残念ながらリリーの身長より高いしシャスタお兄様はヌシ様とシェイクハンド……爪掴んで握手してる。それと、私の尻尾の付け根が超痛い。

 手足をぶらりと下げた状態でくるーーーーりと回転した後に見えたのは、バケモじゃなかった、ヒゲオヤジのもっしゃりした髭。


「ぴきー!ぴきょきょきー!!(なによー!おろしなさいよー!!)」

「子豚、アレは、攻撃してこないんだな?」

「ぷきゅぷきゃぴきゃぷきょ(誰が力加減教えたと思ってるの)」

「おとうさまぁ、トンちゃんおろしてあげてよぉ」

「なら良いんだ、ならば、なぁ子豚?ここは領主であるワシも森の主に挨拶すべきだと思わないか?そう、町の主として」

「ぶっぎーびぎぴげ、ブギょ!(かってにすれば、イテッ!)」

「トンちゃん!だいじょうぶ?いたい??」


 突然ヒゲオヤジから手を離された私はニュートンの法則に従って地面に頭から激突した。

 あっててー……許すまじヒゲオヤジ、着地する間もなく勢いよく落ちて地面に頭の天辺をぶつけてしまった。そんな私を気遣うように頭を撫でつつこの隙にアンテナーを刺そうとしてくるリリーを華麗にあしらい、気合を入れて肩をいからせヌシ様の方へと歩いて行くヒゲオヤジの背中を見送る。



 そしてお兄様の隣に立ち、偉そうにエヘンと一度咳払いをして話し出そうとしたヒゲオヤジ……


「えー、本日は我がアリュートルチ家の長男であり、我が息子であるシャスタのぉぉおぉぉぉおおおおお!!!?!?」


 ……の両脇に大きな爪を差し込み、ヌシ様が勢いよく持ち上げた。


「グガァァァァァ!ガルォォォ!!(仲間見つけたぁ!おヒゲが一緒!!)」


 そう、あの有名なナァーーーーツゴンニャーーーーである。ジャングルの白獅子の漫画の方でも良い。



 草生える。これはサバンナも草原に……元々草原だわ。お兄様が心配そうに、ヌシ様に高い高い状態でその場でぐるぐるされるヒゲオヤジと、私とを交互に見てくるので画板にさっさとヌシ様語意訳結果(翻訳とは言ってない)を書いて安心させてやる。

 

『りょうしゅさま ともだち なる』


「ウワァァァァァァァァァァアアア!!!!!!!!」

「そっかぁ、お父様とお友達になったんだね、良かった」

「ぷきゅぷき(マジウケ)」


「タスケェェェェェェェェェェエエ!!!!!!!!」

「グァァァアアアギャァガァァァア!!(ボクの仲間みつけたよートンちゃんありがとうー!!)」

「スッゲー、こいつヌシさまっていうの?」

「りょーしゅさまいーなー、わたしもぐるぐるしてほしー」


「ヤメロォオォォォォォォォオオ!!!!!!!!」

「凄いよトンちゃん、ほら見て!ヌシ様の背中に生えている草花、図鑑で見た事ないものがいっぱいなんだ」

「シャスタも知らねーことあるんだな、博士みたいなのに」

「うん!まだ知らないことがいっぱいだよ!!例えばこれはね……」


「オロシテェェェェェェェェエエ!!!!!!!!!!」


 そうして始まるお兄様の授業、興味津々で周りに集まる子供達、怖くて遠巻きに即席テーブルバリケードに潜む大人たち、テンションマックスなヌシ様。

 ヌシ様が右にヒゲオヤジを振れば子供達は左に、左にヒゲオヤジを振れば子供達は右に。お兄様の説明付きでヌシ様の背中に生えている植物を見る為ぐるぐるうろうろと……こういう玩具あった気がするわ。



 暫くお兄様の授業を受けた後、飽きたのか疲れたのかヌシ様がヒゲオヤジをそっと地面に下ろした。満身創痍で膝は笑っている顔面蒼白のヒゲオヤジ、その場にぺたんと女の子座りをした。アンタ身体柔らかいのね。


「…………しぬ、か、と、おもった……」

「ぷきゅきゅぅきゅ、ききぅぴきゅ(死んでないじゃない、ヒゲも無事よ)」

「ギャァギガァァア(そろそろかえるねー)」

「ぷきー、ぷぴっぴゅー(そう、またねー)」

「またねーヌシさまー!!」

「また遊びにきてねー!!」


 みんなでバイバーイと手を振ってヌシ様を見送る。ヌシ様が遠ざかりワラワラと出てくる大人達に子供が捕まり、あんな危ない魔獣に近付くなんてと怒られ始める。私は悟った、さすが異世界、子供の危機管理能力が低い。

 しかし、確実に私の生きていた世界より、身体能力は高い。半分腰が抜けてプルプルしながら立っている親から逃げ出し、貴族平民関係無く始まったヌシ様ごっこにより走る跳ねるお友達を持ち上げてぐるぐる回る、と、激しい遊び方を始めた子供達。


 さすが異世界、チートなのはこの世界の人間の方らしい。魔獣に転生した事を恨みながら、頭の上に降ってきたリリーのアンテナーをサッと避けた。




【女神の】G.G総合 その12【箱庭(笑)】

──────────────────

42 アンテナ付きの名無し

森でバフールシーカ初めて出てきたから即アンテナー刺そうとしたら

蹴られて画面暗くなって街の魔獣病院で起きたんだけどどういうこと?


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43 アンテナ付きの名無し

ただの馬鹿で草


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44 アンテナ付きの名無し

ただの人間が魔獣様の蹴りに勝てる訳ねーだろ、弱らせるなりなんなりしてから刺しにいけ

ラジモンのレベルは上がっても主人公のレベルは上がらないからな


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45 アンテナ付きの名無し

ただの人間(餌に夢中なドラゴンの頭にアンテナーを刺しにいく)


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46 アンテナ付きの名無し

変な所で現実味出そうとすんのやめろよGG

ゲームに現実感なんて必要ないんだよ、攻撃されても大丈夫なスーパーラジモンマスターでいいじゃん



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