外伝テイル12?一匹のトントン
株式会社ガデスガーデン、通称G.G。
何故こんな会社名になったかというと、社長が最初にゴッド・ゲームズとかいうクソダサい名前を付けようとしたので、気を効かせた副社長がそっと書き換えたからである。
そんなにダサさは変わってない気もする。
ラジコンモンスター。通称ラジモン、パチモン臭のするこのゲームはそこそこ人を集め、そこそこ人気になった。しかし、一般的にはクソゲーの類とされている。
そんな会社にラジモンへのある問い合わせが殺到した、内容は。
『最初の町に、好き勝手動き回るトントンのグラフィックがある。』
『トントンを追っかけて画面下側に行ったら、変なところにハマって動けなくなった。』
『イベントかと思ってトントンにぶつかったら戦闘が始まり、技を出す間もなく逃げられた、もう一度ぶつかってもアンテナーも刺せずに逃げられた。』
『最初の町のトントンなに?』
こんなのが沢山来てしまった。しかし、製作陣はそんな動き回るトントンを作った記憶は無いし、プログラムを組んだ人間は全員頭を抱えた。
嘘だと良いなと思って会社に置いてある機器でラジモンを立ち上げると、アンラッキーな事に動くトントンがちゃんと居た、最初の町の担当者は再度胃薬を飲んだ。
「まずバグが本当か追っかけてみよう……無理無理無理捕まらない速いぞこの豚!」
「代われ俺がやる、くそっ、なっ、そこは通れない筈だろ!?」
「まぁ代わってみろよ、すぐに捕まらないなんで店内まで入れてるんだよ!!」
「次やりたい」
「いや次俺に貸して」
ギャイギャイ騒ぎながらバグで動くトントン、略称バグトンを追いかける製作陣。
だが一向に捕まりゃしないし、下の道に入ると木陰に引っかかって動けなくなるし、何故か店内で追いかけ回すと入れた覚えのない店員のセリフで怒られた。なんで喋るの怖い。
暫くみんなで遊ん……調べたあと、プログラムコードを確認したが、配信ギリギリで作り終わったコードなんてスパゲッティどころかグッチャグチャのゴッチャゴチャな配線コード並なので、直すのは早々に諦める事にした。
プレイヤーのストーリー終了後に通行できるようになる木陰に引っかかる所だけ、奇跡的に直せた。
直した後、みんなで椅子を持ち寄り、反復横跳びを繰り返すトントンのグラフィックを見て口々にこう言った。
「そういう仕様って事にしよう、おもろいし」
「そうだな、そういう仕様だ、一匹ぐらい好きに動くラジモンが居ても良いだろ」
「うんうん、ラジモンだって生きてるんだから、一匹ぐらい動く奴がいたっていいよ」
「そうだよな、そういう仕様なんだよ、最初からこうしてたんだ」
「ぜんッぜん捕まんねぇ!!!!」
そしてゲームの次の更新時、こんな文章が追加される事となったのである。
[【アップデート内容】
・ラジモンのグラフィック修正
・超高級大ナッツ使用時の増加値修正
・その他細かな不具合修正
【注意事項】
最初の町、チュートリアで動くトントンのグラフィックはそういう仕様です、お問い合わせはお控え下さい。 ]
外伝までお読み下さった優しい 読者様方 へ
以上で、TonTonテイル外伝は終了とさせて頂きます。コメント、ポイント、ブックマーク、いいね等の皆様からの心温まる評価をありがとうございます。
そして、異世界転生のタグを付けながら、異世界転生で無かったことをここにお詫びしたいと思います。
異世界転生モノを期待して読み始めた読者様方を騙すような形になってしまい、誠に申し訳ありませんでした。
作品の進め方と、無理矢理な設定により、異世界転生が一番近い形でしたので、こちらのタグを使用させて頂きました。
この度、めでたくもTonTonテイルが完結致しましたので、胸を張って、異世界転生詐欺物と名乗らせて頂きます。
転生者で無かったトンちゃんは、おそらく、この先もリリーと一緒にあちこち走り回って、彼女にとってはゲームの世界、と思い込んでいるこの世界で生きていくでしょう。
読者様方が過ごす日々の暮らしの中、そこかしこに居る子豚のマークや絵、豚のグッズが、トンちゃんに見える呪いにかかって下されば幸いです。
異世界転生詐欺作者 かもねぎま




