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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
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外伝テイル6.ゴマもち奮闘記


 誇り高き草原の民ハンガリアン、それはボクの種族名でち。マリーという人間の女の子に捕まって、ボクは誇り高き草原の民ハンガリアンから、マリーご主人の警備隊隊長ゴマもちになったのでち。


 ご主人様が大きい知らない人間に攫われた事もあったけど、ボクより大きくて足が速いトンちゃんと力を合わせて、なんとかご主人様を助ける事ができたんでち!


 でも、知らないお家につれられていったら、トンちゃんとあんまり会えなくなったでち。悲しいでち。

 でもチャンスだと思うでち、今度はボク一匹でご主人様を守れるようになるよう修行するんでち!!


「ヂヂッヂィ!!(不審者でち!!)」

「あいてっ、マリーお嬢様、ゴマもちを退けて貰っても良いですか?」

「ごめんなさいロータロス先生、ゴマもち、この人は私の先生だから弓を打っちゃダメよ」

「ちゅぅチチィ……(ごめんなさいでち……)」

「まいったな、指から血が出ている」

「ロータロス様、急いで救急箱を持って参りますので、よければこちらのハンカチをお使い下さい」

「ではお願いしましょうかね」


 どうやら悪い人間じゃなかったようでち……。ご主人様とよく一緒に居る人間に、ボクが悪い事をした時に入れられる籠に入れられて、机の上に置かれてしまったでち。

 ボクが悪いことをしてしまったから、ご主人様が悲しそうな顔をしているでち、ごめんなさいでち…………。


「申し訳ありません先生、私のゴマもちが……」

「ううん、これはなかなか血が止まらないな、謝罪というものはとても大事であることは、商人の娘ならば理解しているだろうマリーお嬢様」

「はい……人に怪我をさせたのは、自分のラジモンの躾をできていない私の責任です………」

「そうだ、ならば何をして謝罪をする?」

「ええと……被害を受けた当人への口頭での謝罪と、被害によっては補填のためと、双方が合意する慰謝料の支払い…………」

「なんと!あの黒鴎商会のお嬢様とあろう方が、金で全てを解決しようとするとは!!」

「えっ、私、そんなつもりじゃ」


 ボクが悪い事をしたのがいけないんでち、ボクが罰を受けるでち、ご主人様は何も悪くないでち。

 籠を揺らして叫んでみたけど、悪そうな人間はご主人様の手を掴んで、ご主人様を攻撃しようとしているでち。いつも側にいる人間がどっかに行ってるでち!トンちゃんが言ってたピンチってやつでち!!


「なんと嘆かわしい、貴族の事を何も理解していないのですね、でも大丈夫ですよマリーお嬢様」

「違うんです……ほんとうに申し訳ないと…………」

「このロータロスが貴族式の謝罪を丁寧にお教えして差し上げましょう、まず……」


バァン!!

「御機嫌ようロータロスさん、私の娘がお世話になっております、マリー、お勉強は進んでいるかい?」


 大きな音がして部屋の扉が開いて、ご主人様のお父さんが入ってきたでち。ここから出して欲しいでち!ご主人様じゃなくてボクがちゃんとごめんなさいしなきゃないでち!!


「お父様」

「こ、これはリマ・トレード様、ご機嫌麗しゅう、マリーお嬢様はとても物覚えが良く……」

「先程、娘のラジモンがロータロスさんの指を怪我させたとのことで、大変失礼致しましたトレード家の主人として娘のラジモンの不始末を謝罪いたします」

「いいんですよ、指先を少しばかり、ね」

「つきましてはこちらのナンデモナオール薬で手当てをさせていただきたいと思いまして、お手を出してくださいロータロスさん」

「じ、自分で塗りますから、黒鴎商会を持つトレード様の手を煩わせるほどでは」

「おや、侍女がハンカチをお渡ししたと言っていましたが、血が綺麗な赤色なんですね、羨ましいです、この血の量ですと随分と大きな怪我をされたようですねぇ……」


 ご主人様……出して欲しいでち……ちゃんとごめんなさいするから籠から出して欲しいでちぃ…………。

 情けないけど伏せてぺしょぺしょ泣きながら、困った顔をするご主人様を見るけど、ご主人様はオロオロしていてボクの方を見てくれないでち。


「……はて、反対の手でしたか?怪我をしたのは」

「もういいです!ありがとうございまトレードさん、今日はこれで!!」

「まぁお待ち下さいロータロスさん、前々から妻も貴方とお話をしてみたかったそうなんですよ、今日は早めに娘の勉強も終わったようですし、良い機会じゃありませんか、どうぞこちらへ、おもてなしさせて頂きますよ」

「ひ、ぃ」

「マリー、ゴマもちと一緒にお部屋に行って休んでいなさい、私はロータロスさんとお話しをしているからね、オヤツを部屋に運ばせるからゆっくり食べるんだよ」


 部屋の扉が閉まって、悪くなかった人間と、ご主人様といつも一緒の人間と、ご主人様のお父さんが居なくなったでち。ボク、まだ悪くなかった人間にごめんなさいしてないでち。

 キューキュー反省の意を示していたら、ご主人様が籠から出してくれたでち、出すのがちょっと遅いでち、もう悪くなかった人間がいなくなっちゃったでち。


「ゴマもち」

「ちちぃ!キュッキュキィヂュチッ……(はいでち!ちやんとごめんなさいするでち……)」

「お父様、すっごい怒ってたね」

「ちちぃ?(そうでちか?)」


 人間の事はよく分からないでち、結局、悪くなかった人間はご主人様のところに来なくなったでち。まだゴメンなさいしてないのにでち。

 それと、ご主人様と一緒にいる人間が二人に増えたでち、新しい方の人間に、よくオヤツを貰って、そのあと背中をつつかれるでち。なにしてるでち?


 とにかく、今日も今日とて鍛錬に励んで、今度こそ一匹だけでもご主人様を守り抜くでち!えいえいおー!!


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