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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
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外伝テイル3.シェイナの結婚



 私シェイナ!シャスタ・アリュートルチ坊ちゃまのお付きとして、帝都のなんか凄い研究室が並んでる所へ来たの!高給取りの旦那様探して日々奮闘しているわ!!

 だけどシャスタ坊ちゃまったら、お食事をとる事以外はほぼ全部自分でしてしまうから、私の存在意義がご飯配膳係しか無くなってきたの。


 これではクビを切られて出会いも無くなり、旦那様候補を捕まえることができなくなっちゃう、急いでアリュートルチの奥様にお手紙を送り、坊ちゃまの世話係をしつつ坊ちゃまと暮らすここ、研究棟で働かせて貰えないか打診したわ。

 すぐに許可をもらって、研究棟の人事の人に説明して、面接も受かって職場の人の白衣の洗濯物の回収や色々な荷物の運び込みなどの仕事を貰えたの!


 ここに来て私気付いたの、未来の私の旦那様候補に必要な条件を満たす人って、ただお金をたくさん稼ぐだけの人じゃ無かったのね……。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 父からは、まず第一にシェイナの事を考えてくれる人を選びなさいと教えられ、母からは、恋人にすら報連相が出来ない男は絶対に仕事も御粗末だから止めておけと言われ続けた。

 そして私は、今、ウエディングドレスを着て自分が選び、また、選ばれた愛しい人の隣に座っている。


 シャスタ坊ちゃまが奥様からのお祝いの言葉を読んで下さる中、私の伴侶となるルイスさんに背中をさすられながら両親と一緒に号泣してる、無理、涙出る。


「『───結婚式に出席できない不甲斐ない雇い主で申し訳ない。アリュートルチ家一同、シェイナ・ハンゾンシュの結婚を心から祝福しています、幸せになって下さい。グレイス・アリュートルチ』アリュートルチ家からは以上の言葉を贈ります」

「お゛く゛さ゛ま゛ぁ゛……ッ゛!」

「シェイナ、せっかく綺麗にしてもらったのに化粧が落ちてしまうよ、目を擦るのはやめよう、レースの手袋で化粧の粉を取ってしまうからやめようね」


 しゃくりあげる私の手から、白いレースの手袋を抜き取るルイス、彼は植物課の中でも一番下っ端らしくて、自分の研究より雑用してる時間の方が多いぐらいの人だった。



 はへー、はへーと鼻で息ができないから口で呼吸をする私に、ちり紙を渡してくれる。優しい。落ち着いたところを見計らって司会の人が私にマイクを渡してきた。


「では花嫁のシェイナ様、何かお言葉を」


 それを受け取って立ち上がり、ルイスのご両親、同じ洗濯物回収係のおばさま達や、ルイスと同じ植物課、ほかの課の研究者達へとこう話出した。


「ルイスは、他人の事を思いやれる人です」

「シェイナちゃんなんで俺じゃダメなんだー!ルイスより稼いでるのにー!!」

「黙ってろってバカッ」

「シャスタ様のお世話係として帝都に来てから、右も左も分からない私に、研究棟の人の中で最初に声をかけて下さいました」


 話しているうちに、落ち着いていたはずの涙がまたぼろぼろと流れ出す、嬉しそうにしている両親の方を見るともうダメだった。


「私が、名前も顔も知らない奴の、適当に洗濯に出してる靴下がひっくり返ってるのなおしてたら゛、て、つだって゛、く゛れ゛て゛」

「わかるー!」

「七割ひっくり返ってるー!」

「せ、洗濯、機、ある゛から゛、ふく、の゛、そでとか、も゛、ぬ゛れ゛てる、と、なおすの、たいへん゛、て゛」

「し、シェイナ様?もっと、ほかに微笑ましいエピソードなどは」

「なん゛て゛、なま゛え゛も、しら、しらない゛、よ、な、ひとの゛、せん゛た゛く゛、して、ん゛、だろっ、て゛」

「せめて白衣と分けて出して欲しいわよねー!」

「シェイナちゃん頑張れー!!」

「な゛の゛に゛、しご、と、いがい゛の゛も゛、オイ゛、とか、ざつよ゛う゛、と゛か、いわれ゛、て゛、や゛ら゛さ゛れ゛」

「いやだそれは知らなかったわ、やけに洗濯物持ってくるのが遅いなと思った時あるけど」

「そういえば郵便物も持っていくのシェイナちゃんが多かったわよね、しかもご指名で」

「ここで一番偉い奴は誰だ」

「お、お母様お座り下さい、おちついて」

「か、課長゛、の゛、お゛ちゃ゛の、このみ゛、と゛、か゛、し゛ら゛な゛い゛……っ゛!」

「仮にも部下の結婚式なんだ、どうせ出席してるんだろう、課長という役職名の奴ごと出てこい、どうした、私達の大事な娘を顎で使っている奴は、顔を見せてみろ」

「な゛ん゛て゛、けん゛きゅ、しょ゛く゛、の゛、おん゛、な゛、のほ、が、え゛ら゛い゛、から゛、こ゛はん゛、か、い゛に゛、い゛か゛さ゛れ゛」

「研究職に就いている者は洗濯をする職より偉いらしいな研究者様」

「いいいいいえそんな事はありません御義母様」

「この年になっても学ばされるよ、国に囲われている者は偉いな、何もしなくても不思議と日々清潔な服と食事がその辺から沸き出てくるぐらい偉いらしい」

「し゛む゛の゛しょ゛る゛い゛と゛か、かた゛つ゛け゛ら゛れ゛る゛わ゛け゛な゛い゛……ッ!!」

「帝都では事務職も偉いのか」

「奥様!困ります奥様!飾りの鎧の弓は取らないでくださ奥様!!困ります!困ります奥様!アー困ります!!おやめください旦那様矢を渡さないでください!矢をつがえないでくださァーーおくさまァアーーーー!!!!」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 泣きすぎて頭が痛い、昨日はよく分からないうちに式が終わっていて、最後の方はあんまり覚えていない。お母さんが辛くなったらいつでも帰ってきなさいって言ってくれて嬉しかった。

 翌日から研究所の人達がなんとなく優しくなった気がする、ルイスも自分の研究が上手く進むようになったらしい。


 さ!今日もシャスタ坊ちゃまにちゃんと三食ご飯を食べさせなきゃ!!坊ちゃまについてきて良かった!私、今とっても幸せよ!





シェイナの父: どちらかというと主夫寄り、最近庭にシェイナがくれた花の種を植えたらしい。


シェイナの母: どちらかというとキャリアウーマン寄り、最近趣味で弓矢を揃え始めたらしい。

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