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TonTonテイル  作者: かもねぎま (渡 忠幻)
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外伝テイル2.ヌシ様の夢



 ずっと一匹ぼっちだった。ご飯が沢山生えてて、キレイな飲み水もあって、でも、ボクと一緒の生き物は居なかった。小さい生き物はすぐに逃げるし、中くらいの生き物もすぐに逃げる。

 でも、二本足で歩く生き物だけは違った。ちゃんとボクを見て、お話してくれた、そのあとすぐに逃げちゃったけどね。ちょっと小さいのと、大きいのと二匹居た。


 身体が同じならもっとお話ししてくれるかな、食べた土で二本足を作って歩いてみた。逃げられた。


 二本の手もあればお話ししてくれるかな、食べた土と木で二本の手を作って振ってみた。逃げられた。


 頭と目があればお話ししてくれるかな、食べた小石と土と植物で頭を作ってペコリとしてみた。逃げられた。


 しまったお口が無ければ話せないね、食べた石と木と植物でお口を作ってお話ししてみた。逃げられた。


 どうやら二本足の生き物は、ボクが住んでるところを"モリ"と言っているみたいだ。モリの生き物のなかでも、トントンと一番お話ししているみたいだ。

 いいな、ボクもお話ししたいな。ふわふわしていたらお話しできるかな、ピコンとしたお耳があればお話しできるかな、小さな尻尾があればお話しできるかな。


 食べた草と苔と土と葉っぱと根っこで、ふわふわのところをいっぱい作った。だけどみんな逃げちゃった。



 他にどうしたらお話しできるかなぁ、そんな時、トンちゃんと出会った。


 一瞬で目の前からいなくなっちゃったけど、キレイなヒラヒラを落としたから、追いかけなくちゃと思った。

 追いついたら、目から水を出していた、もしかしたらボクも目から水を出せば、二本足で歩く生き物と仲良くできるのかなって思った。


「タベナイデ……ワタシ……オイシクナイトントン…………」

「まってよぉ、これ落としたでしょぉ!」

「これは……続き歌わねばならんやつ……?」


 それから、二本足で歩く生き物は"ニンゲン"っていうんだって教えてもらって、ボクが作ったふわふわと一緒のニンゲンも居て、みんなお話ししてくれてとっても嬉しかった。




 今は、トンちゃんが住んでいる所の近くで、日向ぼっこをしてぽかぽかしている。最近、ドーベリーと呼ばれている中くらいのともお友達になった。

 もうすぐトントンボキン?とかを使って、ボクの新しいお家を作ってくれるらしい、嬉しいな。


 三匹とボクで転がっていると、小さいニンゲンのシャスタが何かを持って近づいてきた。


「こんにちはヌシ様、ちょっといいかな?」

「ぐぁぅ(いいよ)」

「研究所の人たちにね、ヌシ様の事を話したら背中に生えてるものを採取してきて欲しいなって言われたんだ、ちょっと苔とか草を貰ってもいいかな」

「きゅぐる?ぐあぅ(触るの?いーよ)」

「ありがとう、背中のところのを貰うね」


 シャスタはよくボクの後ろ側を触るけど、いったい何をしているんだろうか、やっぱり生やしたふわふわが気持ちいいのかな、だったらいいな。

 後ろ側を触り終わったのか、今度は変な袋から筒みたいなのを出して持って見せてきた、キラキラしてキレイだね。でもなんでドーベリー達は突然逃げて離れたところでお話しを始めたんだろう。


「ワンワンワンワンワンワン!!(逃げろお前刺されるぞ!!)」

「ワウワウワウワウワウワウ!!(痛いんだぞそれ痛いんだぞなぁ!!)」

「バウワウバウワウバウワウ!!(止めろって逃げろって聞いてんのか!!)」

「ありがとうヌシ様、痛かったら止めるからすぐに言ってね」

「ぐぅ、ぎゅるるぅ(うん、わかったぁ)」


 筒の先にある細いところが、腕にブスッと刺された、反対の先にあるところをシャスタがギューっと引っ張ると、中に不思議なモノが出てきた。


「ありがとうヌシ様、これで終わりだよ、ヌシ様の体液は紫色をしているんだね不思議だなぁ」

「キュゥゥゥ?(ふしぎ?)」


 ふしぎってなんだろう、でも、喜んでくれてるみたいだからいいか、これもトンちゃんの言っていたプレゼントになるんだろうか。

 筒の中の変なモノを、おひさまに向けてみたり、振って揺らしてみたりしてたシャスタ。その後ろから、トンちゃんがヒゲオヤジと呼んでいる、ボクにそっくりな大きなニンゲンがやってきた。


「ご機嫌麗しゅう、チュートリアの森のヌシ様、いい、立たんでいい、そのまま寝ていてくれ」

「ガァァァア(こんにちは)」

「お父様、今、研究所の人から借りてきた大型魔獣用の注射器を使って、ヌシ様の体液を貰ったんだけどね、ほら見て!スライムみたいな半透明の粘性の液体で、人間の血液みたいに凝固する素振りを見せないんだ」

「シャスタ?今なんて言った??」

「スライムみたいな半透明の粘性液体」

「その前だ」

「ヌシ様の体液をもらった」

「もう少し前だ」

「大型魔獣用の注射器を使って」

「そこに立ちなさい」


 何故かボクの目の前で立つシャスタが、ヒゲオヤジとお話しを始めた、なんのお話なんだろう、ボクもお話ししていいのかな。


「もう刺して体液を取ったのか」

「はい、でもこれはキノコと薬草がヌシ様の身体に生える理由を知るためのもので」

「そんな事を怒っているんじゃない、ヌシ様が痛がって手を横にでも振ってみろ、シャスタは死んでいたかもしれないんだぞ」

「でもヌシ様はいいよって腕を出してくれて」

「魔獣が人間の言葉の内容全てを正確に理解できているわけがないだろう、なんのためにアンテナーとラジコンがあると思っているんだ」

「はい……」


 どうやら、怖いお話をしているみたいだ、ボクも聞いてみよう。シャスタの隣にお座りして、一緒にヒゲオヤジの話を聞いていると、ドーベリー達も戻ってきて一緒にお座りし始めた。


「いいか?今回はヌシ様の痛覚が無かったのか痛がって暴れなかったようだが、野生魔獣に今後こんな危ない事をするんじゃないぞ」

「はい……」

「がう(うん)」

「野生魔獣に何か実験をする時は大人のいるところで、アンテナーを刺して、緊急停止ボタンを押してからにしなさい、わかったなシャスタ」

「はい……でも、ヌシ様の背中にキノコと薬草が生える理由がわかったら、量産できるし、チュートリアの新しい産業に」

「そんな事のためにお前が死ぬ必要なんてどこにもないと言っているんだ!!」

「ぐぉぅ(おおぉ)」


 ヒゲオヤジが突然大きな声を出したから、びっくりしちゃった、シャスタもびっくりしている。

 ニンゲンの話はさっきまで小さかったのに、大きな声を出すこともあるんだなぁ、不思議だなぁ。ボク、やっぱり、ニンゲンと仲良くなれて良かったや。




◆〜◆〜◆〜◆〜◆


 やはり帝都にあるだけあって研究所の人間は信用ならん、ワシの息子にあんな危険な魔獣の血を取ってこいなどと危険なことをさせおって。

 帝都の学校になんて行かせると言うんじゃ無かった、大体学ぶところならばチュートリアにもあるだろうに全く。


 シャスタがヌシ様から採った草やらキノコやらと一緒にバカデカい注射器を梱包し、ワシの息子をよくも危険な目に合わせたなと怨みつらみその他八つ当たりを書いた手紙を貼っつけて速達で送った。


 そうしたらすぐに返事が来た、カモライン二羽の脚にくくりつけられた、ちょっとしたバームクーヘンぐらいの太さはあろう巻き物が返事として来た。意味がわからない。


「……ふ、フン、どうせくだらん言い訳でも書いてあるんだろう、悪魔どもがどう喚いているのか見てやろうじゃないか」


 巻き物を開くと、いやに達筆な文字で文面が綴られていた。


[ チャーリー・アリュートルチ様、此度は我々帝都研究員の配慮と熟慮が足りず、御子息を危険な目に合わせてしまった事を深くお詫び致します。


 文面で謝罪したとて到底許される行為とは思いませんが、我々一同深く反省し、幸運なことにシャスタ・アリュートルチ様に外傷、精神的苦痛などが無く採取を終えられた事に深く安堵いたしました。

 付きましては今後、御子息が我々の研究所で過ごす際には……………………………………………………]


 

 つらつらつらつら書かれているのは、シャスタの研究がいかに危険が少ないモノだとしても手の空いている者が必ず同行し、野生魔獣が相手の時は採取等の危険なところは自分達が代行すること。


 学園に通う際には必ず勉強を教え、優秀な成績を約束すること。シャスタは物事の理解力が高く、すぐに学校の勉強は終えられるだろうとのこと。


 また、研究棟で部屋の貸し出しはするが家賃も光熱費も何も必要ないとのことと、教科書のうち資料集など代金も慰謝料代わりとはいかないが自分達に出させて欲しいとのこと。


 ヌシ様と呼ばれる大型魔獣はとても興味深く、シャスタを危険な目に合わせないためにも、これからの研究の発展のためにもヌシ様への接触の許可が欲しい等々。


 これがあと何ミーテル書かれているんだ、いい加減読むのもうんざりしてきたんだが。

 眉間を揉むために片手で巻き物を持ったが、床にゴトンと落としてしまった。


 いかんいかん、どれだけ気に入らなくとも帝都のお偉い研究室からの手紙だ、拾おうと下を向いたら、子豚が巻き物に蹄をかけていた。そしてコロン、と一回転がし、巻き物を広げる。


「止めろ子豚」

「…………ぷききっ!」

コロコロコロコロコロロロロロロ


「止めろ子豚転がすなやめろ止めろと言っているのが聞こえんのか待てこら子豚!!」

「ぷぴきゃきゃぴキャッキャッィ!」

ロロコロローー!!


「子豚ァーー!!」




研究所内の会話


「有難いことに、チャーリーさんには定期的にキノコを持ってきてもらっているんだけども、チュートリアの森の中に決まった群生地とかあるのかい?滅多に見ないモノの筈なんだよ」

「確かに森の中では自生しているのを見たことがありませんね、キノコも薬草もヌシ様の背中に生えていました」

「ヌシ様?…………大きな樹木とか超大型魔獣の死骸とか、特別な場所なんだろうか……今度チュートリアに帰った時にシャスタくんがわかる範囲でいいから、調査してみてくれるかな」

「わかりました!やっぱりサンプルとか持って帰った方がいいですか?」

「うん、いい返事だ、倉庫番の人に話をし通しておくよ、危険性の高い物や、高価すぎる物でなければ好きな道具を借りて調査をしてきていいからね、道具は周りに気を配って、怪我や危険が無いよう普段の採取以上に気をつけて使うんだよ」

「ありがとうございます!!」


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