【辰刻】
投稿しようと思っていたら、日付変わってました!すいません!!
『あの者たちは、汝の友人ではなかったか?』
ああ、そうだよ。
つい1,2時間前まで、教室で一緒に馬鹿な事言い合ってた奴らだよ。
「なに……やってんだよ……。」
友人が友人の首を絞めている。
「何やってんだよ茜部ェ!!!!!!」
葵木の口角から泡が零れた。
『救いたいか?』
静寂の水に包まれた世界で、龍の声だけが鮮明に響く。
「出来るのか……? 出来るか!?」
縋るように龍に詰め寄る。
『我一人では不可能だ。依り代の力が必要になる。』
「依り代…? 俺?」
『そうだ。』
「どうすればいい!? どうしたら……。」
『我が力を具象化せよ。』
「力を具象化ってどういう…………………え?」
パンッ
水の世界が弾け、現実の阿鼻叫喚が一気に流れ込んできた。
水の世界から弾かれた瞬間、生徒や教師が一斉に俺を見た。
倒れていた奴らも、ゆらりと身体を起こす。
「よりしろ……依り代だ……。」
「依り代……殺す……。」
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
「依り代は殺せ。」
「ヒッ……。」
逃げた。
あの状況で足が動いてくれたことすら奇跡といえるだろう。
バラバラだった敵意が、一斉に俺だけに向けられる。
ほぼ学校中から狙われて、校内で安全なところなんて無いだろうに、それでも逃げるしかない。
『なぜ逃げる? 逃げてどうする?』
「こんなの、逃げるしかないだろ!? こいつら、急に俺に向かってきたんだぞ!?」
『逃げては、汝の友は死ぬぞ。』
「!!」
その言葉に足を止めてしまった。
「ぐっ……。」
背後から伸びた手が首にかかる。
―逃ガサナイ。
こんな時に頭を巡ったのは、夢の中で俺に迫ったあの手。
『何故我が力を使わぬ?』
「っ、使え、んなら……とっくに、使ってんだヨ!! バカヤロウ!!!!」
肝心の使い方を一切教えもしないで何言ってくれてんだこの巨大爬虫類!!!!
『爬虫類ではない。』
そんなツッコミはどうでもいい。
「せん……じゅ……。」
「……あま……がい……。」
すぐ後ろで聞こえた声は、あまりにも聞き覚えがありすぎた。
俺の首を絞めている手の主を知ってしまった。
「ッあお、き……、あかね……べッ……。」
「殺す……ころす……。」
「ころす……依り代……殺す……。」
どうすりゃいい。
あいつの力って何なんだよ。
肝心なことは何一つ聞いてないし、教えられてないってのに。
『我が力を、汝はすでに知っているはずだ。』
「知る、かよ…そんなモン!!」
呼吸ができない。
段々暗くなっていく視界で、次々と手が延ばされる。
こぽ……――
息が出来なくて、意識が遠のいて、身体が重たい。
深い海に溺れているみたいだ。
こぽ……――
水?
遠のく意識の中で、水の音が聞こえる。
―我が力を、汝はすでに知っているはずだ。
「!!」
そうだ。
いつも、あの龍は水の中にいた。
龍の身体を覆う鱗は光を反射した海。
お前の力は。
「水。」
ここまでお読みくださりありがとうございました。
本当は日付変わる前に登校する分でしたので、今日の夜あたりに、本日分当校します。