〜一章 満・美優編 5〜
どうも、齋藤です。
一週間経たずに今回の編を書く事が出来ました!
頑張って書いたので最後までお読み頂けると嬉しいです。
では、どうぞ。
?:??
あれ、ここは何処なんだろう。
周りが真っ暗で何も見えない。
どうして僕はこんな場所にいるんだろう?
どうやってここまで来たんだろう?
…あれ?
あの光はなんだろう?
ん?誰かを呼ぶ声がする。
なんだろう、何故かあそこに行かないと行けない気がする。
行ってみよう。
3:32 美術室
「満! 満、起きて!起きてよ!」
「う、うーん」
満が目を覚ますと、そこには目に涙を浮かべている美優がいた。
そして、
「み、満っ!」
美優は満の胸に覆い被さった。
「えっ!?ちょ、八十島さん!?」
満は戸惑った。
が、よくよく考えると美優がこんなに取り乱すのも仕方がない。
二人は死神の笑い声を聞き過ぎたはずなのだ。
お互い、死んだと思っていたのである。
満の体から離れた美優は満に質問をした。
「満、どこか痛む所とかはない?」
「うーん、多分大丈夫、かな?八十島さんこそ大丈夫?」
「うん、大丈夫みたい」
お互いが大丈夫だと分かった満は、安堵で息を吐いた。
そして、満は自分のポケットからスマホを取り出し、美優と一緒に時間を確認した。
3:33
スマホのディスプレイには、綺麗に3が揃っていた。
「どうやら暫くの間、私たちは夢の中に居たみたいね」
「そうみたいだね」
「…」「…」
「…フフッ」「…ハハッ」
そして、二人は緊張の糸が切れたのか、お互いに笑い合った。
それは、死神に勝ったという事と、お互い無事であったという、二つの事でである。
「あれ、あの紙、なんだろう?」
満が椅子の上に紙切れが置いてあるのに気がついた。
「なんかビリビリに破られてるわね」
美優がその紙切れを手にして読んだ。
「『もう耐える事は出来ません。』て、書いてあるよ」
「どういう事なんだろう?」
暫く二人は考えてみたが、二人とも答えを持ち合わせていなかった。
「…何だろう、この紙。持っていった方が良い気がする」
「奇遇ね。私もそう思ってたの」
「…八十島さん、一度 隼人さんの所に戻ろうか」
「そうね、一度戻ってみましょう。もしかしたら、心配してるかもしれないし、この紙について何か知ってるかも」
そう言って二人は立ち上がり、美優は紙切れをポケットに入れ、美術室の扉まで行った。
満が引き戸に手を掛けた。
ガラガラガラッ、という音と共に扉は開き、廊下が見えた。
そして、二人は美術室を後にした。
3:34 3階廊下
「中央階段を使って2階に行きましょ」
「うん、そうしよう」
二人は中央階段に向かって歩みを進めた。
が、暫く歩いていると、奥からタンッタンッという音と一緒に、小さい音でピチャッピチャッという音が聞こえて来た。
「な、何か来るよ!?」
満が美優に警告する。
もちろん、美優もその音は聞こえている。
二人は一歩、後ろに後退りした。
どうやらその音は、この廊下の角からやって来るらしい。
暫く二人が警戒していると、その音の正体が姿を表した。
「な、何…あれ」
「分からない。いや、分かってはいるけど…あり得ない!」
音の正体は人間の様な形をしている。
しかし、お腹には何も無く、まるで抉られたようであった。
そして、血の様な赤い液体を垂らしながら歩いている。
その人間の様な何かは、小さく掠れた声で何か呟いていた。
満と美優はそんな消えてしまいそうな声を注意深く聴いた。
その声は、
「カエ…シテ………カエ…シテ………」
と、呟いていたのである。
二人は直感で、近づいてはいけないと思い、また一歩後ろに後退りした。
「あ、あれって、人体、模型だよね?」
「う、うん、多分そうだと思う」
「八十島さん、ど、どうする?」
「どうするって…逃げるしかないでしょ」
「そ、そうだよね」
「特別棟の階段を使いましょ」
「わ、分かった!」
二人がそんな会話をしている中、人体模型は二人に近づいていた。
赤い液体を垂らしながら、ずっと「カエ…シテ………カエ…シテ………」と呟きながら。
満と美優が180度回転して戻ろうとした時、タンッタンッと言っていた音が急に止まった。
思わず二人は顔だけを後ろに向けた。
そこには、人体模型が歩く事をやめ、立ち止まっていた。
そして、また一言呟いた。
「………アッタ………」
一言そういうと、なんと人体模型は二人に向かって走って来たのである!
「や、やばいっ!はやく逃げよう!」
満がそう言うと、二人とも特別棟の階段に向かって走った。
3:40 図書室前
「「はぁはぁはぁ…」」
人体模型からなんとか逃げ切った二人は、いつの間にか図書室の前まで来ていた。
「はぁはぁ…な、なんで人体模型が襲ってくるのよ!?」
「し、しかも…走ってくるなんて反則、だよ…!」
二人はそんな事を言って、図書室の扉を開けた。
3:41 図書室
ガラガラガラダンッ!
図書室の扉が勢いよく開かれた。
そして、満と美優は雪崩れ込む様に図書室に入ってきた。
「ん?なんだ?」
それに気付いた隼人は、読んでいた本を一度閉じ、表紙が見えない様に本を机の上に置いた。
そして、椅子から立ち上がり、扉の方まで歩いた。
「おぉ!君たち、生きててくれたのか!良かった良かった!」
隼人は満と美優が生きていた事に喜んでいたが、二人はそれどころではなかった。
満は自分たちが開けた扉を急いで閉じ、扉を背にしてもたれかかった。
さすがに隼人も二人の状態を見て何かがあった事を察した。
「二人とも、何があったんだい?」
「はぁはぁ…は、隼人さん…今、人体模型に…襲われ…かけたんです!」
美優が隼人の疑問に答えた。
「人体模型……あぁ、そうか。」
隼人は二人に聞こえない程度の小声で呟いた。
そして、隼人は二人に息を整えさせようと、椅子に座るように促した。
「取り敢えず、二人とも一回落ち着こう。椅子に座って座って!」
美優は自力で立ち上がり、満は隼人に手伝ってもらい、椅子に座った。
暫く時間が経ち、二人の息が整ったところで、隼人は二人に話し掛けた。
「二人とも、大丈夫かい?」
「は、はい、なんとか」
「良かった。それでなんだが、どうやら君たちの次の目的が分かったよ」
隼人はある一冊の本を取り出した。
それは、満たちも分かる本だった。
「もしかして、人体模型が次の目的ですか?」
「察しが良くて嬉しいよ」
そう言って、隼人は椅子に座り、学校の七不思議のページを開いた。
理科室の人体模型
元々理科準備室にあった人体模型。
しかし、何者かが人体模型の臓器をもいでしまい、どっかにやってしまった。
臓器をもがれてしまった人体模型は、いつしか魂が宿り、血を流すようになった。
そして、自分の臓器を探す為に学校を彷徨うようになり、人を襲う様になった。
対処法は、人体模型にもがれた臓器を渡す事である。
隼人が本を読むと、美優が一つ質問をした。
「もがれた臓器を渡すって書いてあるけど、どの臓器を渡したら良いか分からないわ」
その疑問に隼人が答えた。
「多分、心臓・肺・肝臓・胃・腎臓・大腸の6つだ」
その話を聴いた満は、一つ疑問に思った事を言った。
「隼人さん、何故その6つが無いって知っているんですか?」
「噂で聞いてね。それにこの本以外の本にも、その6つが無いと書かれていたよ」
隼人がそう答えると、今度は美優が違う質問をした。
「じゃあ、その6つの臓器は何処にあるか知ってるんですか?」
その質問に対して、隼人は悲しい顔をしながら答えた。
「残念だが、そこまでは分からない。どの本にも載ってなかったし、噂でも聞いたことがないね」
その言葉で満と美優も隼人につられる様に悲しい顔になった。
「だが、学校にはあるはずだ。そうでなくては、学校の七不思議が成り立たないからね」
隼人はさっきまでの悲しい顔から笑顔を作った。
その顔を見た二人は、一度お互いの顔を見合ってから、隼人の顔を見た。
その顔は口角が上がった顔だった。
「さて、それでは早速、二人には行ってもらいたい。何か質問があるかい?」
隼人が二人に質問があるか訊くと、満が質問した。
「隼人さん、保健室にあるあのノートに僕の姉もここにいる事が分かったんです」
「おぉ!それは良かったじゃないか!」
隼人が感嘆の声を出した。
満は気にせず続けた。
「ただ、出会う事は出来なかったんです。僕も姉も同じ保健室に居たのに」
「同じ場所にいるのに出会うことが出来なかった、か」
隼人は髭が無いにも関わらず、顎髭を摩る様な手つきで顎を触った。
そして、満は尚も話を続けた。
「姉曰く、向こうにも隼人さんがいるみたいです」
「僕が向こうにもいる?まるで、ドッペルゲンガーだね」
隼人は悪戯っぽく言うと、痺れを切らしたのか、美優が少し強く隼人に質問をした。
「隼人さん、何か知ってる事はありませんか!」
その質問に隼人は、
「すまないが、その質問の答えは持ち合わせていないよ。僕も今初めて聞いたからね」
「そ、そうですか。すみません」
美優はさっきの質問の仕方に申し訳なさがあったのか、声を小さくして謝った。
「今ここで言えるとしたら、この時空の歪みは七不思議が関係しているのかもしれない」
隼人は仮説を唱えた。そして、
「この七不思議さえなんとかすれば、お姉さんにもきっと会えるはずだ」
隼人は満に優しく言った。
それを聞いた満は、安心したのか嬉しさが口から出そうになった。
が、そんな時間も束の間、美優が更にもう一つ質問をした。
「すみません、隼人さん。あと、この紙なんですが、何か知ってるいる事はありませんか?私も満もこれを見た時、何か重要な物なんじゃないかと思ったんです」
そう言って、美優はポケットから美術室で拾った紙切れを広げて、机の上に出した。
隼人は黙読でその紙切れに書かれている言葉を読んだ。
満と美優は隼人の言葉を待った。
そして、隼人の口が開いた。
「知ってはいるが、学校の七不思議ではない」
「「えっ?」」
満と美優は同時に驚いた。
それはそうだ。
自分たちは今、七不思議をどうにかする為に動いているのに、七不思議では無いというのだから。
驚いている最中、満は口を開いた。
「じゃ、じゃあ、これはなんなんですか?」
その質問に、隼人は右手を前に出し、待ったのポーズを取った。
そして、
「今は学校の七不思議からどうにかしよう。この話はその後でもなんとかなる」
と言って、この話を終わらせようとした。
「くっ…」
しかし、美優は納得がいかなかった。
が、確かに隼人の言う通り、今は七不思議からどうにかしないといけないと思い、何も言うことが出来なかった。
「他に何か質問があるかい?」
隼人が質問を催促したが、二人は頭を横に振った。
質問が無い事が分かった隼人は、一度深呼吸をしてから、一言、二人に言い添えた。
「大変だと思うが頑張ってくれ」
隼人は椅子から立ち上がり、二人に向かって頭を下げた。
それを見た二人は、一度お互いの顔を見合った。
そして、決意を固めたのか、頷き合った。
「は、隼人さん、顔を上げてください!」
「そうですよ、お互いに協力し合うって言ったじゃないですか」
そう言われた隼人は顔を上げた。
「そう言ってくれると、こっちとしても気が楽になるよ」
そう言って、笑顔を向けた。
満と美優も椅子から立ち上がり、3人は図書室の扉の前まで歩いた。
隼人は最後に告げた。
「幸運を祈る」
二人は隼人に向かって頷いた。
ガラガラガラッ!
図書室の扉を開け、満と美優は再び暗闇の学校を歩き始めた。
「…順調だな」
お読み頂き、ありがとうございます!
次回もこれくらい早く書けるよう頑張ります。
では〜。