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22.『矛盾』

読む自己。

 翌日、何故か落ち着かなくて僕はアプリを起動したり終わらせたりを繰り返していた。


「さっさと結果教えてよ匠馬~」


 それでひとつ手前の画面に戻ったとき、彼女の名前をクリックして画面を開く。

 返事がきていないうえに『陽菜乃☆さんが退出しました』という文章が表示されていて。


「なんだ、向こうからしてくれて良かったな~」


 消して、友達登録も解除して、アプリを終わらせる。

 今回ばかりは“本気”のようだ。曖昧な状態にはさせたくなかったんだろう。

 することもなくてつまらないのでスマホをポケットにしまい外に出ることにした。


「暑いな……」


 歩いて汗でもかけば気持ちがスッキリするはずだと考えて歩いた。

 だが――


「情けない顔をしているわね」


 少し歩いた場所で彼女と出会ってしまう。壊してくれた彼女と。


「君の狙いどおり僕らの関係は消滅したよ、良かったね」

「べつにそんなつもりはなかったわよ? あの子が勝手に自爆しただけじゃない」

「それはそうかもね」


 ま、そうなるよう補助したのはこちらだが。


「関係を修復したいとは思わないのね、あのときみたいに」

「よく分からないことを言うね柳原は、自分から壊しておいて」


 昔もそうだった。彼女はとことん勝手だった。

 僕にとって彼女はただの友達、もしくは親友で、いると落ち着く相手だったんだ。

 だから言ったことが届かなかったことが悲しかったし、告白されたことがむかついた。

 誰だって恋人を求めているわけじゃない。なのにおかしいみたいな言い方をして、怒って、去って。


「どうせあのときみたいに、相手が望むならと動いたんじゃないの?」

「そりゃそうでしょ、相手の意思を無視して近づくなんて最低だ」


 だからよく考えて動いているんじゃないか。


「……ま、私だって一応悪いことをしたと思ったから、浅野君に頼んで呼んでもらったわ、そこに」

「そこ? あ……」


 なんで彼女も律儀に来るんだかと額を押さえる。

 というかあれか、匠馬の塾の友達って柳原のことか

 彼女と関わったから変な状態になったと言うのに、懲りない人間だ。


「しっかり向き合いなさい、まだ終わってないでしょう? ……私とあの子は違うのだから」

「勝手なことしやがって」

「ふふ、いいのよ、昔からそうだったでしょう?」

「だねっ、栞はいつだって勝手だったよ」

「……ごめんなさい」

「……いや、僕こそごめん」

「また今度会いましょう」

「うん、じゃあね栞」

「ええ、さようなら」


 彼女を見送ってもうひとりの彼女に向き合う。


「今日は帰らないんだね」

「あなたが女の子と喋ってたってなにも問題ないでしょ」

「そうだね。でも、その割にはどこかのお馬鹿さんは走り去っちゃったけど、あの子は誰かなあ?」

「さあ? 少なくとも私じゃないよ」


 よく言う。笑ってしまいそうだ。

 1歩、また1歩と近づいていく。その度に彼女のスカートを握る力が増していく。

 こちらを見るその瞳は揺れていて、忙しなさそうだった。


「逃げないんだ?」


 僕は正面に立って彼女の手を無理やり掴む。

 それは今までスカートを握っていた方の手。だって、スカートに罪はないのだから。


「ねえ、逃げないと抱きしめちゃうよ?」

「こんな道の真ん中であなたにできるの?」

「できるよ、ほらね」


 やっぱり柔らかい。暖かい。もっと抱きしめていたい。


「最悪だね、あなたのことを好きでもない女の子を抱きしめるなんて」

「そうかもね。でも、後悔はしてないよ? それに煽ったのは君だ」


 なんでその割には叫ぶなり暴れるなりしないんだか。

 僕も彼女も“素直じゃない”のは確かだった。


「柳原さんに聞いた、中学時代に告白されたんだってね」

「うん、断ったけどね。興味を持てなかったんだ、そういうのに」


 普通に生きられればそれで良かったのだ。

 周りがどんどんと付き合い始めても、友達が「彼女と遊びに行くから」と付き合いが悪くなっても。

 別に気にならなかった。


「じゃあどうして私を抱きしめてるの?」

「うーん、高校デビューってやつかな。ある程度は余裕があるって分かったから、友達を作ったり彼女が欲しくなったのかもしれないね。中学時代はただ生きるだけで精一杯だっただけだよ」


 なにがあったわけじゃない。

 両親だって和佳だっていてくれたし、貧乏家庭というわけでもなかった。

 おまけにどちらかと言えば、それなりに人気な立場でもあれたような気がする。

 いつも言われてた「流石、悠だな!」と。

 でも、分からなくなったんだ。なにが流石なのかということが。

 だからできる限りそう言われないよう振る舞った結果、友達は消えていってしまった。

 それは仕方ない、応えることができなくなってしまったんだから。

 

「彼女が欲しいからって好きでもない女の子を抱きしめるんだ」

「意地悪だね君は」


 好きではないのは確かだが、好きになりかけていた、というところまできてたんだ。

 それがどうだろう、彼女は去り、彼女のためとか言って別れを選択した。

 なにやってんだ、恥ずかしい。結局、惨めじゃないかこんなの。

 別れを選択したくせにその子を抱きしめているなんて。


「ふぅ、やっぱり君を抱きしめると落ち着くよ、ありがとう」

「……いまさらだけど家限定じゃなかったの?」

「……破りたくなったんだ、ごめん」


 抱きしめるのをやめてひとり分距離を取る。


「陽菜乃、チャンスをくれないか? 夏休み終了まででいい、それを超えて考えが変わらなかったら今度こそ躊躇なく距離を取ってくれればいいから。僕はもう一度、君と真剣に向き合いたい」


 矛盾が過ぎる。なにやってんだか。


「だからその喋り方格好良くないから」

「格好つけさせてよ……」

「そうだね、それじゃあ私の言いたいこと聞いてくれたらいいよ?」

「うん、言ってみて?」


 彼女は少し潤んだ目でこちらを見て――


「私、水谷悠君のことが好きなの」


 まさかまさか、ここで告白。


「はは、それならどうして退出なんかしたの?」

「それは……もう言えないまま終わると思ったから。勝手に嫉妬してキレて自爆するような子は嫌だと思ったから」

「本当に女の子は勝手だなあ……」

「……返事は夏休み最後でいいよ」

「元々、夏休み一緒に過ごして想いを強くさせるつもりだったから、今すぐの返事は無理だから助かったよ」

「……悠……ナコ見に来る?」

「うん、行かせてもらおうかな」


 彼女の家へと移動。


「にゃー!」

「よしよしっ、会いたかったぞナコちゃん!」


 なんでだろうなあ……結局、すぐにこうして暖かさを求めてしまうんだよなあ。

 ナコちゃんに触れられることが嬉しいし、ご主人さまの近くにいられることも嬉しいと思う。


「悠……私も」

「よく分からない子だねご主人さまは。昨日まであれだけ拒絶ムードだったのに」


 それでも綺麗な黒髪を撫でて落ち着かせる。


「ん……寂しかったんだからっ」

「知らないよっ、君から去ったんでしょ!」

「ばかぁ……」

「馬鹿は君だよ……泣かないでよ」

「うん……ごめん……」


 ナコちゃんの方がよっぽど優秀だ。

 人の言葉、空気に敏感で、察してくれたり優しくしてくれたり、本当にいい子だった。

 その点、ご主人さまはどうだろう。勝手に怒って距離を置いて寂しがって泣いて。

 こうして甘えてくれているときは可愛いが、毎回あんなことがあったら精神が保ちそうにない。


「ね、告白されて嬉しかった?」

「そりゃ当たり前だよ、でも、どうして急に変わったの?」

「……家に帰った後に泣いてたんだけど、そのときに分かったの。気になってるっていう領域にはもういないなって」

「僕は退屈な夏休みをどう過ごそうか悩んでたけどね。だってほら、ナコちゃんも君も……いなくなっちゃったからさ」


 僕の足に何度も体を擦り付けてる彼女に触れられないと考えたら凄く寂しかった。

 ふむ、けれどヒナについてはあまり変わらなかった気がする。それはあれだろうか、戻ってきてくれると確信したからだろうか。

 兎にも角にも、矛盾まみれなことだけは分かっている。


「……もういるから、離れないから……側にいて」

「だから何度も言うけどさ、君がしたことだからね? ……僕は去ろうとなんてしてなかったよ」

「悠、キスしよ?」

「ごめん、今の状態ではできないかな。だって僕らはまだ恋人同士じゃないし」

「なら、夏休み最後にしてほしい!」

「そうだね、告白を受け入れて僕も告白したら、おかしくないかもね」

「うん! でもその前に、夏休みを楽しもうね!」

「うん、そうだね!」


 僕はナコちゃん抱き上げてヒナに提案する。


「良くないことだと思ってたんだけどさ、やっぱり君が家にいないと違和感があるんだ。来てくれないかな?」

「あ、うんっ、行く!」

「ありがと! それじゃあ荷物運ぼうか!」


 何回繰り返すんだか分からないが、やっぱり彼女の笑顔が見られればいいなって考えてしまうんだ。

 この行動が笑顔に繋がるならもうなんでもいいと、僕はそう思った。

うん、矛盾が凄い。

設定ごちゃごちゃ。

皆はしっかり考えてから打って偉いな。

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