入学式に願いを
目を開けたら、壁が迫ってきていた。
ゴンという音とともに、額に鈍痛が広がる。
「…クッ、フフフ…!アハハハッ!」
「母ちゃん、…笑うなよ」
どうやら、開けたドアが閉まったことで俺の
額にヒットしたらしい。めっちゃ恥ずい。
額だけでなく、顔も赤くなっているのを感じる。
「いや、でもね?玄関開けたと思ったら、
そのまま止まって、玄関に頭突きするの見て、
笑わない人っているの?」
そんなことはわかる。逆の立場なら、全力で笑うし。
仕方あるまい。許して進ぜよう。
「なんで偉そうなのよ」
「まぁまぁ、それじゃ、いってきます!」
「いってらっしゃい」
母ちゃんは「笑うなよ」という言葉で止まるような人
じゃない。
むしろ、相手がそれを気にしてると思って、
更に爆笑するような人だ。
まぁ、だけど、これだけで、
あれが現実だったというには、弱いかな。
高校であれが夢だったのか検証するか。
〜〜〜〜〜
さぁ、ここは俺が合格した高校、七夕高校の
男子トイレです。ここの鏡で額を見ます。
うん、赤くなってるわ。そして、念じます。
治れ〜、治れ〜。あ、赤くなくなった。
治癒能力にでも目覚めたか、あれが現実だったかだな。
ヤベ、入学式まで、あと5分じゃん。
急げ!いや、待てよ?願いの検証のチャンスか。
誰にも気付かれずに皆の列に合流したい!
一瞬、嫌な浮遊感が襲い、次の瞬間には皆に合流していた。
これはほぼ間違いなく、現実だったと考えるべきか。
前を歩いている男子に現状確認するか。
「なぁ、今って、何してんだ?」
「んぁ?今か?
今は、入学式のために体育館に移動してんだよ。
う〜ん、すまねえ、あんたの名前って、
何だったっけか?」
なる程、自己紹介はもう済ませた感じか。
クラスメイトに俺が自己紹介のときにいた事にしたい。
そして、クラスメイトの自己紹介を知りたい。
「ああっと!思い出したぜ!棚場大願だよな!それまで、
皆、敬語で自己紹介してたのに、いきなりタメ口で
し始めたよな。ビクッたぜ!」
「そこ!うるさい!」
怒られちった。さて、整理するか。この願いはやはり
万能だな。大抵のことはできるし、知れる。デメリットも
なさそうだし、欠点は一つもない。これからも
この力について、検証していこう。
その日は、校長の異常に長い話をさっさと終わらせて、
終わった。