失念の理
過酷な道のりの涯ては立ち塞がり、途方に暮れ。
「可能な限り丸ごと採取してほしい」
そう託されては大きめの狩猟袋を背に運よく眼前まで到達したものの、一葉の示す形状そのものの眼前は、想定外のスケールで、ゴツゴツ波うつ目を射るほど強烈な青の膚の星形の実体は、仄暗い空に溶けるほど、地平線をくまなく遮るほどで。
私はなおも風袋と正味を見あわせ呑気に首を揺動させて思案する、絶望を投げつける断崖の広がり、だが、星形と心づく自身もまた、見いだすので。思惟は巨大な禅問答に沿うように宇宙レベルまで膨れていた、失念の理はここではなくて。
断崖のあちらへ、究極の毒探し当てては茫然と見上げた今ひとつの自己像を透かし見たためで。
あまりに象徴的なものとなったため、少し補足をします。
ボルヘスふうの構造物そのものとなりました。
作中に明示されませんが主人公が託されたものはなんらかの(おそらくは究極の)「薬」でした。
お題の「薬」をラジカルに考えてみると、やはりその背中合わせとなる「毒」を想起せざるをえません。
絶対に持ち去ることのできない状況にではなく、無限に膨らんだ主人公の全能感を萎ませてしまったのは、真逆の目的を眼前とした、次元の向こうに立つドッペルゲンガーでした。
そのことがなぜ、彼に失意を抱かせたのかは、読者それぞれに託したいと思います。
しばらくご無沙汰でしたが、アニバーサリーとは関係なく久しぶりに参加したいと思い書かせていただきました。第五十回目までの到達、おめでとうございます。