自然破壊はよくないゾ!~綺麗な服と日傘を求めて~
ー深い深い森の中でー
景色の変わらない森が延々と続く。見渡す限り緑で何もない。そんな状況に未来は飽きた。
「いつまで森なの~?」
「地図を見た感じあと二時間くらいだねー」
この中で唯一地図が読める女、ウォタラが応える。
それを聞いた魔王は何かが吹っ切れたように叫んだ。
「ああ!もうめんどくさい!行くよ!」
そう言った途端、未来はちょっとしゃがむと思いきり地面を蹴った。未来は地面と平行に飛ぶと、正面の木々を軒並み蹴散らしながら進んだ。
流れ星が流れるより早く移動し、未来は一瞬で森の外に出た。
「くうううううううう!スッキリ!」
森を抜けるとそこには大草原が広がっていた。流れる川、咲き散らかる花、ぽつんと立つ木に、前方には町が見える。
突風が吹き、横を見るとエレキとウォタラとフレアが立っていた。
「未來ちゃん。自然破壊はよくないわ。これから注意するのよ?」
魔王軍は自然に優しい。二年後に世界を滅ぼすとは思えないほどに。
「はーい。」
「あ。あれが赤鬼がいる町じゃね?」
前方に見える町、そここそが魔王一行が目指す町。「ガバルドビレッド」である。
「そうね。あれね。あの町の広場でブリザが待ってるはずよ。」
「じゃあ一先ずブリザを回収しにしゅっぱあ~つ!」
一行は、もとのペースで歩き出す。ガバルドビレッドへ向けて。
ー大きな服屋の中ー
(まさか値札すらも読めなくなっているとは、、、)
店に入った琢人は道具屋で貰ったお金の金額さえも分からず、店員からさっさと帰って欲しいと思われていそうな目で見られていた。
(やばいやばいやばいやばいやばい。結構な額ありそうだけど全くわからん!誰か助けて!)
挙動不審な琢人に痺れを切らした店員は、ついに琢人に話しかけた。
「お客さま?他のお客さまのご迷惑になりますのでお買い物なさらないのでしたら早々に御退店お願いします。」
琢人は焦った。不審者だと思われているのではないか?と、このような場合どう応答すればよいのか?と。
(どうしようどうしようどうしようどうしよう。あっ)
琢人は何かを思い付くとお金の入った革袋を満面の笑みで店員に押し付けた。
琢人の満面の笑み。それは、口の片側を全力でつり上げ、両目を全開にした笑み。それはもはや笑みではない。威嚇である。
「これで買える一番綺麗なやつをください。」
(やった!言ったぞ!)
「ひっ」
店員の小さな悲鳴が上がる。
店員は革袋を受けとり中身を確認すると、その額に驚愕した。こんな全身真っ赤な不審者から金貨180枚「日本円にして180万円」という金額が出てくるとは思いもしなかったから。何かあるとしか思えなかった。
しかし、知ったことか。トラブルが起きたならシラを切れば良い。店員は接客する。
「で、では。すぐにお持ちいたしますので、あちらに座って少々お待ちくださいィ!」
脳内ではクールな店員。その声は震えていた。
ーオレラの町ー
暮とお供の騎士は宿をとるとそこに馬を預けた。「もし馬に何かあったら貴様を殺す」という脅しをつけて。
二人は宿を後にすると冒険者ギルドへとやって来た。冒険者ギルドには、今や旅をする者ならばその全てが訪れる。
かつて冒険者ギルドは、それほど人の多い所ではなかった。しかし、いろいろあるうちに莫大な量の情報が集まる場所となった。
「常仁、お前はここで情報収集しろ。私は日傘を買いにいく。」
「ぷぷっ。結局買うんか。」
「何か言ったか?」
「いいや~何にも~」
常仁と呼ばれたお供の騎士は何もされないうちにそそくさとギルドの中へと入っていった。
そして、暮は日傘店へと向かった。できるだけ大きめの日傘を求めて。
ーガバルドビレッドの広場ー
「あれ?ブリザいないじゃん。ここに集合じゃなかったっけ?」
待ち合わせの広場に到着した魔王一行[一人を除く]。そこにブリザはいなかった。
と、そこに遠くの方から魔王を呼ぶ声が聞こえてきた。
「さまー!魔王様ー!」
魔王、という単語に広場の人々は凍りつき。それぞれに回りを見回し始めた。
「あ。いた。あそこ。」
一番最初に声の主を発見したのはウォタラ。
声の発生源はブリザ。ブリザは屋根の上にいた。
ウォタラが指を指すと一行はその方向を見た。
「見なかったことにしよう。」
魔王一行は再び歩き始めた。
魔王軍は面倒事や厄介事とは無縁でいたいのだ。