虫嫌いな幹部と方向音痴な赤鬼。あと黒騎士。
ースプリマのある屋敷にてー
来客用の二つのソファと机、仕事用のデスク、そして金色で縁取られた大きな鏡が壁に掛けてあるだけの部屋。
その部屋の鏡の前に黒い全身鎧を身に纏った一人の騎士がいた。
彼女は日我暮。円卓の騎士の一人である。186センチという長身に顔まで見えない黒い鎧、おまけに胸はないに等しく一見男であるが、女性である。
今日も彼女は鏡の前で自分の仕事を復唱する。特に意味はないのだがいつからか習慣になっていた。
「私の仕事は赤鬼を探しだし、勇者に会っていただくこと。私の仕事は赤鬼を探しだし勇者に会っていただくこと。私の、、、」
そう、これは彼女の習慣。決して真っ黒な鎧を着た自分に見とれているわけではない。そう決して。
「ああ、かっこいい。」
ー魔王国からちょっと離れた南の方の国ー
「おか~をこ~え~ゆこ~うよ~くち~ぶえ~ふきつ~つ~」
魔王城を出発してそこそこ歩いた魔王一行は赤鬼を探し、緑豊かな森の中を歩いていた。
「ちょっと緑豊かが過ぎてねーか?」
「フレア?言葉がおかしいわよー。でも確かに、ちょっと自然が元気すぎるわね。」
ウォタラが言った通り、そこは森と呼ぶには植物が大きく、色が濃かった。この世界にこんな言葉はないが、地球の言葉で例えるならこの森は、熱帯雨林。またの名をジャングルと言うものである。
「そうだねー僕みたいな小さな子供にはこの森はいささか元気すぎるな。」
「エレキ、、、あんた最年長でしょ、、、何が子供よ、、、」
エレキ・サマー・クラウド。今年で4851歳であった。
「でもこの森を抜ければ赤鬼のいるくになんでしょ?」
「そうよ、未來ちゃん。でも厳密に言うと最後に赤鬼の目撃情報があった国、ね。」
「じゃあいるか分かんないってこと?」
「うん」
「へぇー」
今日も魔王達は平和だった。
しかしそこにブリザは居なかった。「虫は嫌い」と言って森の上を全速力で飛んでいったから。
ー魔王達の目指す町ー
琢人は町で一番大きな道具屋にいた。
そこで琢人は今までに集めたモンスターから手に入れた物を全て売ろうとしていた。
「兄ちゃん。こいつらは買い取れんよ。」
そういって道具屋の店主は琢人の渡したものの大半をカウンターの上に置いた。
「なぜ?」
ながらく人と話していなかった琢人はこう言うときに何を言っていいか分からない。ましてやこの量を返されるとも思っていなかったため、それだけ聞き返した。
「なぜって?そりゃあ高すぎるからだよ。ドラゴンの牙に天狗の扇子、ましてやユニコーンの角なんて国が予算はたいて買えるかどうかの代物だぞ?それをこんな道具屋に持ってくるんじゃねえ!」
なぜ店主はこれらがそんなものだと分かったのだろうか。まあそんなことを気にする必要もない。
琢人は売れるものだけ全て売ると道具屋を後にした。
この町で一番大きな服屋を目指して。
ー町の広場にてー
そこそこ広い広場の中央、そこには大きな噴水がある。
その噴水に、ひとりの真っ赤な男が倒れていた。
(道に迷った、、、)
そう、琢人である。
道具屋を後にした琢人は、何も考えずに服屋を探した。しかし、二年間文字を全く使わなかった琢人は文字そのものを忘れており、看板などをみても何が何だか分からなかった。
(どうしよう、、、)
噴水は琢人の衣服についた血によって少しずつ赤く染まっていっていた。
広場のすみのベンチに、美しい男性が座っていた。
「どうしよう、、、あまりに早く来すぎたかもしれない、、、魔王様達普通に歩くって言ってたし、、、二時間は暇だぞ、、、広場集合と言っておいたからここにいれば良いけど、、、暇だ」
ブリザである。
「とりあえず人間の町を見て回っておくか、、、」
そう言ってベンチを立ったブリザは、広場の男女から集まる様々な視線をものともせず、優雅に歩き出した。
二三歩歩いたところで、ブリザは噴水に倒れている男と目があった。
見て見ぬふりをし、ブリザは再び歩き出す。しかしその男の視線が外れることはなく、もやもやした気持ちに教われたブリザは男に声を掛けてみることにした。
「さっきからこちらをみていらっしゃるようですが、どうかいたしましたか?」
ブリザが声をかけると広場中から舌打ちが聞こえてきた。おおかた何であいつの視線には気づくのに、何で私の視線には気づいてくれないの?という気持ちの者達であろう。
男は答えた。
「服屋は、、、どこですか?」
(こいつ、、、道に迷っているな。)
「着いてきてください。ご案内致しましょう。」
ブリザは案内することにした。暇だったので。
(あ。この町の道とか知らんわ、、、)
ちょっと間抜けなブリザであった。
二人は、無事とは言えないが服屋についた。道中の話はまた今度、、、
「着きましたよ」
「ありがとうございます」
琢人が礼を言い頭を下げると、ブリザは優しく微笑み返した。
「こちらこそ。」
琢人がそそくさと服屋に入ると、ブリザもその場を後にした。
(もうそろそろ二時間経つな、、、広場に戻ろう。)
「ここなら見通しが良いな。よしいこう」
ブリザは歩く。迷子にならないよう。見通しのよい屋根の上を。
ースプリマのある田舎道ー
「暑い。暑い。暑い。暑い!」
真っ黒な毛並みの馬に股がる真っ黒な鎧の騎士がのどかな道を進んでいた。
黒は日光をよく集めるので、普通の鎧にたいして温度の上昇が高い。
「日我さ~ん。そんな真っ黒な鎧着てたら暑いの当たり前じゃないですか。なんで黒にしたんです?」
お供の騎士が尋ねると、暮は声高らかに言った。
「かっこいいから!」
お供の騎士は「こりゃだめだ」と少し馬を話して進む。
そこで前方に町が見えることに気づいた。
「そんなに暑いなら日我さん!町が見えます!あそこで情報収集しながら日傘でも買ったらどうです?日我さんだけに」
お供の騎士の首筋に真っ黒な剣の真っ黒な刀身が当たった。
「他人の名前で遊ぶな!次はないぞ。」
お供の騎士は「そんなに起こることか?」と思いながら暮をなだめる。
この真っ黒な剣が自分に当たったらと思うと怖くて。
この真っ黒な件は「ソード・オブ・ザ・ソード」
岩をも容易に切り裂く世界最高の切れ味を持つ西洋剣。
次回は多分水曜になります