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♯2 魔王様の命令は絶対

 ここは魔王が統べる国、魔王国。住人のほとんどが魔人で、他の種族は滅多に見かけない。

 寒冷な気候を生き抜くため、陽を多く集めようと街は全てが黒い。家の外壁はもちろん。街灯や出店、整備された道までも、全て黒い建材を用いて作られている。日々過ごす人々がいなければ悪の巣窟にでも見えることだろう。


 そんな街の中央に、一際大きな城がある。

 黒塗りにしたノイシュバンシュタイン城のようなそれは、この国の王「魔王」の根城である。

 その城の中、玉座の間にて、魔王と四天王が揃い何やら深刻な表情で話をしている。


 「今から!第一回、退屈な生活をどうする?!ハチャメチャ魔王会議を開催しまーす!」


 先程までの深刻な表情が嘘だったかのように、金髪ツインテールの少女が叫ぶ。実際、先程までの深刻な表情は嘘だったのだろう。

 どんどんぱふぱふ、と効果音まで自分で言っている姿はどこか可愛らしい。


 しかし、可愛らしいこの少女。魔王である。

 人類を滅亡させんとした先代魔王の娘。今代魔王、十二月三十一日未来(ひづめ みらい)その人である(魔人)。


 「魔王様。我々は大事な話があると言われて、忙しい中なんとか時間を作って集まったのですが。まさか、大事な話とはそれですか?もし、それが大事な話と言うのなら私は仕事に戻ります。」


 テンションの高い未来に冷徹な言葉を浴びせる銀髪の男性は、ブリザ・バラクセレナ・カレスト。四天王の一人で、四天王の四つある仕事のうち政務を担当している。女性のようにも見える美しい男性だ。


 「まあまあブリザ。未来ちゃんも何か訳があって私達を呼び出したのよ。多分。仮にも魔王よ?私達が忙しいのは知ってるわよ。おそらく」


 今にもどこかへ行ってしまいそうなブリザをなだめるのは、ウォタラ・ラブ・バーサク。四天王の一人で財務の担当。黒い髪に黒い瞳の、人間のような魔人。艶やかな唇は、どこか色気を感じさせるお姉さんのようだ。


 「どうですかね。あの顔は暇だから集めた、という顔ですよ。大体なんですか!このコタツは!こんなだだっ広い玉座の間にこんなの置いて!場違いでしょう!」


 未来の考えを見透かしながらブリザは言う。


 「確かに、ここにコタツはいささか場違いだわな。」


 肩までしっかりコタツに入り、今にも寝そうな声で言う赤髪の男性。これはフレア・ボルグ・エンジョイング。四天王の一人で軍務担当。めっちゃ強い。


 「どこかで軽く扱われた気がするぞ。」


 そして、鋭い男である。


 「お前はいつも軽く扱われてるじゃないか。」


 気のせいか?と唸るフレアにわりと酷めなことを言う金髪の少年。

 この少年はエレキ・サマー・クラウド。御察しのとおり四天王最後の一人で人務を担当している。見た目は少年だが中身はおじいちゃんである。ショタジジイである。


 「もー!会議するって言ってるでしょ!コタツが場違いとかフレアとかどうでもいいから!それにちゃんと理由もあるの!」


 「酷くね?扱い酷くね?」と回りに問いかけるフレアを無視して、一向に会議を始める気配の無い四天王に、未来が頬をぷくっとふくらましながら声を荒らげる。


 「魔王様。本当に理由があるんですね?」


 「あ、あるよ。」


 疑ぐり深いブリザに、未来は一瞬怯みながらも胸を張って答える。


 「そうですか。ならいいでしょう。もし、くだらない理由だったら、くだらないと判断した瞬間仕事に戻りますからね。」


 よしっと頷く未来に、ブリザはジト目を向ける。

 一拍おいて、未来は大きく息を吸うと、声を張り上げて話し出した。


 「今日集まってもらったのは他でも無い!私のやることがなさすぎて暇なのをどうするか!それについてみんなに考えt、、、」


 話の途中にも関わらず、玉座の間を出て行こうとするブリザの背中に、未来は背後霊のように飛びつき取り付く。


 「ちょっと待って〜。話を最後まで聞いて〜。」


 後ろからかかる呪詛のような声にブリザは足を止め、顔だけ振り向くと背中に取り付く未来をみる。


 「だから、それがくだらない話だって毎回言ってるでしょうが!暇があるなら勉強なさい!」


 「勉強は嫌だよ〜。お母さ〜ん。」


 「誰がお母さんですか!」


 ブリザのお母さんのような言い草に未来は駄々をこねて嫌がる。それを見ているウォタラ、フレア、エレキは「お母さんw」と笑っている。


 それを目の隅で確認した未来は、ブリザの背中から飛び、ウォタラのそばに着地するとウォタラにすり寄った。


 「お姉ちゃ〜ん!お母さんが怒ったよ〜。」


 「ちょっと未来ちゃん?!巻き込まないで!」


 いやいやと嫌がるウォタラを尻目に未来は、フレアをお兄ちゃん、エレキを弟と呼び、他の二人も巻き込んでいった。


 現状が家族ごっこになったことにより、ブリザも「もういいか」と呆れたようにしてコタツに入り直し、会議が再開された。




 「私は退屈なのです!どこに行っても魔王様魔王様と心配され、融通され、もてなされ、やることがないのです!」


 未来の熱の入った演説に、四天王は困ったような顔をする。


 「まあ、魔王様ですし、」

 「魔王だからねえ。」

 「魔王だからなぁ」

 「魔王だしなぁ、」


 三者三様とはよく言ったものである。全員同じではないか。


 「魔王様が魔王である限り、それは仕方ないですよ。まあ、魔王国の外に出れば変わってきますがね。」


 ブリザが何気なしに呟いた言葉。

 未来はニヤつく。

 ブリザは、はっと自分が何を言ったのか気がつく。しかしもう遅い。他の三人の「あちゃー」という表情にブリザは視線で謝る。

 そして、未来がこれから言うであろう言葉を予想してため息をつく。


 「人間の国にいこう!」


 全くの予想通り。

 圧倒的テンプレ。

 絶対的権力。

 壊滅的安心。

 言い出したらもう誰にも止められない。

 生まれた時から未来を育ててきた教育係ですら、未来の思いつきは変えられない。

 四天王は、自分たちも連れて行かれるんだろうなと思い、焦点の合ってない目で空を見つめる。


 「みんなで行くぞー!明日出発ね!」


 案の定である。

 四天王はそれぞれ立ち上がると、部下の元へ行く。

 明日からの終わりの見えない旅行への準備のために。

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