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#1 不足しているもの

改稿するより書き直した方が早いと気づきました。

#←がついている話が真のストーリーです。ついてないやつと交えて読むと訳がわからなくなるのでお気をつけくださいませ。

ちなみに、真のストーリーが旧ストーリーに追い付き次第、旧ストーリーは順次削除していきます。

 これは遥か昔、個々とは違う世界の物語。

 この物語の主人公は、ある偉大な神様と一人の人間の間に生まれた特別な青年。

 青年の名前は水川琢人(みずかわたくと)

 琢人は地図には無い道を行く。

 愉快爽快な仲間たちと共に。






 朝が来た。

 小鳥の鳴き声が響き、東の空に太陽が昇る。人々も起き始め、各々の一日が始まる。

 琢人も例外ではない。

 琢人はベッドから出ると、寝巻きから普段着へと着替え、ベッドからシーツをはぎ取り部屋を出る。扉ひとつ隔てた先は、寝室より広いがべらぼうに広い訳ではないリビングがある。

 琢人は、玄関付近にあるかごに寝巻きとベッドシーツを無造作に入れると、財布を持って家を出る。

 向かうのは近所のパン屋。朝と昼の分の朝食を買いに行く。


「あ!琢人!」


 家を出てすぐ、聞き覚えのある声に琢人は立ち止まる。

 振り替えると、赤いワンピースを着た短い黒髪の女性が琢人にてを振っていた。


「おはよう!」


 その女性は琢人に駆け寄ると、笑顔で言った。


「おはよう。百花」


 彼女は岡崎百花(おかざきももか)。百花は琢人と同じ年に生まれ、琢人と一緒に育ってきた琢人の幼馴染みである。誰にでも明るく優しく接し、町でも評判の娘だ。琢人の両親が死んだ今、琢人の唯一の心の支えであり、琢人が何に変えてでも守らんとする存在である。


「うん!おはよう!」


 琢人が挨拶を返すと、百花は嬉しそうにした。挨拶を交わした二人は揃ってパン屋へ歩き出す。三日に一度、二人はこうしてパン屋へ行く。

 百花の家では、母、父、百花の三人がローテーションで食事を用意する。今日が百花の番なのだ。


「いい天気だね!」


「そうだな。雲ひとつ無い青空。何かいいことのひとつでもあるかもな」


 琢人が笑いながら言うと、「そうだね」と百花も笑い返した。


 そうこうしている内に、二人は目的のパン屋についた。扉を開けると焼きたてのパンのいい臭いが漂ってくる。店内にはすでに数人客がいる。

 琢人が、いつもカウンターにおる店主に挨拶しようとすると、そこには店主ではなく見覚えのある若い男が立っていた。


「なにしてんの?朝斗」


 男の名は大神朝斗。数年前に勇者として魔王を打ち倒した男で、その功績から先日、このスプリマ王国の国王に即位した男だ。


「百花さんに会いに来ました」


 笑顔でなんの恥じらいもなく言い放つ朝斗。琢人は、「さすが勇者だな」と感心した。

 一方百花は、そんな朝斗に赤面していた。


「百花さん。僕と結婚していただけませんか?」


 会って早々、朝斗は言った。別に頭が可笑しくなった訳ではない。もとからこうなのだ。

 勇者は百花にゾッコンLOVE。有名な話だ。


「遠慮しておきます」


 百花の答えに朝斗は膝をつく。いつものことだ。そこには勇者であるとは思えない朝斗の姿がある。

 いつものことだ。

 朝斗が百花に求婚し、百花が断り、朝斗が項垂れる。府照りが会うたびにこのやり取りは行われる。


「お前、よくめげないな」


「当たり前です。一度や二度振られたからといって、三度目も振られるとは限りませんから。だから僕は百花さんが誰かと結ばれるまで諦めません。たとえアンデッドになろうともね、、、」


 これ程までに狂気的な愛。勇者の頭のネジは五本くらい足りないのかもしれない。


「生憎、百花は俺の嫁になるんでな。諦めろ」


 琢人は軽い気持ちで言った。


「琢人、、、」


 店の中で小さな歓声が上がる。

 琢人の後ろでは、百花が顔を真っ赤にしてうつむいている。


 ついに耐えきれなくなった百花は、あらかじめ店主に用意してもらっていたパンの入ったバケットを持ち、それのあった場所に代金を置いて逃げるように店から出ていった。


「百花?」


 琢人も同じようにして店を出て百花を追う。


 店にはなんとも言えぬ顔の朝斗と気まずい空気の他の客が残った。



「百花!どうした?!」


 店を出た琢人は、周囲を見回して百花を探した。百花は自分の家の外壁にもたれ掛かっていた。

 琢人が駆け寄ると、百花は顔をあげて笑顔を見せた。


「ありがとう琢人!」


「え?」


 百花の突然の感謝の言葉に、琢人は一瞬動きを止める。琢人が動き始める前に、百花が言葉を続ける。


「俺の嫁になるって。どんな理由でも他でもない琢人が行ってくれて嬉しかった」


 目尻に涙を浮かばせながら百花は続ける。


「でもごめんね」


 その次に発せられた言葉を、琢人は理解できなかった。


「私、朝斗に告白しようと思うの。この気持ちを」


「気、気持ち?」


「うん。私ね、ふと気づくと朝斗のことばっかり考えてるの。何でかは分からないけど、朝斗のことになると胸が裂けそうなくらい苦しいの。それで気づいたんんだ、そうか私は朝斗のことが好きなんだって。」


 琢人は絶句する。瞳からは生気が消え、腕には力が入っておらずパンのは言ったバケットを落としてしまっている。

 しかし、百花はそれに気づくことなく続ける。


「こんな気持ちはじめてなの、、、」


 それからの言葉は、琢人の耳には入っていなかった。

 無音の世界。無色の世界。

 おぼつかない足取りで琢人は自宅へと入っていった。


 寝室へと入った琢人はシーツのかかっていないベッドへと倒れ込んだ。


「どうして?何で?何が?」


 琢人は、百花に気持ちを伝えたことはなかった。

 一緒にいるのが当たり前だと思っていた。


「なんだ?」


 琢人はそのまま眠りについた。






 琢人が目を覚ましたのは夕方だった。

 目を覚ました琢人は、自分探しの旅にでることにした。

 百花にたいする気持ちも全てが夢だったかのようになくなり、澄み切った心には一切の陰りもない。


「この町にいる意味もなければ、この町にいたいとも思わない」


 琢人は誰に言うこともなく呟くと、家中の金目のものをすべて持ち、道具屋へ行った。そこでそれらすべてを売り払い、その金で一本の両刃の件を買うと、それだけ持って町を出た。






 全身にモンスターのかえり血を浴び、真っ赤に染まった琢人。琢人は今、背の高い木に上って体を休めている。

 松明を持ってくれば良かったと、目を閉じ朝を待つ。


 琢人は、町を出てからこれまでずっとモンスターと戦っていた。最初にスライムを倒したとき、琢人は体が軽くなるのを感じた。それがなぜかは分からない。しかし、モンスターを倒す度にそれを感じた。

 いつからか琢人は、その行為に快感を覚えていた。


 そして今に至る。

 目を閉じた琢人は考える。


(俺は百花と一緒に幸せになりたかったのかな。結婚して子供をつくって一緒に年を取る。そんな生活がしたかったのかな。)


 冷静になった今、琢人は思う。


 全てが遅すぎた。もっと早く気持ちを伝えていれば。


 しかし過去には戻れない。戻ったとしても、その気持ちはもうない。

 吹っ切った琢人は眠りにつく。



 ここから二年間の琢人の旅は始まった。

 彼女と出会うまで琢人の旅は終わらない。

次回からみんな大好き未來ちゃんが出てきます。

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