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短編収  作者: 伊藤 茶
2/4

おまじない

「ねぇ……知ってる?」

「何が?」

「おまじないよ、おまじない」

「なぁにそれ?」

「部活の先輩から聞いたんだけど……それをやったら何かが起きるんだって」

「何かって?」

「知らないわ、教えてくれなかったの」

「なんで?」

「わかんない。でも先輩はやったことあるらしいんだけど……誰かに教えちゃいけないらしいの」

「どゆこと? それじゃあ誰も分からなくない? その先輩はどうやって知ったの?」

「さぁ」

「さぁって何よ、意味わかんないじゃない」

「私だって分からないわよ、先輩が部活終わるときに急に言い始めたんだもん。良いことが起きるからこの話は言い広めてくれって」

「何よそれ? 宗教かなんか?」

「よくわかんないんだけど、まぁ言えっていわれたから……」

「それじゃあ私も誰かに言わないといけないの?」

「うん、お願いね。私は今日、三人に話したから」

「めんどくさいんだけど……」

「そう言わないで、ね。そいうことだからっ、よろしく!」

 そこで電話が切れた。

 何なのよおまじないって……。私は心の中でそう呟いた。


 次の日学校ではその話をしている人でいっぱいだった。聞くところによるとその先輩もまた違う人から教えてもらったらしく、出所はもう誰にも分からないらしい。

「ねぇ何だったのあのおまじないって」

「私も気になって、先輩にずっと聞いてるんだけど……」

 今、わたしたち以上の情報を持っているのはその先輩だけなのだ。

「本当に知ってるのそのおまじない」

「えぇー。知ってるんじゃないの? だから言い始めたんじゃないのかな」

「ホンと何がなんだか分からないわ……もう私不眠症にでもなっちゃうかもしれない」

「分かったよ……どうにか聞いてみるから」

 おまじない。何かが叶うものなのか、考えても全く分からない。


「分かったのよ。おまじない」

「本当?」

「ホントよホント。どうにか教えてもらったの」

「なんだったの?」

 プーっと機械音が頭の中を通った。携帯の画面には通話終了と赤い文字が表示されている。

 その後何度も電話をかけたが通じなかった。


「ねぇ昨日どうしたの?」

「え?」

「え、じゃないくておまじないのことよ」

「ああっ、そうそう良いことが起きたのよ」

「何、良いことって」

「それは教えられないな」

「なんでよ? 教えてくれるって言ったじゃない」

「それはおまじないでしょ」

「あぁ、じゃあおまじないって何なのか教えて」

「えっとね。――――」

「え? 何? 分からないんだけど?」

「何が?」 

「だからおまじないよ。おまじない。教えてくれるって言ったじゃない」

「……何? おまじないって」

「え? だから……」

 彼女はおまじないなんて知らないと言っている。最初に彼女にそのことを教えた先輩も同じ反応だった。どういうことなのか私には分からなかった。

 知らないということが良いこと、とでも言うのだろうか。

 でも、何かが起こるとはどういう意味だったのだろうか。


 数か月が過ぎたある日後ろの席に座っている女の子がこう言った。

「ねぇ……おまじないって知ってる?」

おまじないとはいったい何なのでしょうね。


謎は深まりましたね。

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