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第三十七話 ギロチン100連発

 現状、魔族の総軍は、470000。

 一方人類軍の総軍は、2500000である。

 文字通り桁が違う、その絶望的な差を埋めるためには、戦術だけではなく戦略が必要となっていた──


「残念だったの、人類諸君。諸君らの英雄、寄る辺たる剣聖さんは、地獄へ出荷されてしまったのです」


 照り付ける日差しと、生ぬるい風のなか。

 姫様の精一杯の笑顔とともに──ぎこちなくひきつった笑みは、あるいは人類にとって、悪鬼のそれと映ったかもしれない──それ(・・)はつるし上げられる。


 最前線に掲げられるトロフィー。

 毒死した、剣聖の裸の遺体。


 そのすさまじい形相と、死にざまを見た人類の防衛軍は、狂乱を起こした。

 なにせ、一騎当千どころか、一人で魔族を殲滅できたかもしれない最強の人類が、こうして返り討ちにあったのである。


「反骨心が芽生えられても困るので、さっさと心をへし折るの」


 彼女が命じるまま、戦場に並べられる異形の器具。

 地面から伸びる、長い二本の支柱。

 そのあいだには、斜めに角度が付いた巨大な鉄塊を綱で吊されている。

 そんな奇怪な器具が、こちらの陣地に真っすぐ、100台近く並べられていた。


「たったいま、この瞬間から、魔族は人間の捕虜をとることをやめるの。これからは、それ相応の対処をさせてもらうの。これは、この争いが続く限り永遠にそのままなの。ゆえに!」

「やめろ!? やめてくれ! 俺たちになにをするつもりだ……! うわあああ!!」

「いやだ!? やめろ、そんな、あああああああ」

「ふざけるな、我々は誇り高き人類の──」

「魔族のような下賤なものに──ひっ、やめて!」


 わめきたてる捕虜たちが、ふたつの柱の間に寝かされ、身体を固定される。

 地べたにそのまま、頭を押さえつけられて。

 そして、


「では諸君──楽しい死刑執行の時間なの」


 姫様が、軽く右手を振り上げ、振り下ろした。


 ザン──ザザザザザ。


 連続する、切断音。

 刃が血肉を断ち切り、地面へとめり込む音。

 そして、宙に舞う、無数の首。


 ギロチン(・・・・)


 悪名高き処刑機具が、100人の人間を、あっという間に物言わぬ物体に変えた。

 本来ならば、苦痛なく人命を奪うための救済処置(・・・・)


 だが、この世界の人類は、そんなことは知らない。知る由もない。ひたすらに残酷な死神が、そこに列をなしているようにしか見えなかった。


 魔族の総軍が、鬨の声を上げる。

 人類軍が絶句するのが、手に取るように分かった。

 そして次に、恐慌をきたしたことも。


「では人類諸君。次は処刑台でお会いしましょう、なの」


 姫様のその言葉は、人類にとって絶望以外の何物でもなかった。

 瓦解を始める人類軍。

 そこに、魔族の勇士たちが高揚した意気のままに突撃していく。


 かくして、人類との決戦が始まったのだった。


次回は25日0時ごろ!

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