表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/53

第一話 歴史作家は異世界へ逝った

ゆっくり毎日更新していきます。

 平蜘蛛ちゃがまを抱えて大爆死!

 タイの天麩羅てんぷらにあたって中毒死!

 歴史小説家として、どうせ死ぬならそんな死にざまがいいと思っていた僕だけれど、現実はどこまでも非情だった。

 僕はいま、崩れ落ちてきた資料の山に押しつぶされ、ついでに産まれついての心臓病が発作を起こし、惨めに死にかけていた。

 来月には新刊を発売予定だっただけに、未練が残って仕方がない。

 織田信長的には是非もなしだが、できれば印税で楽をしたかった。

 そんな思いを最後に、僕の意識はブラックアウトして──


§§


 ──パチリと、目をひらく。


 同時に世界が広がった。

 そうだ……わかる、わかるぞ……

 こんなにも簡単なことだったんだ……宇宙とは、生命とは、ゲッ〇ー線とは……!

 僕は目覚めたんだ、この世の答えに!

 オー、真理(エメス)


「オーでも、エメスでもないの。黄昏(たそがれ)てないで、さっさと私の質問に答えるの」

「おおおおおおお!?」


 目の前に巨大な眼球が現れ、僕は素っ頓狂な悲鳴を上げた。

 思わず、その場から飛びのく。

 しかし、背中はすぐに壁へとぶつかってしまった。

 え? なんだ、この透明な壁?

 それに、僕を見つめるこの巨大な眼球、なんだか奇妙に歪んでいて──


「……ぐっ」


 ──と。

 そこで、僕の肉体に、鈍い電流のような痛みがはしった。

 同時に、今度こそ僕は真理(じじつ)に直面する。

 現状を理解する。

 眼球が巨大なのではない。

 ()()()()()()()()()

 そうだ。

 なにせ、僕は──


「いいから答えるです。この──びんづめホムンクルスが、なの」


 そう、僕はホムンクルスだった。

 しかもなんか、イチゴのジャム瓶に詰められているホムンクルスだったのだ!


 ……なにを言っているのかわからないと思うが、僕にもわからない。

 わりと本気で理解したくない。

 しかし、ホムンクルスとしての僕の知識が、勝手に補足してしまう。

 前世の僕は死んだ。

 そして、なんやかんやあって、流行りの異世界転生をした結果、ホムンクルスへと生まれ変わってしまったのである。


「私はあなたの生みの親なの、ホムンクルス。文献によれば、ホムンクルスは万物全知。なので、私の問いに答えるのです。これは命令なの、ホムンクルス」


 目の前の巨人──にみえる普通サイズの幼女は、ソフィア第三王女。

 フィロ・ソフィア・フォン・ナイド=ネイドという長ったらしい名前の王族で。

 ()()()()()()

 雪のような銀髪の髪に華奢な身体。

 その赤いおめめと、スカートの裾から延びる鱗に覆われた、ぶっとい尻尾が示す通り、彼女は魔族だ。

 魔族、いわゆるモンスター。

 僕は人類と対立している魔族の国、ナイド王国に転生したのである。

 そう、このソフィア王女の魔術によって、産み落とされたのだ。

 だけど、それはいったい、なんのために?


「さあ、答えるの、ホムンクルス。私の──」


 魔族の王女様は、ひどく真剣なご様子で。

 どうやら全知であるらしい 僕 (ホムンクルス)へ、こうお命じになられたのだった。


「私の──おねしょを治す方法を、教えるのです!」

次は12月18日0時5分ごろ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵からきました  魔族の王女様は、ひどく真剣なご様子で。  どうやら全知であるらしい 僕 ホムンクルスへ、こうお命じになられたのだった。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ