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箱はいいぞ、一度付けてしまうともう箱無しじゃいられなくなる

 港町にたどり着き、一夜が明けた。

 俺は農家出身朝は早い、コーはまだ宿のベッドで惰眠を貪っている。

 俺は旅支度をするため、市場に足を伸ばした。


 今まで使っていたテントを、大きめの二人用に買い替え、コーの分の寝具やキャンプ道具を追加する。

 この世界には防水透湿素材もないし、防水性のあるナイロン袋、軽量なアルミ素材の調理器具など便利な文明の利器は無い。

 俺もこの世界で15年やってきたので、無くとも活動可能だが、バイクで旅するならタンクバッグは欲しい。バイク用品店取り扱い品とかスズキ純正品とかは召喚できないのかね?後で聞いてみよう。

 最後に精度の高いコンパスと地図を買うと宿屋へと戻る。


 俺達の滞在する宿は2階建て、食堂兼酒場になっている一階で朝食にする。


「パンとオムレツとミルクお願いしますの」

「魚介スープ頼む」

「オレンさん、またお魚さんですの?」

「俺の生まれた農村は内陸部で、魚介類と言えば淡白な川魚とか沢蟹だったからな。ここは港町だけあって濃厚な魚介類が安くて美味い」

「ああ、分かりますの。バイク乗りはツーリング先の港町で魚料理食べますの」


 考えてみれば転生してから海鮮類って食ったことなかった。この嗜好も覚醒の影響か?


「あー、でも注意して欲しいですの。肉体はこの世界の人間ですから、生の海藻は消化できませんの。そのまま(ピーー)と一緒に(ピーーー)からにゅるって出てきちゃいますですの」

「ああ、日本人じゃないと海藻サラダとかは消化できないんだっけ」


 忠告はありがたいが、天使が飯食ってる時に(ピーー)とか(ピーーー)言うな。


「ところでオレンさん、呼び方はどうしますですの?」

「何の話だ?」

「まだ婚姻関係でない男女二人旅ですの。周辺環境への配慮として兄妹関係を偽装する提案をいたしますの」

「なんか引っかかる言い方だが、コーがそれで良ければ」

「つきましては、オレンさんの目の前のウインドウに選択肢が出てますの。

  1:お兄ちゃんって呼んでいいよ。

  2:お兄様って呼ばれたいかな

  3:ハァハァおにいたまでオナシャス

 コマンド?」

「4:にーさまが入力しやすくて楽だから を選んだ」

「勝手に選択肢を増やさないでほしーですの!」


 不満げに頬を膨らませていたので、フルーツ入りのヨーグルトを注文してやった。

 しかしギャルゲーか、懐かしい。あっちにいた頃はネットもゲームも無い世界じゃ生きていけないとか割と本気で思っていたけど、実際無くてもやってけるんだな。


「にーさまおにーさま……うん、これもアリですの」


 ヨーグルトを口に入れながら満足げにする。ちょろいな、こいつ。


「飯食ったら旅支度するぞ、俺は食料の買い足しだけだが、コーは生活用品がいるだろ、着替えとか下着とか」

「はい、お付き合いお願いしますの、お買い物デートですの」


 商店を回りながら、生活雑貨を買い足していく。

 俺も村では成人扱いだし、この世界は婚姻年齢も早い。

 しかしコーは見た目ちんちくりんな中学生くらいにしか見えないし、言動も幼い。

 俺も外見15だし、デート感はまるで無い。兄妹設定は正解だったのかもしれない。


「な、コー。バイク召喚はできるのは分かったが、不随品とかオプション品は調達できないかな?」

「そこはスズ菌濃度によりますの。転生者なら最低限マイバイクは召喚で、濃度次第で年式やカラー変更、さらに純正オプションや社外用品まで召喚できるようになりますの」

「マジか!?じゃ憧れのUSスズキ純正カウル装着してフルカウル仕様にもできるんだな」

「あれ水温が高くなるから実用性重視ならオススメできませんの。あスコーピオンヘルメットなら問題ありませんの」

「あれ重くてでかいからなぁ……金が要らないならASの上級モデル被りたいぞ」

「自車にもともと付けてたものなら、問題無くいけますの」

「ああ、そういやミツバの一体型ETCついてたな、高速道路無いから無意味だけど」


 金をかけずに自車をカスタマイズできるとか、最高じゃないか!


「後から積載したものや装備したものは送還した時に一緒に収納され、もう一度召喚すればそのまま装着されてますの」

「お、マジか。バッグ・オブ・ホールディングみたいな使い方できるんじゃないか」


 世界最古のTRPGから存在する、夢のマジックアイテム無限袋。

 実際ガチで何か月分の旅道具背負って旅するのって大変だったからな。

 神走召喚のオマケで類似効果が得られるのは非常に助かる。


「よし、これなら荷物が増えても大丈夫だ、多めに買い足して行くぞ」


 女性の買い物は長くなる、とつい昔の感覚で考えがちだが、産業革命前の時代、布織物は貴重品だ。

 俺のような一般人には一番安い衣類しか選択肢はない。

 コーも経済事情を察してか、わがままも言わず衣類を買い集め、買い物は予想より早く済んだ。

 後は積載だな。宿に戻ると俺は新しい姿をイメージして右手を掲げる。


「神走召喚。よし、成功だ」


 SV650Sの姿は以前と変わり、車体後部にGIVIステーとリアボックス、タンクの上にMOTOFIZZタンクバッグを装着し、メットホルダーにショウエイJストリーム2個付き状態で召喚される。

 本当はサイドケース付きのフルパニア仕様にするつもりでいたんだが、そこまでは無理だったようだ。


「わ、すごいですの、これなら旅使用バッチリですの」

「サイドケースは無理か、仕方ない革バッグを買ってきて自作するか」

「まだ初期状態の第一形態ですの、もっとレベルが上がればできるようになりますですの」


 タンデムツーリングになるからリアシートには乗せられないしな。

 俺は市場に戻ってバッグを物色し、バイクに装着できるよう試行錯誤してその日は終わる。

 手作り感溢れるサイドバッグになるが、クラシカルな雰囲気が出ていい感じになりそうだ。 


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