(( 2 )) 園垣京介
園垣京介19歳
闇野コールセンターでは、1 番若い。過去に殺人歴がある。人を殺して感じたのは”快感”だった。京介のことを世間は見放した。家族でさえ見放した。だがここは見放さない。”復讐”をするのにもってこいの人材でもあった。女の子になかなかできない依頼は、京介に回されることが多かった。特に、依頼者の復讐相手に直接的に何かをする依頼は、京介がほぼ担当した。
闇野は今日も京介にそんな依頼を任せるつもりだ。
「京介!今日の依頼は1件だ。少々面倒な依頼だが頼んだぞ。」
「わっかりましたー♪」
京介は楽しそうな声で返事をし、資料を読み進めた。
今回の依頼は、
【自分の車に当て逃げをした犯人をやっと見つけたが、警察では取り合ってくれない。だから、ここで復讐したい。犯人の車を廃車にしてから、あとは金も奪ってきて欲しい】
という依頼だった。京介は不満そうに呟いた。
「な〜んだ、面白くない。早く終わらして、昨日買ったゲームの続きしよっと!行ってきまーす!」
闇野も呆れるほどの、いつも通りの元気な京介に闇野は言う。
「相変わらず元気だな。気をつけてな。」
「はーい!あ、そこにあるゲーム、消さないでくださいね!すぐ後でやるんで!!!」
もうゲームなんてできないなんて知らずに、いつも通り、会社を出た。
京介はイヤホンを耳に入れ、大きな音で音楽を聴きながら仕事をするのが好きだ。京介にとって、依頼者たちが依頼する仕事はつまらないと感じるものが多かった。それらの仕事中に音楽を聞いた時、思ったよりも気分を上げて仕事をこなすことができた。そこから、音楽を聴くスタイルは定着した。
「なーんかやる気出ないんだよなぁー。」
京介はそう言いながらいつも以上に音量を上げる。それと同時に携帯にメールが入った。
【今日の依頼の場所が変わった。少し狭い道だがそこに復讐相手が18:00頃に、赤い車に乗って来る。復習の仕方はお前に任せた】
送り主は分からないがきっと依頼主からだろう。京介はその指示に従い、場所に向かった。
予定より少し早い時間にその場所に着いた。そこは車が全然止まっていない地下駐車場。少し君が悪かった。まだ時間がある。復讐相手に見つからぬように物陰に隠れた。
「どうやって復讐しようかな?車壊して、金も奪わなきゃだもんな〜。...殺していいのかな?へへへ」
京介が気持ち悪い笑みを浮かべる。その顔は殺人を犯した時と同じ顔だった。
その時。
“ カランッ”
突然どこかで物音がなり、その音が駐車場内に響いた。京介の心臓の鼓動は早くなった。
「何だよ....気味悪りぃな...」
さすがの京介も驚いた様子だった。
18:00 予定の時間だ。あの音以来、音がしない。本当に来るのか。それも不安だった。その時だった。遠くの方で車のエンジン音がする。そしてそれは近づいて来る。
「キタキタキタ...!!!!!」
京介の心臓はまた早くなる。興奮しているのだ。久しぶりに暴れれる。わくわくする。そんな京介を誰も止められないのだ。まだかまだかとその時を待ちわびている。京介は素早く柱の陰に隠れた。車がきたら飛び出して前から立ち向かう気でいる。
京介の柱の横が車のヘッドライトで照らされた。いよいよ復讐の時間だ。エンジン音が近づいて来る。
「今だっ!」
そう言って満面の笑みで勢いよく車の前に飛び出る。
" キキイィィィイイイイイッッッッ "
車は高い音を鳴らしながら急ブレーキ。その途端、素早くバックして行ったのだ。それもものすごい勢いで。京介は驚いた。しばらくその場に立ち止まってしまったのだが、すぐ我に帰り、急いで車を追いかけようとする。だが足が思ったように動かない。
「あ...あれ? なんか...い...痛っ....」
その場でうつ伏せで倒れこむ京介。
「何で...な....まだ....俺...は........」
力が入らない。痛い。目が霞む。耳鳴りがなる。その耳に、遠くから近づいて来るヒールの音が入って来る。誰かがこっちに来ているようだ。
「助けてくれ」
頭の中で助けを求めた。声が出ない。
「だめだ。俺、死ぬんだ。短かったけど楽しい人生だった。でもまだまだだったのにな。俺、地獄に行くのかな?」
目から一筋の涙が流れる。気が遠くなる。そんな京介が最後に聞いたのは、聞き覚えのある女の人の声だった。
「き...京介....?何で......」