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新世界VS異世界  作者: ティンダロス
一章「四宝組編」
14/23

第十四話 強襲の赤刀


 稽古開始から数日が経過した。


 ナナの稽古は順調だ。

 能力持続時間は飛躍的に伸びた、一時間は能力を使い続けることが可能となった。


 そして、以前の髪触手は拳の動きにつられていたが、割と不規則に拳の動きとは関係なく、ツインテールを鞭のように打つことも可能となった。


 ちょっと訓練しただけでこれか、末恐ろしい子だな。

 博士ってやつは、完成したら興味をなくすタイプなのか?

 最後まで面倒見てやれってんだ!


 真冬の方はというと、てんでダメだった。

 『崩壊』のオーラでガードする癖があるため、能力を発動させていなくても、よけずに腕でガードしてしまうのだ。


「たく、ダメだな。筋トレでもしてろ」

「うっす······」


 真冬は腕立てしながら、ナナとクロジカを見る。

 ナナは楽しそうにしている、そりゃあそうだ、それだけメキメキ上達すれば楽しくないわけがない。


 意外にもクロジカもニヤついている。

 そりゃあそうだ、教え子が自分の教えたことをどんどんマスターするのだ。楽しくないわけがない。


 真冬は無心で腕立てをした。限界になったら心紅からもらった紫色の強壮剤を飲む、あっという間に体力が回復する。

 限界になる、強壮剤を飲む。これを延々と繰り返す。


 これは効率のいい筋トレだ。俺も楽しくなってきた!



 その日の夕方。

 心紅が三台のスマホを持って帰宅した。


「これよ、かなり頑丈に作ってもらったから、もう壊さないようにね」

「ああ、ありがとう」

「うおお! 心紅殿ありがとう!」


 黄金色のスマホだ。はっきり言って派手だが、見た目に反して軽い。

 本当に丈夫なのだろうか?


「なんで三台もあるんだ?」

「私も真冬とお揃いにしたかったから、ついでに作ってもらったのよ」


 心紅は、ヒヒッと魔女っぽく笑う。


「お揃い! ペアルックっというやつだな!」


 ナナは目をキラキラさせて、スマホを両手で掲げる。


「そうよ、喜びなさい」

「バンザーイ!」


 なんとなく真冬はスマホを裏返した。すると裏面には見たこともないロゴが書いてあった。


「GGB······」


 うーん、どこかで聞いたことがあるブランドだな、どこだったか。

 ああ、廃墟で出会ったジィさんだ! あの人、GGBの社員とか言ってたな。


「GGBを知っているの?」

「ああ、つい先日この会社の社員と会ったことがある」

「あらそう、真冬も助けらたの?」

「助けられたかな、助けられたな、うん」


 俺が崩壊させた道路なんかを修理してくれた。金は取られたけど。


「GGBの社長は、この世界で初めてできた協力者よ」

「たしか、社訓が『人助け』だったか」

「そうみたいね、この家も社長が用意してくれた物よ」


 この家もか······儲かっているようだな。

 人助けって金になるのかな。

 いや、なるだろうな。切羽詰まってたら金なんていくらでも払うだろ。


 ともあれ、それで人が助かっているのなら文句は無い。


「いい会社だ」

「ええ、ただ助けられっぱなしってのも気分が悪いから、お礼として回復薬なんかを提供しているわ。魔法なんかも見せたけど、魔力の無いこの世界では、それも真似はできないでしょうけどね」


 心紅はこほんと咳払いをして、ヒヒッと笑う。


「それじゃあ、連絡先を交換しましょう」

「ああ、もちろんだ」





______





 はるか上空、スカイツリーよりも高い場所。そこに闇園一花はいる。


 空間の裂け目から、太い触手が一本、倒木のように伸びている。その上で一花は、下界を見下ろしているのだ。


 その表情はいつもと変わらず、少女特有のあどけなさを有してはいるが、どこか異常な雰囲気をはらんでいる。


「これだけ探しているのに、手がかりすら見つからないなんて、それほど『魔女』が有能ということでしょうか? 崩紫さんの交友関係には該当しない人物のようですが、どんな人なんでしょうね」


 少し間を置いて、どこからともなく声が聞こえる。


「行方不明になった構成員が誰一人として見つかっていないところを見るに、隠蔽技術に優れた術が使えると思うぜ」


 一花は、ポケットから一振りのナイフを取り出した。声の発生源はこのナイフからだ。

 四宝組十二幹部の一振り、火血刀だ。


「そうですか、ならどうしようもないですよね」

「諦めるのはまだ早いって」

「火血刀さん、何か策があるんですか? そろそろ定時なので帰りたいんですけど、清十郎が心配します」

「······定時までは働いてくだせぇ」





______





「んじゃ、ご主人様、俺は人間の世話をしてくる」

「ええ、頼んだわ」


 夕食も済み、クロジカは三階に行った。

 ナナの稽古に、女マスターの世話、クロジカも大変だな。


 そんなことを思っていると、心紅とナナの話が耳に入った。


「心紅殿」

「なにかしら?」

「私に魔法を教えてくれないか?」

「嫌よ」


 きっぱりと断られたナナはしゅんとしている。嫌なら仕方ないけどさぁ、言い方ってものがあるだろ。


 またしても真冬は助け舟を出すことにした。


「心紅、嫌なのは仕方ないけどさ、言い方ってものが」

「······言葉を間違えたわ。嫌じゃなくて無理なのよ」


 嫌じゃなくて無理? どっちも同じようなものだろ。


「どういうことだ?」

「この世界には魔力が無いの、魔力の無い人間に魔法は使えないわ」


 なるほどな、この世界には無いものを使っているってことか。


「だとさ、今回は諦めような」

「そっかぁ、私もやりたかったなぁ、クロジカ殿がやってた腕を爆発させるの」

火山魔法ボルケーノマジック「『噴火イラプション』ね、黒曜石蜥蜴オプシディアンリザード特有の魔法よ。体内の魔力を溶岩に変換して爆発させる魔法。人間がやったら血管に溶岩が流れて焼け死ぬわよ」

「ひぃ! やっぱりいまのなし!」


 固有の魔法もあるのか、つまりは能力者のようなものか。


「俺たちと似たようなものか」

「能力者とは違うわよ」


 真冬の顔を見て、心紅は言った。


「この世界······真冬が私のいた世界を異世界と呼ぶから、こっちの世界を新世界と呼ぶけど、異世界の魔法や技といったものは魔力を使って『創造』しているの、それに比べ、新世界の能力者は『概念』というのかしら、新たに概念を作り出しているのよ」


 ん? 何言ってんだかまるでわからん。


「······まぁいいわよ、わからなくても、実際に私が能力者ってわけじゃないし、あくまで私の憶測でしかないんだから」

「わかった! 魔法はなんでもできるけど、能力は一つのことしかできない!」


 ナナが元気に手を挙げて言った。


「このように、皆が皆、違う考えを持っているわ」

「なるほどな、どのみち異世界に行く方法なんて無いんだから、俺には関係の無い話だな」

「そうかしら、私がーー」


 心紅の話を遮るように、上の階から物音がした。

 いや、クロジカと女マスターがいるのだから物音くらい立てるだろう、だが今の音は明らかにそれとは違う、争うような大きな物音がしたのだ。


「行ってくる、二人はここで待っていろ」

「嫌よ、ついていくわ」

「私も行くぞ!」


 三人は階段を駆け上がった。


 心紅が三階の鍵を開け中に入る。

 そこにはおぞましい光景が広がっていた。


 壁や床といったもの全てに血が付着している。

 中央で椅子に固定されている女マスターは顔を青くして、ぐったりとしている。


「クロジカ、何があったの?」

「わりぃ、ご主人様」

「あれはなんだ!」


 女マスターの鼻や口から血が溢れ出す。

 それは意思を持ったようにうねうねと蠢き、人の形となった。


 人形は口を開き言葉を発する。


「危なかった、この女まで崩壊させられていたら、お手上げだった」

「お前、火血刀か!」

「ご名答、俺は血を操る妖刀、前もってこの女の体内に分身の血を入れていたってわけさ」


 本体のナイフが近くにいなくても使えるのか、いや、家の近くにいるのかもしれない。


「まずいわ」

「どうした」

「『認識ずらし』の札が破かれているわ」

「なに!?」


 真冬が見渡すと、部屋のすみ四箇所にそれぞれ札が貼ってある。

 しかし、それらは破かれていたり、血でぐしょぐしょに濡れてしまっている。


「連絡する手段もなかったしな、本体も俺の居場所がわからねぇみたいだったし、怪しい札を破かせてもらった」


 結界が破られたってことか、仕方ない、増援がここへ来る前に、こいつを始末して、どこかに逃げよう、でもどこへ?


「あれ? 崩紫さんじゃないですか、もう、探したんですよー」


 部屋の中心、空間を裂いて一花が現れた。


「闇園!」

「おー、ちゃんと女の子も一緒ですね、しっかり守ってるなんて感心感心······え、『彼』が言っていますが、そこの女の人が『魔女』なんですか?」

「そうよ、私が魔女よ。私の家に何か用かしら」


 心紅は臆することなく一歩前に出る。


「失礼ですが全然魔女に見えないですね、用件ですか? 決まっているじゃないですか、そこにいる女の子の捕縛と、できれば崩紫さんの抹殺です!」


 一花は胸を張ってえっへんと誇らしげに言った。


「あ、そうそう崩紫さん、レオンさんとウルフさんは死んだんでしょうか? 連絡が取れなくなってから結構経っているんですが」

「二人とも殺した」


 真冬の視界の端で、ナナがビクッと肩を震わせるのが見えた。


「へー、あの『幻覚』と『獣人』のコンビを······またまた、大金星ですね崩紫さん! 清十郎も「意外だ」と驚くことでしょう」

「そりゃ嬉しいな、それでここでやるのか?」

「どうしようかなー、あ、その前に」


 一花が指をパチンと鳴らすと、空間に何箇所も穴が開いた。その穴から何本もの触手が現れて、素早くナナと心紅を拘束した。


「うわあああ!」

「くっ!」


 真冬は『崩壊』のオーラを両腕に纏わせ、二人の拘束を解こうとする。しかし一花がそれを許すはずもなく別の触手を間に入れて邪魔をする。


「なにしやがるッ!」

「はいはい、やめてください、この魔女がどうなってもいいんですか? 絞め殺しますよ」


 一花がそう言うと、心紅の拘束がキツくなる。


「くっう!」

「心紅!」


 一花はその様子を眠そうな目で見ている。


「ふぁあ。うーん「能力を解除しろ」とか、あまり崩紫さんを追い込んでも怖いですからね、私はここらで退散しようと思います。定時ですし」

「二人を離せ! 俺の命が欲しいんだろ! だったら俺を狙え!」

「熱くならないでくださいよ、別にこの二人をどうこうしようなんて哭龍さんも思ってませんよ、たぶん」


 一花は空間の隙間に入っていく。


「それでは、さようなら」


 心紅とナナを連れ空間を閉じた。


「待てやコラぁ!」


 真冬は何も無い空間を殴りつける。

 パリンという皿が割れるような音が響き空間にヒビが入る。

 ヒビはみるみる広がり『崩壊』のオーラを纏わせた両腕をねじ込み、強引に空間を引き裂いた。


「ええ! ちょっと崩紫さん! 無茶苦茶しすぎですよ! さようならって言った私がバカみたいじゃないですか!」

「大馬鹿野郎がぁ!」


 真冬は裂いた空間に上半身を突っ込み、二発目を構える。


「まったく、しょうがないねぇ、火血刀、行くよ」

「へい! 姉御!」


 別に開いた空間の裂け目から飛び出したのは、黒いローブに身を包んだ銀髪の女。

 四宝組十二幹部の一人、鎌柄 アンだ。

 左手には火血刀が握られている。


「ここで死んでもらうよ」

「邪魔だッ!」


 真冬の二発目の拳はアンへと向けられた。


「おっと」


 アンは巧みにそれを回避する。


「ここは狭いね、表に出ようか」

「お前とやりあってる時間なんてない!」

「闇園はもう遠くに行っちまったよ、アタシたちを倒さないと追うこともできやしないよ」

「くそ! クロジカ!」

「んぁ? なんだよ坊主」


 クロジカは腕を組んで真冬を見ている。

 一部始終を傍観していたのだ。


「なんで助けなかった」

「文句を言うなら、ご主人様に言うんだな、俺は命令なしには動けないんだからよ」

「命令だと?」

「一番に優先する命令が『崩紫真冬を守れ』なんだよ。お前がいなかったら、ご主人様を助けられたさ」

「······そうか、また俺がやっちまったってわけか」

「そうだな、あとで尻尾で叩いてやるから覚悟しやがれ」


 どうやらクロジカは俺を守ってくれるらしい、なら安心して戦えるか。


「こいつらを倒したら、四宝組の本部に行く、ついてきてくれるか?」

「んぁ、ついていこう」


 二人が話している間に、アンは窓を開け払い、淵に足をかけていた。


「ここら辺にいるのはわかっていたからね、家の周りはアタシの手下共で包囲させてもらったよ」


 四宝組で一番部下が多いのはアンだ。五百人の構成員の内、百人はアンが山賊をやっていた頃から付き従う子分たちだ。

 もちろん、全員が能力者、火血刀もアンの所有する妖刀なのだ。


「さぁ、覚悟ができたら、外に来な」


 アンは火血刀の分身と共に窓から飛び降りた。


「上等だ、後悔させてやる」


 真冬も窓から飛び降りた、クロジカも後を追従する。

 庭を走り抜け大通りに出る。


 一般人がいない。真冬は違和感を覚えた。


「人払いは済ませてあるよ、多少強引だったけどね。武装警察も今回のことには目をつぶってるよ」


 アンの周りには十数人の部下がいる。それぞれが鉈などの武器を持ち臨戦態勢をとっている。


 よく見ると、首や手にはネックレスや指輪がつけられている。人払いをする際に奪ったものだろう。


「てめぇら」


 真冬は怒りでグギギと拳を握りしめる。


「知っての通り、やり方が変わったのさ、支配者のそれにふさわしい立ち振る舞いってやつにね」

「容赦しないからな」


 真冬は拳を構える。全身を駆け巡る怒りを『崩壊』のオーラに変えて両腕に纏わせる。松明のように『崩壊』のオーラが狼煙をあげた。


「薙ぎ倒してしばき回してやる!」



 激戦の火蓋が切って落とされた。



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