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理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
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第97話 人型ってなんでしたっけ

牛頭に刺さったその足は、その運動エネルギーを存分に魔王へと伝え、衝撃で左足がわずかに浮く。

同時に足で地を掴みながら放たれた拳がそのわずかに傾けられた左頬に伸び、その頬骨を文字通り粉砕してみせ、撒き散らされる体液はその炎により一瞬のうちに蒸発に至る。


しかし、地に足のついていない方はそのエネルギーを受け流せず、振り抜かれたその足も相まって空中で横ロールに回転しながら頭から地面に落ちる。


背中を曲げて受け身を取ろうとするが、


そのツノを根本からへし折られるほどのダメージを負いつつも地面に足のついているほうが動きが速かった。




カモシカのようにすらりと伸びたふくらはぎを掴んで振り上げると、


「ぬうおらっ!!」

渾身の力でもって地面に叩きつけたのだ。



大きく砂ぼこりが舞い、地面に大きな亀裂が生じる中、ポキリ、と首の骨が折れる音が聞こえた。


それでも容赦はしない。



「魔王様!?」

「胴を掻っ捌かれてもつながるようなバケモノだ、この程度じゃ死なん!」

明らかに殺意しかない攻撃を咎める声に、バケモノ相手にはコレくらいが最低限度だと答える。


「ウオア!!」

そのまま、大きさに全く見合わず重い相手の肉体を、片手で勢いをつけながら顔面を掴んでなんとか持ち上げ、

その頭蓋を砕かんと、握力を込めながら後頭部を地面に叩きつけ、()()を使って地面を抉っていく。



―――背の高い構造物、あれがいいか。


そこそこの大きさの岩に当たりをつけて(タウロス族基準だが)、頭部を上から振り降ろすと、岩は面白いように砕かれてくれるが、流石に耐えきれなくなったか、その後頭部が大きく割れ、陥没した。


これ以上の蛮行を何とか阻止しようと動くも、そのむき出しの腕はさすがに万物を焦がす魔法の炎には耐えられないとみえ、燃え盛りながら虚空を掻くのみ。




【煉獄】の魔法越しに手の中で閉じられた目が開かれるのが分かった。


同時に、掌が熱感を帯びると、たちまちにそれは耐えがたいほどのものへとグレードを上げる。


自己再生持ちゆえに堪えていると、それは掌全体にまでその範囲を広げ。


「ぐうぅっ?!」

予期せぬレベルにまで引き上げられた痛みに気が付いた時には掌を貫通して光軸が二本、肩に突き刺さっていた。


その肩すら灼熱感を帯び、皮膚が焼け焦げるのが分かる。



しかし、弱まった握力を気合で保たせ、むしろ強めていく。

こんな攻撃を出してきたということは逆に言えばその必要があると判断したということで、弱点を突いているのではないか。そう考えたからだ。


そのまま熱線でも攻撃を止めないとみるや、バケモノは方向性を変えてきた。



【煉獄】のせいでまとわりつけなかったタウロスの腕に、焼けるのも構わずに触手を無理やりまとわりつかせ、その魔法ごと肘関節を極め始めたのだ。



「――――――■―?!」

拘束が緩んだすきを突き、その左足先がタウロスの右わき腹を抉り、


「ぐうう!?」

魔法の炎の防御を食い破って肋骨ごと肝臓へと突き刺さった。


ごきん、とその足首が折れる音が響くが堪えた様子もなく、そのまま勢いを生かして両足で絡みつき、さらにしっかりと肘を極めていく。



口から漏れ出る血もあって堪えきれず、ついに頭部を掴んでいた右手が外れると燃えつつある両腕でタウロスの右腕を抑え込み、片側がボロボロになった顔貌を牛頭へと近付ける。


半開きになった口。


その奥には瞳に灯っている魔力量とは比べ物にならないほど大きな魔力が込められているのを見てとって。



運動によるものではない汗が一粒、したたり落ちた。



口を大きく開き、さらにその口腔に魔力が込められれば、起こるだろうことは一つしかない。


「・・・ふっ・・・!」

残っている左腕で無事な方の顔面をどけようと押し当てるが、


そもそもが腕の上にいる敵を押すという稀有な事象。関節の位置的にも力の入りにくい形であるためびくともせず。



「今お助けしま・・・くぅ!!」


余った触手数本を束ね、空中から攻撃するメイドを口上の途中にもかかわらずこの世から退場させるべく一撃を放つ・・・が、止められたらしい。


無粋なものである。



咄嗟に出した短剣が半ばから圧し折られながらも地面に平行、まっすぐ吹き飛んでいき、ダメージは抑えられた。しかし、膝はガクガク。危険域から離脱したものの、即座に立ち上がれるほどでもないようだ。


それを尻目に

「剣よ!」


呼びかければ、応えて、その巨体に見合った肉厚かつ、2mほどと人間には到底持てそうにもない長い刀身を持つ直剣が手元に現れる。



それを固く握りしめ、触手を吹き飛ばし、魔法による反撃にも堪えながら。



空いた首に差し込み、喉笛を切り裂き、脊椎もろともにその脊髄を両断する。



そのタイミングで、バケモノの目がぐりんっ、と生物がやるとは到底思えない、機械的な動きで回転した。

ただでさえ不安定な状態の魔力が、チャージの完了を待たずして、暴走を始める。


バケモノの口と切り裂かれた喉笛からその最後の瞬間、呪詛の言葉と共に吐き出されたのは、何だったのだろう。


“ざまはないな”

その口元の笑みは閃光と共にかき消されて。




そんなことを理解するよりもさきに、頭脳が暴力的な魔力と衝撃波で無理矢理揺さぶられる。



音が、消えた。


いや、音が消えたのではなく、その聴覚が狂ってしまったのだと最初に気づいたのは、誰だったか。



天地もわからないほどに吹き飛ばされ、

魔力の存分に含まれた熱風・衝撃波をたらふく浴び、側頭部に蹴りを入れられた時よりも強いふらつきに頭を振りながらなんとか立ち上がるが、右腕が肘から先が消し飛び、体重バランスが崩れたせいで足元もおぼつかない状態ではなかなか戦闘の継続は厳しい。



なんとか閃光により潰れた視覚を再生すると、まず目に入ったのは、灼熱に溶けた砂。それで覆われる地面の存在だ。


爆発で生じた窪みは薄く、しかし広く広がる荒野は魔物を含めても生き物の住まう場所ではない。


そんな爆心地には、二つ、肉塊が転がっていた。




膝から崩れ落ちた首から下は、さらにその両腕は全損、またその前面の肉、骨が吹き飛んで中身が大きく露出している。

その中身の表面や断面が綺麗なピンク色をして、全く焼けていないのはどういう理屈なのだろうか。


そして首から上、その頭部はその(しょくしゅ)も消し飛び、顎や両眼球も消し飛んでうつろな中身をさらしている。


まさに死に体。



そんな様相でも、



おもむろに、そのピンクの肉が輝くと同時死に体の背中の肉がボコボコ、と盛り上がる。


ボコボコ、ぼこ。


ボコボコボコ、ボコボコボコボコボコボコボコ!



その盛り上がりはすぐに勢いを増し、太く、長い、左右二対の触手を形成した。


だが、それを四本の支えとして立ち上がろうとしたその時、



ぼとり。



そんな擬音が浮かぶように自然に、腰から下が落ちた。



胸から先だけ釣り下がっている首なしの化け物はわずかばかり立ち止まったかと思うと、首と胴体の断面

計4つからそれぞれ新たに触手を伸ばし、


煮える地面を踏みしめ、何も見えていないはずなのにこちらへと這い寄り向かってくる。



勇者が言っていたか、『SAN値』とやらがガリガリ削られるのを感じながらも魔王は左腕で一人、立ち向かうしかない。



「ば、化け物めっ!!!」

魔王をSAN値から削りにかかるスライム(元人間)…絵面が(ry


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