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理系スライムは汚物の海から這い上がる  作者: 愚痴氏
第二章 現地種族との接触
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第96話 再生

怪獣大激突回1です



あ、章わけさせて頂きました。

前書き・あとがきの本編とは関係ない作者の近辺のことで、かなり時間経過のあるものは削除させていただいております。

タウロスは、最古代から連綿と続く魔族の一族である。


最も得意とするのは肉弾戦…そこまでは全くもって事実である。


しかし、最古代から生存競争を勝ち抜いて来た種族が、魔法の10や20、使えないままにするわけがない。

そして、得体の知れない敵相手に遠距離攻撃手段である魔法を戦闘の軸に入れた。




「くっそ、なんで当たっても効かない?!」

牛の頭部で器用にもしゃべっている。


地面に流れ弾の細かい火種が着弾するたびに、その大きさに見合わない音が鳴り、燃えた土が舞う。


地面を掘削せんかの勢いで引き起こされる、余波ですら殺人的な大火力は、


ブーーーーーーーー!


という連続したノイズと土煙を周囲に撒き散らしていた。





というわけで今、起こっているのは魔法戦だ。


たとえ、撃った魔法【煉獄】を魔法の氷を纏った腕でうちくだかれているのだとしても。


魔法を使っており、魔法の効力同士を戦わせているのだから、誰が何と言おうとも間違いなく魔法戦である。


攻めあぐねている魔王(タウロス)だが、それには戦闘スタイルの齟齬以外にも理由がある。




「―――――■■――■■――――■―■―――!」


応えるように、悪鬼のごとき形相の大女は声と呼んでいいかすらわからない叫び声をあげ、

先ほどまでの数十倍にまで伸びた毛髪が風に関係なくはためく。


その髪はまさしく触手のようにうねり、地面を蹴ることでその動きを全く予測不能なものにまで高めている。


それでも、空間を埋め尽くさんと雨あられ、降り注ぐ魔法の数々は魔法で防御した腕に阻まれるが、捌ききれない分が地面に接触する触手や脚を端から削り飛ばしていく。


その切れ端は溶けるように消えていき、スキル【自己再生】の様に肉の盛り上がりも見せないまま、瞬時に回復してくれている。



自己再生というには速すぎる、が起こっている結果は再生としか称しようがない。

問題は、この再生能力の高さだ。



切っても繋がるような再生能力を持つ魔物はそれこそいくらでもいる。



だが、再生能力を持つ者で戦力となるものはあまりいない。

なぜなら、再生能力を持つ・使えるということはほとんど即ち、再生能力が必要とされる世界に生きているということだ。

再生能力を必要とするほどの手傷を多数負わなければいけない、格下相手に一撃で殺されはしないものの傷を負う、その程度の生物が再生能力を獲得する。


そんな貧弱なステータスで、より上位の生物・魔物相手に生き抜けるか?


答えは否。



そんなよわっちい生物は精々保存食として活用(・・)されるが関の山だろう。

さらにいえば、自己再生した箇所はどうしても元の組織との結合が緩く、脆くなってしまうし、体内の栄養分も奪われる。



そして、魔族の世界では一撃を入れた後の弱った獲物をわざわざ生かしておくなんてことはしない。

せいぜいが魔族間であるイジメなどで痛覚鈍麻や自己治癒のスキルを獲得する程度だ。


逆に、同じステータスでいえばそのようなスキルを持つ者の方が圧倒的に優位なのだから、タウロス族の様な歴史の長い一族は全員持っていたりする。適者生存、という奴だ。



魔物ではなく、人間で見れば、人間で自己再生能力を持つ者なんて言うのはほとんどいない。

突然変異で獲得する者もいるだろうが、最初はその能力など貧弱に過ぎるもの。スキルを育てよう(・・・・)とするならスキルレベルにあった傷を負い続け、かつ適度に休息をとれる環境に身を置かねばならない。

たいていはそんな環境を用意できないし、できても見誤れば死あるのみ、というわけだ。




そんな、扱うものの少ない再生能力持ちに対する対抗策は長い歴史を持つ魔族でもあまり多くは考えだされていない。

基本は体内のMP・栄養が切れるまで攻撃する、魔法で傷口を焼く、もしくは毒を撃ち込むのだが、あいにくと毒は持ち合わせていないし、本来傷口の再生を阻害するどころか延焼して全体をこんがり焼きつくす魔法【煉獄】の炎も効いた様子はない。



それは正に不死身を体現していた。



被弾が多くなるのも全く気にも留めずに正面から向かってくるので宙に放った剣を虚空に溶かし、

足元に転がる魔銃を蹴り上げ、手繰り寄せて手早く装填。


照星を使わず、銃口を向けるだけでその遮蔽物(ふく)のない胴体に狙いをつけると、腰だめに撃った。



最初の狙撃とは比べ物にならない、まさに0距離をほぼゼロに近い時間で詰めたその銃弾は、


その触手のひと薙ぎで、あらぬ方向へと飛んでいく。



続いて振り回される触手は、恐るべきパワーでまだ熱を持つ銃身に当たり、決定的な歪みを生みながらその手から弾き飛ばすという繊細な操作もこなして見せる。


「クソッ!速い!!」

魔族の中でも最高レベルの教育を受けてきた淑女とは思えぬ罵声を漏らせるあたり、まだ余裕があるとみていいのだろうが。


続く二撃目。

魔法を空間を埋め尽くすそれから、まっすぐ向かってくるモノに対する集中砲火に切り替え。

左足のステップと、挙げた右足で、至近距離から放たれる蹴りのダメージを緩和しながらみずから吹き飛ぶと。


その態勢移動の結果低くなった頭の真上を触手が直線状に貫いた。


「【煉獄】!」

反転、伸びきった触手が縮もうとする瞬間をとらえ。


それを【煉獄】を纏った手で掴むと。



「ぉおおらぁ!」

最も得意とする力押し。引っ張り合いに持ち込んだ。


流石に魔族の王、魔法を纏うなどという発想はなかったが、一度見せられれば応用はできた。



悪鬼はその流れに逆らわず、


「―――ォオオアアァーー!」


獣の雄たけびを上げながら、

むしろ地を足で蹴り、速度を倍加させ突っ込んでくる。


その速度は引っ張られた触手がたわんでいるにも関わらず、最初の接敵時よりも速度は明らかに上だ。



速さに驚きつつも、魔王は腰のひねりを加えた右ストレートを繰り出し。


その顔面に叩きこまれると同時。


魔王の左こめかみに体重の乗った回し蹴りが突き刺さった。

前話で「ミノタウロス」と書いてますが、

「ミノスに住んでるタウロス」が由来なので、こちらではそう名前を付けない限り「ミノタウロス」は存在しません。(わざとです)


自己再生とは言えないアリスの再生能力ですが、

骨を除いた全身がスライムの集合体でできていることを活かした、

「消し飛ばされたスライム・死亡見込みのスライムを捕食し、増殖することでスペースを埋める」という涙ぐましい努力に支えられています。



参考までに。

ステータスが存在する世界では、

再生能力持ち・ハイステータス(魔王や、一部の伝統ある魔族)>ハイステータス(一般的な魔族とか、特異な人間)>>>

(越えられない壁)>>>再生能力持ち・ローステータス>ローステータス(一般的な人間)


となります。

よろしければ、「ロジックおかしいだろ」など感想でお願いします。

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